蒼〈あお〉の一族の呪い 4   @AB DEF GHI JKL M




こうやってわたしがココにいる間、一族の皆はどうなっているのだろう。 父は無事だろうか・・・・。

幼い少女を、己が欲の為に殺した恥ずべき一族。 呪いを受け、そのまま滅んでしまえばよかったのだ。
生にしがみついた結果、争いの火種を起してしまった。 生きているだけで感謝すべきだったのに。
普通の生活などに憧れなければ。 我らもまた、過ぎた欲を持ってしまったがゆえに間違えてしまった。


「長旅だったでしょう? 昨日はよく眠れましたか? これ、薬蕩です、よかったら飲んで下さい。」
「あリがとうございます、あ・・・・ あなたは受付にいた方ですね?」
「申し遅れました。 俺はイルカといいます。 受付に入ってましたが、本業は教師、中忍です。」

「受付で、教師で、中忍・・・・  ふふふふ、随分たくさんの顔をお持ちで。」
「最近では火影室の書類整理なんかもやらされてます。 いやー、断れないんですよね、はははは。」
「ふふふ、とてもお優しい方なんですね。」

昨日、受付にいた忍びは、ここ、火影屋敷にも出入り自由のようだ。 よほど信を置かれているのだろう。
こんなニコニコした男でも、人を殺めたりするのだろうか? とても忍びには見えない・・・・。

わたしが雇いたい忍とは、違うタイプの忍びだ。 わたしが雇いたい忍びは・・・・ と考えていたら、
不意に空気が重くなり、ふたりの面をつけた男が現れた。 そう、こういう冷たい空気を感じさせる忍び。
大名夕霧と石隠れから、力ずくで一族を開放してくれそうな、こういう隙のない強そうな忍びがいい。

「そこらへんで会話ストップ。 優しいんじゃなくてお人好しなダケ。 イルカ先生、三代目が呼んでる。」
「あなたも来て下さい。 サキさん、でしたっけ? あ、この人、他人の世話焼きが趣味なだけですから。」
「は、はい! わかりました、すぐに・・・・・」

「む! お人好しに、世話焼き・・・・ 人をよくいるオバサンみたいに、言わないでくれます?」
「だってそうじゃない。」
「事実を言ったまでです。」

「ムカつくっ!! ちょっと偉いからって、そんなカッコいい登場しないでくれませんかねぇ。」
「んー? 実際イルカ先生より、偉いモン。」
「カッコいいですかね? 普通なんですが。」

「ふふふ、昨日も思いましたけど、イルカさんの会話って、夫婦漫才みたいですね、クスクスクス。」
「め・・・・夫婦漫才・・・・・。 ガ〜ン・・・・・。」

偉い・・・? そうか、彼らはイルカさんより、階級が上の忍びなのか。 昨日の火影との会話も・・・
自分より立場が上の人に、こうやって気がねなく話しが出来るなんて、なんという自由な里だろう。

障子を開けて入って来たイルカさんと違い、彼らは突然、わたしの後ろに現れた。 音も立てずに。
それはココが、忍びの里内であるという確かな証拠。 その気ならいつでも殺せる、そういう事だ。
わたしが持って来た鉱石で、彼らのような忍びを何人ぐらい雇えるのか。 火影に相談してみよう。




「こ奴らは、ワシ直属の暗殺部隊じゃ。 お前さんが信用してくれるなら、就けましょう。」
「信用? なにを今さら。 そのような忍びなら、直の事。 こんなに心強い事は・・・・」
「三人じゃ。 こ奴らなら三人いれば充分。 それを信用して下さるかと、お尋ねしたい。 よろしいか?」
!!!!!


まずは一晩泊めて頂いたお礼と、改めて任務依頼をお願いした。 一族の救出と、大名 夕霧の暗殺を。
そして出来るなら、このふたりのような強そうな忍びをたくさん雇いたい、と言った。
思った通り、このふたりはただの忍びではなかったのだ。 火影直属の暗殺部隊、きっと強い忍び。
だが三人? たった三人で・・・・ わたしの依頼を受けると・・・・・ それを信じろと言うのか?

「それほどまでに彼らの値は張るのですね、この鉱石で雇えるのは・・・ たった三人だと。」
「そうではない。 国交の問題が絡む故、大部隊は極力避けたい。 こ奴らなら大部隊と同じ働きをしおる。」
「三人だけでこの依頼を成功させるという保証が・・・・ たくさんの石忍を、三人で?」
「その鉱石で、里の上忍を10人は雇える。 依頼主はお前さんじゃ、どちらでも好きに選ぶがええ。」

明らかに無謀だ。 わたしはついイルカさんを見てしまった。 彼に同意を求めたかったからかもしれない。
ところが彼は、ニッコリと笑い力強く頷いた。 気付くとそのイルカさんの傍に、もう一人の面の男がいた。
火影が言った三人とは、その男とこのふたりだ。 ・・・・・・なんだろう、無謀だと思ったのに・・・・。
わたしはなぜか、イルカさんに頷き返していた。 信じよう木の葉の里を。 今一度、火影に頭を下げた。


「火影殿直属の忍びを三人も雇えるとは、これ以上の幸運はないと感じました。」
「・・・信用して下されたか。 決して後悔はさせぬゆえ、安心されよ。」
「皆を助けて下さい! 夕霧を・・・ 欲に溺れたあの男に死を!! お願い申します。」
「暗殺戦術特殊部隊 戌・猫・猿 の各部隊長に命じる。 これより依頼人と共に鉱の国へ発て。」

「「「御意。」」」




「あ奴らは門で待機しとるはずじゃ。 ところでサキさん、中忍ひとりもオマケするからの?」
「?? はぁ・・・・ ありがとうございます・・・・ でも・・・・」

「イルカ。 今、アカデミーは夏休みじゃの? お主、一緒に行って来い。」
「え? あの・・・・ イルカさんが・・・・ ですか??」
「はい、喜んで、三代目!!   サキさん、よろしく!」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします・・・・・。」

・・・・オマケ。 イルカさんがオマケだそうだ。 渡航の手配やなんかをしてくれるのかもしれない。
わたしは木の葉の暗部三人と中忍一人を伴って、鉱の国へ戻る。 大名 夕霧の治める島へ。

父上は、わたし一人を逃がそうとした。 ひとりだけ生き残るぐらいなら、皆と滅んだ方がいい・・・・。