暗殺工作員の恋心 5
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考えられない、そんな事って・・・・ 中忍以下なら普通、潜入員であってもチームで行動するものだよ。
だいたいがチームを組んで活動拠点を置く。 自里の忍びがその巣に出入り出来る様にしておくんだ。
・・・・ボクが知っている限りではね。 単独で潜らせるなんてのは、よっぽど経験を積んだ潜入員だよ。
この彼は・・・・ うみのイルカ中忍・・・・ とか言ったっけ? そのうみの中忍はこの若さで単独?
しかも三代目にチャクラを封印してもらっているらしい。 更に偽の記憶まで入れてもらっているとか。
ボク達 里の忍びの意思を尊重してくれる三代目、本人が望むならと協力はしてくれるだろうけど・・・・・
それでも危険な行為には違いない。 無駄に散らしていい忍びの命は絶対にない、本人といえどもね。
それは・・・・三代目ご自身が一番嫌っている事じゃないですか。 本人が希望したからと言って・・・・
彼の命と引き換えに得た情報が、万一役に立たない様なモノならどうするんですか? 犬死ですよ。
ボク達は三代目の直属で暗殺部隊を率いています、確かに現場は違いますが、これは見過ごせません。
「・・・・・むむ。 なんじゃい、その不満そうな眼は。 言うてみい。」
「潜入員は情報収集が主な任務でしょう? 単独行動なんて危険ですよ、いくらなんでも。」
「納得出来ませんネ、三代目。 一人で情報収集? なら彼だけが狙われるのを前提ですか?」
「わー 凄いな・・・・ こんなに心配して頂けるだなんて・・・・・ ちょっと感激です。」
「「のん気に感激してる場合?! 自分の事でしょう?!」」
「・・・・言うたじゃろ? 心の隙間に入るのが上手なんじゃよ、特にお主達の様な・・・・ 忍びのな。」
「「・・・・っ?!」」
そうか、うん確かに。 疑って悪かったと思ってたから・・・・ 余計に親身になってしまった。
うみの中忍自身も言った通り、ボク達はチャクラもないくせに忍びだと語る人物を不審に思っただけだ。
そして監視しながら火影室まで誘導しただけ、いきなり詰問や捕縛などせずに。 当たり前の事だ。
なのに。 潜入部隊の事なんて口出ししていいはずが無いのに、三代目に進言した。 気を許したのか??
「・・・・・・・・・・俺、男のくせに恥ずかしい性癖を持ってるんですよ。 従属型です。」
「「・・・・・・・・・性癖・・・・って・・・ はあ?!」」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・という偽の記憶です。 納得しました?」
「ほほほ! ペットとして飼われておるのじゃよ、そういう志向の輩にの。」
「・・・・・・・・・・え? マゾヒスト?」
「ちょっと違います。 緊縛系です。 紐フェチです。」
「・・・・・・・・やっぱりMじゃないの。」
「大雑把に言うとそうかも・・・・?? まあ、とにかく縛られるのが大好きな性癖の持ち主。」
えっと・・・・ 彼、うみの中忍は潜入中、チャクラを封印してるんだよね? で、紐フェチの記憶も。
飼われてるって・・・・・ まさか本当に・・・・・ あの、縛られちゃってたりするの?? 紐とかで。
生活を共にするとか何とか・・・・ 飼われるって・・・・ 全部アリアリで軟禁生活を送ってるの?
特にボク達の様な忍び、と三代目はさっき言った。 それって暗部の事? 飼い主は他里の暗部なの?!
と言う事は・・・・ うみの中忍の潜入任務というのは、情報収集が目的じゃない・・・・ とか言う??
まさか。 ボク達と同じで暗殺任務なのか?! 潜入部隊にも暗殺を専門にしてる工作員がいる、って聞く。
ひょっとして・・・・・ うみの中忍は普通の潜入員じゃなくて・・・・ 潜入部隊の暗殺工作員なのか?!
「「もしかして。 ・・・・暗殺工作員??」」
「はい、だから単独です。 万一俺が殺られても、木の葉の里とは無関係ですので。」
「「・・・・はぁ〜 確かに肝が据わってる・・・・・ 納得。」」
「危険だとも思うが、こ奴なら大丈夫だとも思う。 複雑な心境じゃて。」
「三代目・・・・ ありがとうございます。」
「「・・・・・・・・・・。」」
ボク達は大量に殺しをするけど、いちいちどんな顔してどんな事情を抱えて、なんて気にしない。
でもうみの中忍は、対象と一緒に暮らして肌を合わせてる、そして信用させたその対象一人を殺す。
どっちが、なんて言えないけど。 ・・・・・それでもブレない強靭な心の持ち主である事だけは確かだ。
飛び抜けて人目を惹く容姿をしている訳ではない。 でも人好きのする男だ。 当たり障りが無い。
慰霊碑で言ってた“この傷のおかげで色々得するんです”というのは・・・・ この事だったのか。
幼少の頃、性的虐待を受けた痕だとか、木の葉の忍びに付けられた傷だとか、確かにいくらでも作れる。
自分の持っているモノ全てを使って・・・・・ 立派に里の忍びとして任務を遂行しているんだね。
慰霊碑で眠っている、うみの中忍のスリーマンセル仲間だった二人も。 優秀な潜入員だったんだろう。
同じ事をいうと言っていた。 きっと暗殺工作員としてのうみの中忍の事を、心配してただろうな。
そうか、ボク達のファンだったっけ。 君達がボク達とうみの中忍を引き会わせてくれたのかな?
なんだか妙な気分だ。 潜入員のくれた情報は活用するけど、その本人達に会う事はめったにない。
里に居ても潜入員の情報は探っちゃいけない事になってるし、本人だと知ってもスルーするのがルール。
なのに自分から足を突っ込んだ。 わざわざ声をかけた。 そっと後をつけるだけでもよかったのに。
うみの中忍は上手に心の隙間に入り込む事が出来る、と三代目は言った。 その通りですよ、ええ。
ボク達が素顔のままで声をかけた。 もちろん疑ったけど、話す前までは疑いもしなかったし。
死んだ仲間に声をかけてやってと言われて、部隊と名を明かした。 チャクラも何もない男の前で。
遠目からの第一印象で彼は、敵ではないとボク達に感じさせたんだ。 信用してしまった、それが事実。
この不思議な出会いで、ボク達三人は交流を持つようになった。 階級も違うし所属する部隊も違うけど。
疑ってバツが悪かったせいも少しはある。 男同士で年が近かったのもある。 ボクなんて同い年だ。
里に戻って来たら必ず慰霊碑へ一番に行くうみの中忍、慰霊碑でその姿をみかけたら三人で飲みに行った。
うみの中忍の死んだスリーマンセル仲間はクノイチだそうだ。 ただのファンじゃなく、思いを秘めてた。
話の内容からてっきりそうだと思ってたけど、どうやら彼女達の意中のお相手はボク達じゃない。
聞けば聞くほど人違いだと分かった。 でもカカシ先輩もボクも、あえて訂正はしなかったんだ。
彼と会って話す度に、彼がボク達の心の中に入って来た。 知れば知るほど、彼に惹かれて行ったから。
他里の暗部の心の隙間に入って暗殺工作をする潜入員、まるでボク達 暗部隊員の天敵の様なうみの中忍に。