暗殺工作員の恋心 6   @AB CDF GHI JKL M




ほっといても死なない、勝手に出歩かない、自分だけを待ってるペットがいたら? 飼うでショ、当然。


ねぇ、どんな風に飼われてるの? 従属型って言ってたよネ? 相手の望むままに抱かれるの?
ソイツが家に帰って来たら、ずっとくっついてるんでしょう? 従順な仔犬みたいなフリしてサ。

この人にしか言えないこんな事、みたいな顔をして“紐で縛って下さい”っておねだりするの?
恥ずかしい性癖を隠さなくていい、この人の前では嘘なんかつく必要が無い。 そんな風に甘えるの?

だって人間は基本、嘘をつく生き物。 そういう心理戦ができるから脳が発達した。 ま、まれに・・・・
ヒナから遠ざける為に、翼が傷ついたフリして囮になる親鳥もいるけどネ。 そんなのはごく一部。
霊長類ヒト科は嘘をつく、裏の裏ばかり読む忍びは特にそう。 そんな騙し合いの世界とは無縁の空間。

気の向いた時だけ相手にしても怒らない、かまってやると全身全霊で喜ぶ。 その命は自分のモノ。
もし自分が帰って来なかったら、いつかちゃんと後を追ってくるだろう生き物。 そんなの・・・・・
しかも束縛されるのを喜ぶ性癖でショ? ウン、そういう人間がホントにいたらサ、忍びなら欲しいよネ。

そんないもしない理想の人間になって軟禁されてるんだ? 里を抜けた元暗部のペットとして。





うみの中忍を含むクノイチ二名は、潜入部隊に志願。 本人達の希望通り、潜入員として現場に出た。
元来の人好きする雰囲気からか、暗殺工作員の訓練を受けてみるか、と声をかけられたそうだヨ。
情報収集するのではなく、決まったターゲットに近付き殺す。 その為だけに潜入する暗殺工作員に。

そしてうみの中忍は、忍びの従順なペットになるコトにした。 なにも本当に体張らなくてもいいのに。
でもそうやって体当たりで、全部が嘘のない反応だからこそ、どんな忍びも信じてしまうんだろうネ。
自分は狭いシェアを独占してる、と言っていた。 元暗部で里抜けした忍びだけを暗殺する工作員。


「里を抜けた暗部か・・・・・ 殺しに背を向けた忍び、そんなのに平穏が訪れる訳ないですよね。」
「ウン、一人でも百人でも誰かをこの手に殺めたら、それは一生消せない業なんだよネ。」
「忍びとして生き忍びとして死ぬのなら、最後までその業を背負ってる事になりますが・・・・・・」
「そこから逃げちゃったら、唯の人殺しだヨ。 だたの人殺しが己の平穏を望んじゃダメ。」

大陸の手配書に載ってる元暗殺部隊にいた忍び、そんなのいくら賞金額が高くても、誰も追わないヨ。
偶然出くわせば別だけど、わざわざそんな厄介なのを追わなくても、手頃な賞金首はワンサカいる。
その誰も追わないはずの忍びを、うみの中忍が取引用に狩るのネ・・・・・。 確かにシェアは狭い。

自里はその忍びの実力を知ってるだろうから、余計に追いはしないだろう。 半ば黙認で放置している。
犠牲になる忍びの命の数を考えれば、それが一番いい。 でも抜け忍、いつ里に害をなすかも分からない。
もし、そのやっかいな忍びを無傷で狩れるなら? そんな安全かつ確実な方法があるなら飛び付く。


「そうか、暗殺工作員か・・・・ ボク達はその首を持って、交渉や取引に行くだけでした。」
「どこでいつこの首を手に入れたんですか、なんて三代目に聞いた事なかったもんネ。」
「同じ殺しでも、こんなに役割が違うんですね・・・・ ははは、今更ですけど。」
「ネ? アッチは時間をかけて1人を。 コッチは迅速に大量殺人だもん。」

「・・・・・なんだかんだで優しいじゃない、うみの中忍。 どうやって仕留めるのかネ?」
「・・・・・ですよね、ボクも凄ーく興味があります。 でも聞けませんよね、そんなの。」
「「・・・・・・・・・・気になる・・・・・。」」

ウチの里の潜入部隊の暗殺工作員達は、その名の通り、表に出せない暗殺を工作し実行する忍び。
裏取引きだヨ。 大陸中の各隠れ里の不安材料、その首を持っていれば、何事も優位に立ち交渉できる。
狩りに失敗して被害を被るコトはない、だって木の葉の潜入員が1人死ぬだけ、だからネ。

でも本人も言ってたケド。 失敗しても木の葉に疑いが向かない様にしてる、チャクラを封印してまで。
今ではこの分野はうみの中忍に、というぐらいの成功率だそうだ。 つまり狙った獲物は必ず狩る。
まいったねぇ・・・・ テンゾウも、もちろんオレも。 そんなうみの中忍に惹かれる自分を止められない。
だって・・・・・ あそこで出会ったのもナニかの縁、例え人違いでもネ。 出会っちゃったんだから。





本日はあれから何回目かの飲み会。 今日はオレの実家で家飲みしてるんだヨ、気を遣わないしネ。
オフレコの話も出来るでショ? うみの中忍が慰霊碑に立ち寄るのは、彼が任務を遂行して戻って来た時。
あれから数えて五回目・・・・ つまり、四人の他里の暗部の首を狩ってきた、ってコトになるの?

・・・・?? ああそうか、そうだよネ。 暗殺工作員といっても、年がら年中暗部を狩るワケじゃない。
その情報が入ったら、か。 つい、その分野でのシェアを独占してるから、ソレ専門に動いてるのかと・・・・
うみの中忍は潜入部隊所属の潜入員。 普通の潜入任務もこなすよネ、もちろん。 フフフ、忘れてた。
へー あれから暗部暗殺任務はまだか・・・・・ ちなみに今迄何人ぐらい狩ったの?? 聞いてもいい??


驚くコトにうみの中忍は一六人もの暗部を狩っていた。 暗殺工作員になって四年、一年に四人。
なんか・・・・ それって・・・・。 ねぇ、ひょっとしてワンシーズンに1人、とか決めてるの??
かなり真剣に素朴な疑問を口に出しただけなのに、うみの中忍は大爆笑した。 ただの偶然だったらしい。

「ねぇねぇ。これ聞いていい? ここだけの話! ・・・最終的にどうやって仕留めるの?」
「あ、ボクも凄ーく興味があったんです、実は。 だってほら、1対1じゃないですか。」
「あー 企業秘密です・・・・・・・ と言いたいところですが。 俺、お二人には弱いし!」
「「ふふふ、ね? あの二人が呼んでくれたんだもんね?」」

そう、こうやってうみの中忍の思い出につけ込むでショ? そうすれば大概のコトは教えてくれるのヨ。
うみの中忍はオレ達のコトを“慰霊碑に眠る二人が心で思っていた相手”だと信じてるみたいだケド。
本当は違うんだよネ。 多分、オレ達の部隊の中の誰かだヨ。 全くもって人違いだったの。

でも、こうやっていろいろ聞き出せるからスルー。 ほらネ? 忍びは嘘をつく生き物の典型でショ?
どんどん深みにハマってるネ、一部隊を率いるオレ達が。 他里の暗部に向けるその牙にかかってみたいヨ。