暗殺工作員の恋心 10
@AB
CDE
FGH
JKL
M
一歩前進だヨ。 やっとうみの中忍の目の色が変わった。 戸惑いと背徳心の入り混じった色に。
それまではホント、何でも話せる友人みたいな感じ。 そう、まさに慰霊碑に眠る二人の代わりだネ。
でもそこから別の感情が芽生える、友達以上恋人未満、ってヤツ。 その思いに罪悪感を抱いてくれた。
“二人と違う行動”それこそがオレ達が植え付けたかったモノ。 “恋心の種”とでも呼ぼうかナ?
ホラ、恋とか愛とかって、よく“芽生える”とか、そんな表現されるでショ? だから、その種。
うみの中忍からしたら、慰霊碑に眠る二人は誰よりも自分の理解者で、かけがえのない仲間だった。
彼女達は、恋心とやらを大切に心に秘めたまま逝った。 実際に触れ合うコトもなく、そのままで。
うみの中忍もまた、彼女達の理解者であろうとした。 でも心の中に留めておくだなんて無理だよネ。
ウン、それでいいんだヨ。 だってうみの中忍は知ってるはず、形のないモノがいかに無意味かを。
彼女達は自分が死んでも思い出は綺麗なままで・・・・・ とかいうロマンチストタイプだったんだろう。
どう考えてもうみの中忍はそんなタイプじゃない。 男が女の真似ごとをして忍びを狩って来たんだ。
他里の賞金首を何度もその手にかけて来た、形のない夢を与えて。 体温ほど確かなモノはないと知ってる。
確かに里のクノイチ連中は凄いヨ? 肌を合わせる回数で言えば、男の潜入員なんて目じゃない。
でもそれはやっぱり、量より質の問題。 暗殺任務も同じ、オレ達は質より量をこなしてるだけ。
違って当然なの、比べる意味がない。 内容が違うだけで、里の為に働いてるコトに変わりはないヨ。
前にベテランの潜入員で優秀なクノイチが、自分の胸を指差して“ココの宝は穢れない”って言った。
彼女達が生きてても、思い人には一生伝えないだろうネ。 穢れない欠片として持っていたと思うヨ。
俗に言う“初恋の思い出は大切に”ってヤツかな。 特別なモノなんだヨ、精神的な支えになる様な。
でもサ、男はもっと俗物なの。 精神的な支えであっても、目に見えて形のあるモノが欲しいのヨ。
うみの中忍はソレを誰よりも間近で見て来た。 本当なら自分など敵わない相手が変わっていく様を。
形のないモノをより真実として信じ込ませるには、実際に自分の体を与えるのが一番効果的だと。
だから自分の体にオレ達の痕を刻んで欲しいんだ。 “俺を忘れないで 俺も忘れない”と叫ぶように。
今回行動に出たコトは、まさに心の叫び、肉欲に負けた証。 それでいいんだヨ、オレ達 男だもん。
うみの中忍は今朝、潜入任務に出た。 オレ達が昨日、じっくり時間をかけてつけた痕を体に刻んで。
“ありがとうございました 行ってまいります”と小さく呟いて、オレ達を起こさずそっと出て行った。
気付かれていないつもりだろうケド。 ・・・・もう目がランランに冴えて寝てられない、つーの。
しっかり寝たフリに騙されちゃってサ、時間になる寸前まで確認してたの。 自分の体についた痕をネ。
そんで手首のトコについた痕を何度も撫でて・・・ 遠慮がちに唇を這わせちゃったりしてたワケ。
ソコにキスしたい、なんてバレバレの行動。 なんなの、あの可愛い反応! 唯でさえ興奮気味なのに。
ナニがどエライコトになってて、シャレになんない。 ひょっとしてこういうのを欲求不満とか言う?
「・・・・・テンゾウ。 オレもー 限界。」
「・・・・・当然ながら、ボクも限界です。」
「「出すっっ!!」」
うみの中忍を縛った紐で自慰。 お互い別々の布団にくるまり、紐を中に引っ張り込んで出した。
玩具の一つも用意してればよかったヨ。 まさか紐に欲情する日がこようとは・・・・ 誰が思う?
でも限界だった。 や、自信はあったのヨ、首と腕に痕が残る縛り方をお願いします、って言われても。
悪ノリするよと宣言しておいたから、全身ひん剥いてもちゃんと遊んでるフリ出来るもん! ってネ。
「フゥ・・・・・・ あんな顔で縛られちゃってるのネー・・・・」
「ふぅ・・・・・・ あんな声出して喜んでるんですね・・・・」
「「あの潤んだ眼・・・・・ 反則・・・・・」」
目的は果たしたヨ? うみの中忍がその痕を恋しくなる様な縛り方をして、今後も頼むよう仕向けた。
“楽しいからまた頼んでネ?”そうやって罪悪感を払拭させてあげれば、新たな口実が出来るでショ?
暗殺工作員として任務に就く為じゃなく普段会ってる時に、縛って欲しいと軽く言える様にネ。
踏み出した一歩、後は坂道を転げるがごとく。 そうやって少しずつ、オレ達に依存してもらおうと。
・・・・・なのにオレ達の方が肉欲に負けそう。 何度、噛みつきたい衝動にかられたか分からない。
あの唇に、舌に。 オレ達二人に縛られてる時、うみの中忍は無意識で挑発してくるんだもん。
「三代目じゃないケド。 ・・・・・・・アレなら心配するコトないネ。」
「信じるなと言う方が無理です。 正真正銘、最高のペットですよ。」
「・・・・・・思いの外強敵だよネ。 まいった。」
「・・・・・・先に音を上げたらどうしましょう?」
ソレを言わないでヨ。 実際にオレ達は、紐に盛るぐらいの醜態をさらしたんだから。 考えるのも怖い。
後何度、平静を保ったまま縛れるのか。 最低でも5〜6回ぐらいは遊んでるフリしようとしてたのに。
理性を総動員して頑張ったとして・・・・ 2回が限度。 緊急事態だヨ、依存させるどころじゃない。
物事は自分の思い通りにはいかないコトの方が多い。 任務にしたってイレギュラーはつきものだし。
・・・・・暗殺工作員として元暗部達を葬ってきたうみの中忍のスキルを、少しばかり甘く見てたネ。
“ねぇ 素股で出したいんだけどイイ?”とか。 素で聞いちゃいそうだった自分が怖いヨ・・・・・。
「楽しくてハマっちゃった、定例の行事にする? なんて、こっちから言ったら嫌われますよね・・・・」
「当たり前、体目当てみたいじゃないの、それじゃ。 ・・・・・・と言ったトコロで、説得力無いネ?」
「「計画を前倒しにするしかない・・・・・ かな・・・・・」」
そう、本当のコトをバラしちゃう。 スリーマンセル仲間だった二人の思い人はオレ達じゃない、って。
すり込みしてしまっただけかと、シビアな結論をうみの中忍が出すより先に、気持ちを教えてあげる。
だってオレ達は出会ってからずっと、うみの中忍を観察してきた。 本人より本人の気持ちを知ってる。
出来れば自分で気付いて欲しかったケド。 そうも言ってられなくなった。 あのエロい体のおかげで。
あんな体してて、心はあんなに温かいだなんて・・・・ ホント、反則。 忍びにあるまじきヤツだ。