暗殺工作員の恋心 2   @BC DEF GHI JKL M




『はあ?! 暗部・・・・・ だって?! 馬鹿だろ、お前ら。』
『うるさいわね! 良いじゃない、思ってるだけなんだからっ!!』
『それに何だって? 自分達に興味を示さなかったから?? なにそれ。 不能なんじゃないの??』
『バカなのはイルカッ! そういうのが本当の意味での紳士、っていうのよっ!』

『 “任務中の里の仲間は抱かないんだ、酷くしちゃうから”・・・・・ 酷くしたっていいのにv』
『 “慰めて欲しいだけならいいよ、虚しくなると思うけどね”・・・・・ 虚しくなっていいのにv』
『そういうのをな、体の良いお断り、っていうんだ。 それでも潜入員か?』
『『何言ってんのっ! 裸体のクノイチを目の前にして言えると思う?! あの暗部がっ!!』』
『・・・・・・・・・・。 あー まあ、それは一理あるな。 うん。』

『『・・・・・くすっ! 羨ましいんでしょう、イルカ。 くすくす!!』』
『別に? 俺、男だし。 ロマンスは皆無だしな。』
『『はい、はい、そういう事にしときましょう? くすくす!』』
『・・・・・・・・・・・むぅ。』





俺達の希望通り、潜入部隊への転属が決まった。 潜入は地味な仕事だから、希望者は少ないんだって。
まあ、偶然にでもあんな殺しの現場を見なかったら、俺達も転属希望はださなかったかもな・・・・。
そんな中で、俺はひと際大歓迎された。 潜入員になりたい男は、クノイチに比べて少ないそうだ。

転属のキッカケとなった潜入員は男だったけど。 情報収集していた忍びは圧倒的に女が多かった。
女、子供、老人・・・・ そして男の順かな、比率でいくと。 俺の場合は子供で男、だったから。
こりゃ便利だと大歓迎されたんだ。 成り手が少なければ、そこを占めるシェアの割合が大きいからな。

忍びの忍術は身を守る最大の力だけど、潜入員にかぎっては、よっぽどの事がないかぎり忍術は使わない。
凄いチャクラコントロールを身につけていて、長期に渡って変化し続ける忍びもいるけどね、実際に。
でも中の上ぐらいじゃ、バレるのがオチ。 あの潜入員との会話もヒントになって、俺は決めたんだ。

先入観の裏読みが相手に隙を与えるなら。 こいつが忍びなわけはないな、と思わせてしまえばいい。
どんな強い忍びも隙を見せれば終わり。 それなら・・・・ いつでも殺せる様な、か弱い者に扮しよう。
潜入中は一切忍術を使わない、チャクラを封印する。 とことんまで一般人になりきるんだ、ってな。

チャクラを封印して潜るのは、忍者にとって丸裸も同然、みすみす力のある命を無駄にするのか! って。
三代目を始め、潜入部隊の皆に猛反対されたけど。 今現在、こうして生き残ってる俺がその成果の証。

「よう、久しぶり。 お前らの予想に反して、まだしぶとく生き残ってるよ、俺。」

潜入から里に戻ると、俺はその足で慰霊碑に向かう。 両親と、スリーマンセルの二人に会いに。
三人で下忍に昇格した。 チームを組んで伝令部に配属されて、三人で転属希望を出して潜入員になった。
そして俺を残して、二人は死んだ。 一人は敵に拉致されて自害した。 一人は潜入がバレて殺された。
一番最初に死んじゃうよと、二人に心配されてた俺が・・・・・ 俺だけが。 まだこうやって生きてる。

「ふふふ、今、誰に会ったと思う? ほら、俺達の道を大きく変えた・・・・ あの男の人。」

他国の大名の家臣として潜るそうだ。 おそらく、その国での情報は、全部あの男から流れて来るだろう。
俺にワザと聞かせる様に言ってた。 自分を覚えていてくれ、そう言っている様にも感じたな・・・・
それはそうだろう。 他国に草として潜る・・・・ それはそこで死んだら、木の葉に戻って来ないという事。
そこの家臣としてその国で葬られる。 その覚悟からだろうな、自分の額当てをここに埋めてたんだ。

まあ、あの人なら・・・ 任期が終わったら何が何でも生き残って帰ってくるだろう。 そんな気がする。
ちゃっかり自分の死まで偽装して戻ってくるんだよ、絶対。 で、何事もなかったかのように、また。
俺も独り言を言ってみた。 今の俺があるのはあなたのおかげです、って。 クス! って笑われたけど。




生身の体で体当たり勝負してるからね、俺。 自慢じゃないけどそういう経験だけは豊富なんだよ。
ん? 何の経験かって?? 性的経験、ってヤツ。 そりゃ、クノイチ連中の足元にも及ばないけどな。
子供を卒業した俺は、何が一番か弱く見えるのか考えた。 で、行きついた先が飼い主に依存するペット。
・・・・・まあ、そういう志向の店で働きたいけど、働く決心もつかない臆病な・・・ って感じの青年。

その手の店の前で、ウロウロしてるんだよ。 入ろうか入るまいか、何度もため息なんかをつきながら。
すると大抵、そういう志向の奴が嬉しそうに声をかけて来るんだよな。 自分に飼われてみないかって。
・・・・意外に淋しがりの奴が多いんだよ、忍びは。 純粋な愛情っていうのかな、裏切らない安心感?
とにかく、自分に逆らわず自分がいなければ生きていけない様な、そんな生きたペットを欲しがる。

家を空ける事が多いのがその要因だろう。 ほっとけば動物じゃ餓死しちゃうし、恋人なら文句を言う。
花街の遊女や陰間を身請けしたとしても同じ。 ほおっておけば哀想をつかされて出て行っちゃう。
下手したら、自分のいない隙に誰かを連れ込んで、好き勝手するかもしれない。 手間がかかるよな。

「飼い主に従順なペット。 しかも自炊するから、ほっておいても大丈夫。 もうメロメロだろ?」

おかげで体は玩具の様に扱われる事がしばしば。 でも家を空ける事が多いから毎日じゃないし。
そのうちに同情なんてのもしちゃったりする。 この男、俺がいなくなったら泣くんだろうな、とか。
そうやって淋しい忍びの心につけ入るんだよ、俺。 最低だろ? 恋心、なんてのは・・・・ 必要ない。
飼われている間、俺はその男にずっと同情してるから。 そんで、偽善にも心の中で謝ったりしてる。

「そういうのが目に出てるみたいでさ。 逆に“心配するな”とか言われちゃったりな。」

潜入部隊に配属されて、潜入員として独り立ちして。 こうやって任務をこなすようになったけど。
お前らの様に、心に留めておくような思い、出会った事はないんだよな、一度も。 ああ、そうさ。
あの時はああ言ったけど。 本当はちょっとだけ・・・・ 羨ましかったんだよ、俺。 ほんの、ちょっとな。