あなたならどうする? 1   ABC DEF GHI JKL MN




忍びは裏の裏を読め。 二手三手先を読んで動く。 俺も元潜入部隊の中忍だ、そんな事は百も承知だが・・・・
そんな暇ねぇよ! 相手は俺より遥かに強いヤツなんだよ! どうすんだよ俺! って追いつめられたら?
《窮鼠猫を噛む》 の言葉通り。 誰だって追いつめられれば大胆になる。 アドレナリンが大量分泌だ。
後の事はどうなろうと気にならない、今を、この時を切り抜けられれば。 ってな具合になるだろう?

「このままバレないと思ってましたか? 可愛い部下達を騙されてボク達が黙っていると?」
「や・・・・ あの・・・・・ あれには深い事情がありまして、ですね・・・・・」
「あのサ。 代償の大きさは分かってるよネ? オレ達の名前を利用するコトへの。」
「ぅ・・・・ 申し訳ありませんでしたっっ! 俺・・・・ 本当にすみませんでしたっっ!!」

俺は今、その時のツケを払わされそうになっている。 我が身かわいさで、とっさについた嘘のツケを。
温厚そうな声。 きっと面の向こうでは、うっすらと笑顔すら浮かべているだろう、暗部の猫班 部隊長。
圧倒的な威圧感。 柔らかい物腰とは裏腹に、一歩も動けないほどの気を向けてくる、戌班の部隊長。
まさかこんなに怒らせるとは、俺自身予想していなかった。 いや、予想しなければならなかった。

暗殺戦術特殊部隊は火影様の直轄部隊、里のエリート集団。 だから些細な事は気にしない・・・・ かと。
そんな安易な思い込みから出た俺の嘘は、この二人の忍びとしての誇りを著しく傷つけたのかもしれない。
暗部の、それも部隊長と呼ばれるほどの忍びなら・・・・ ハハ! と鼻で笑い飛ばすような気がしてた。

どこまで自分勝手な奴なんだ、俺は。 小さい頃からお世話になった三代目の、直轄部隊の忍びに対して。
だからこそ、そんな里の誉とも呼ばれる様な忍びの名を、軽々しく俺の保身の為に出してはいけなかった。
三代目、すみません。 俺、戌猫両部隊の部隊長だけでなく、里の顔に泥を塗ったも同然ですね・・・・
後悔先に立たず。 でもあの時は本当に仕方なく・・・・ いや。 もう何も言うまい、悪いのは俺だ。

「何も言い訳するつもりはありません。 俺がおふたりの名を利用したのは事実です。」
「ヘー 言いワケはなし? 肝は座ってるみたいだネ ・・・うみのイルカ中忍?」
「どんな処罰でも受けます。 元はと言えば俺の・・・・ 身から出た錆ですから。」
「ええ、その通り。 あなた、会った事もない忍びの名を、よくも出せたもんですね?」

「おふたりの体裁を著しく傷つけた事、暗部隊員の結束力を利用した事。 言い訳しません。」
「一応聞いてあげるヨ? その為に来たんだから。 部下達に誤解されたままだとムカつくしネ。」
「聞いてあげますよ。 どんな事情があったにしても、その代償はキッチリ払ってもらいますが。」
「・・・・・ははは・・・。 やっぱり凄いなぁ、暗部の部隊長って。 それに比べて俺は・・・・・」

今更だけど。 助けてもらった事への感謝は伝えて謝った、自分では嘘を訂正したつもりでいたんだ。
俺は、その後自身が被る被害をイメージして嘘をついた。 あんなに親切な隊員達に。 自分の為だけに。
情けない。 ほんと、情けないよ。 この二人は確かに怒っている。 静かに、それもかなり、だ。
なのにそれは、自分の名を利用された事に対してよりも、自分の部下が騙された事に対して。

勝手に自分の中ではもう済んだ事だと思っていた。 あの話をずっと信じたままだったなんて・・・・・。
なにがあってああなってしまったのか。 俺はこのふたりに、包み隠さず全てを話す義務がある。
それが、制裁を受けるにしても何にしても、まず俺が最初にしなければならない事だと思った。

こんな部下思いの部隊長なら、俺のあの時の切羽詰まった状況を理解してくれるんじゃないか、とか。
そんな俺に同情して、慰めの言葉の一つもかけてくれるかもしれない、とか。 そんな事思ってないから。
今度は我が身可愛さの為じゃない。 俺の言い訳がどんな同情を誘う様な切羽詰まったモノであっても。
俺は自分の取った行動の責任は、果たさなきゃならない。 同じ木の葉の忍びとして恥じない様に。

「おふたりの態度を見て改めて、自分の身勝手さに呆れます。 どうか聞いて下さい。 あの時・・・・・・」
「「・・・・・・・。」」