蒼〈あお〉の一族の呪い 1
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「私だってあんな事になるとは思わなかった。 皆、私を慕ってくれていた子供達ばかりだ、そうだろ?
ここにいる者達の情報を、うのみにした私が悪いのだ・・・・ どう償えば、私の罪は消える?
いっそ、この場でハラワタを取り出して、のたうちまわれば、せめてもの余興になるだろうか・・・・」
「おやめ下さい、夕霧〈ユウギリ〉様!! そんなことは誰も望みません!!」
「天国のあの子は、夕霧様を慕っておりました、あなた様の命ほど尊いモノはございません!!」
「そんな怪しい情報を流したコイツらに、その責任があると思わないか?」
「そうだ、そうだ!! 夕霧様はコイツらを信じたがゆえに裏切られた!」
「アイツらこそ、諸悪の根源! あの一族を滅ぼしてしまえっ!!」
「全員、抹殺だ!! 我らの名将、大名夕霧様をそそのかした罪を、償わせろっ!!」
「一族を滅ぼせ!! アイツらは疫病神だ! もともと流浪の民だったじゃないかっ!」
「夕霧様に土地まで与えてもらった恩を、仇で返した奴らなんか生かしておくなっ!!」
ここ鉱〈コウ〉の国を代表する大名、夕霧 敏哉〈トシヤ〉は、他国にも名将として知れ渡っている。
国主の夕霧に対する信頼は厚い。 先の忍界大戦時、夕霧の知恵で国主は何度も窮地を救われた。
この国が忍び五大国に吸収されず生き残れたのは、参謀としての夕霧の活躍があったからだという。
忍び五大国に対抗し、国の隠れ里として石忍を雇い入れ、国内安定を実現させたのも夕霧の提案だ。
だから大名夕霧を、国の誰もが信頼している。 だが夕霧は変わってしまった。 そんな人物でさえ。
私欲と物欲に目が眩んだ夕霧は、もはや皆が尊敬した名将の夕霧では、無くなってしまっていた。
「夕霧様を信用して、一族の秘密を打ち明けたのが、まさかこんな結果になろうとは・・・・。」
「父上、火の国を訪ねてみては、いかがでしょう? 木の葉隠れの影は、情に厚いと聞いております。」
「果たして、里も持たない呪われし一族の為に、石隠れの忍びを敵に回してくれるかどうか・・・・。」
「他国に見返りを求めず介入してくれるのは、木の葉隠れの里しかないと。 父上、ご決断を!」
わたし達、蒼〈あお〉の一族は呪われた一族だ。 昔かけられた呪いが今も一族を苦しめている。
宝石《アクアマリン》よりも少し濃い青色、《サファイヤ》より薄い青色。 その中間色。
ちまたでは《ピュアサファイヤ》と呼ばれている宝石がある。 その宝石こそ、わたし達の死骸の一部。
わたし達一族にかけられた呪い、それは死んだらその身が、薄い青色の鉱物になる事。
「わかった。 この国では夕霧様の信用は絶対のモノ。 誰も我らの言う事など信じはせんだろう。」
「所詮、我らは流浪の民、古き呪いを受けし一族。 定住の地を求めたのが、いけなかったのです。」
「・・・・・己の欲に負けた者は、人の欲に狩られる。 ・・・・これが因果応報なのだな・・・・」
「呪いは甘んじて受けましょう。 しかしこれ以上、無知の他人を巻き込むことは、許されません。」
昔、一族に少女がいた。 その少女は不思議な血液を持っていた。 鉱石に赤色をつけられたのだ。
ダイヤがピンクダイヤに、トパーズがピンクトパーズに、あらゆる鉱石の結晶と、色素同化する血液。
蒼の一族は、その少女の能力を悪用した。 監禁し、血を採り続けて、ついには死なせてしまった。
その後、一族が死ぬと、必ず死体が鉱物に変わった。 その少女の呪いだと、伝えられている。
「我らのこの行動は、いずれ夕霧様の知るところとなる・・・・ すぐに発つがよかろう。」
「父上。 必ずや火影殿に面会し、コレで雇えるだけの忍びを雇ってまいります。」
「さあ、もう行け。 ・・・・・お主の不在が知れたら、夕霧様が不審に思う。 頼んだぞ、サキ。」
「はい。 ・・・・・・父上、わたしが戻るまで、くれぐれも無茶な事は考えないで下さい。」
「許せ、サキ。 お前だけはどうか・・・・」
一族の長である父から書状を預かり、わたしは木の葉の里を目指し、火の国に入った。
報酬として、ピュアサファイヤの元になる鉱石を渡すつもりだ。 つまり、一族の死骸の一部だ。
わたし達の一族は、こうやって鉱石を宝石にして、現金化する。 生きるスベとして、仲間の遺体を。
もちろんそれだけではないが、何かの時に大きく入り用になったら、その一部を砕き、売って凌いで来た。
あまり出回らないピュアサファイヤは、かなりの値で取引される。 充分な報酬になるはずだ。
「あうんの門・・・・ ここね・・・・ 父上、やっと着きました。 待ってて下さい、必ず・・・・。」