あなたならどうする? 8   @AB CDE FHI JKL MN




おれの班の部隊長のカカシさんは、遊びが派手で有名。 おれら戌班の面々は、お世話になりっぱなしだ。
結構気を遣ってくれてるのがわかる。 部隊長が派手におれらを引き連れて遊ぶ時は、血みどろの任務の後。
または “なんでこんなのを暗部がわざわざやるんだよ!” っていう、ストレスがたまる系のヤツのどっちか。
まあでも、忍びはそれが仕事だから、言われた通りに実行する。 迅速かつ確実に、が暗部のモットーだし。

それにおれらは他里のビンゴブックに載りまくりの、暗殺戦術特殊部隊だ。 里のどの忍びよりも死に近い。
もし情人なんて作ったら・・・・ おびき出す餌にされるか、報復の為に殺されるか。 その二者択一だ。
当然だけど、殺した数だけ恨みもくっついてくる。 それを分かってなけりゃ、暗部で生き残れない。



「「・・・・・・・・。」」
「と、取り合えずヒロ・・・・・・ おれ・・・・ 走ってくるな? 里に。」
「そ、そうだな。 中和剤・・・・ もらって来てくれ。」
「おう! 間違っても・・・ ヘンな気起こすんじゃねーぞ?」
「ははは・・・・ あー ・・・・早くな? 頼む・・・・。」

ダッシュで里に向かってくれたコバの戻りが早い事を祈りつつ。 チラリとうみの中忍を見てみる。
いや、別にヘンな意味じゃない。 口からデマカセかもしれないし・・・・・ でも・・・・・ アリ、かな?
首をのけぞらせて、なるべく熱を逃がそうとしてる荒い呼吸は、自分の中の欲望と戦っている証拠だ。
上忍のクノイチでさえ、里に中和剤を要請したほどの媚薬と・・・・ ここまで懸命に戦ってる。

おれの班のカカシさんもコバの班のテンゾウさんも・・・・ 部隊長達は皆・・・・・ 諦めない人達だ。
どんなになっても諦めない。 仲間の腕が切られたら、その腕を探して持って帰ってくるような人達だ。
おれらはどの部隊長達も超尊敬してる。 ド派手に遊ばせてもらって、おこぼれも美味しく頂くけど。

慕っているのはそんな目に見える理由だからじゃない。 部隊長達は常に自分の中の何かと戦っている。
おれらの前ではそんなそぶりは見せないけど、だからこそ余計に感じるんだ。 正気を保つように戦ってる。
殺しても殺しても平気な人間はいない。 自分は人外だと思った方がマシだ。 でもそれはしない、絶対に。
常に人で有り続けようと、自分の中の自分自身と戦っている。 このうみの中忍も、堕ちないで戦ってる。


「・・・・・うみの中忍、コバが戻ってくるまで・・・・ 辛いだろうが耐えてくれよ?」
「・・・・ふぅ・・・ ぅ・・・ は・・・・い・・・ すみ・・・ ませ、ん・・・・・ ぁぅ。」
「あー 今から着物の襟くつろがせるけど、これ、ヘンな意味じゃないから。 あと髪も・・・・」
「はぁ、はぁ・・・・ ん・・・・ あり・・・が・・・ と・・・ざい・・・ます・・・・・ ぅぅ。」

呼吸をしやすいように胸元を大きく開けてやった。 頭の結い目が畳に当たって痛そうで解いてやった。
面越しにおれの目を見る瞳とぶつかった。 少し触れた肌から火照った熱を感じたが、その目を見たら・・・・
体は辛いのに精一杯微笑んで、おれへ感謝の言葉を一生懸命伝えようとする、そんなうみの中忍の態度。
呑み込まれそうな欲望の中、人として踏ん張ってる姿。 部隊長、おれ、なんとなく分かった気がします。

あまりに突拍子もない事だったので信じられなかったけど、このうみの中忍の態度を見て納得した。
良く考えたら、上忍のクノイチが薬で欲情している宿に、いくら信頼してても男を向かわせるはずがない。
そうだよ、三代目は・・・・ うみの中忍が部隊長達の情人だから、間違いは起きないだろうと踏んだんだ。

里内の色事情はクノイチ達の方が詳しい。 ひょっとしたらクノイチの中では暗黙の関係なのかもしれない。
部隊長達の立場を考えれば、火のない所に煙を立てたくないだろうし。 完全な安全パイだと言う事だ。
うみの中忍を欲情してるクノイチの前に差し出しても、何も間違いは起こらないという確信があったから。
でもまさか、そのうみの中忍までが傷を負い、媚薬浸けになるなんて。 さすがの三代目でも予想外だろう。


「うみの中忍、汗ふきますね。 これもヘンな意味じゃないですよ? おれらを信じて下さい。」
「・・・・・くっ! しん・・・・ じて、ま・・・す ぅぅ・・・・ はっ、はぁ・・・・ ぁ・・・・」
「・・・・・アイツ超足速いですから。 もう少しの辛抱ですよ?」
「・・・ぁり、がと・・・・ ざ・・・・ んん・・・・ ふっ っ・・・ ま、す・・・・」

部隊長達の情人だと思うと・・・・ 自然に敬語になっちゃうのは仕方ないよな? 階級は下でも、さ?
玉の様に浮き出る汗を、ポンポンと拭いてあげた。 またも一生懸命笑おうとする、情人 うみの中忍。
額に張り付いた髪。 上下する肩や胸。 唾を飲み込む度にゆっくりと動く喉仏。 ・・・・・部隊長。
うみの中忍って・・・・・ 妙にエロいですよね・・・・ でもおれらは心得てますから! ほんとですから!

この場にいないカカシさんとテンゾウさんに、自分の誠実さと忠誠心をアピールしちゃうおれって・・・・
熱っぽいうみの中忍の視線から逃れる為、部屋の隅に転がってる敵忍の死体を眺めた。 超、目力を込めて。
日向家の人間じゃないのに“白眼!!”と心の中で叫んでみたり。 もちろん透視なんてできないけどな。


大丈夫だ、ちゃんと介抱できる、おれは戌班のヒロヤだ! と言い聞かせながら。 コバ、早く戻って来いよ・・・・