蒼〈あお〉の一族の呪い 14
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「勘違いなんかしてませんよ、コレはお礼の・・・・」
「そんな下心アリアリなお土産、オレ達のイルカ先生に渡さないでくれる?!」
「ただ黙って任務報告をすればいいだけです。 それ以外に何を? コレは没収!」
「ああ! 万元堂の芋きんつばがっ!」
「上忍から、カツアゲみたいな真似を暗部がするな! みっともないっ!!」
「「あ、イルカ先生vvv」」
「ちょっとそこへ、座りなさい。 いいですか? あなた達は皆がカッコいいと憧れる暗部で・・・・」
これもここ最近の光景。 まず、イルカさんが暗部の人に呼ばれる。 そして、ふたりにお説教をする。
世話焼きのイルカさんは、やっぱり他の人にも潜入先の巻物を渡す。 お礼にとお土産をもらったり。
彼はそんな事を期待して、マーカー入りの地図を作る訳じゃない。 ただ仲間を心配しているだけなのだが。
ふたりはそれが面白くないらしい。 当事者の忍びを捕まえては、お土産を没収して捨てるそうだ。
「やっぱ、おふくろじゃないと。 オレらじゃ、部隊長達を止められませんからね。」
「ふふふ、イルカさん、本当にお母さんみたい。 男の人なのに! くすくす!」
「暗部が他の忍びからカツアゲなんて、マズイですよ。 オレら一応、民の憧れなんで。」
「その憧れがお説教されるのは、絵的にいくとまずいんじゃないですか? ふふふ。」
「あ・・・・ ま、そのへんはホラ、おふくろだから・・・・ ふたりの奥さんだし、ね?」
そう、叱られてるふたりは、どことなく嬉しそうな雰囲気を漂わせている。 面がなかったら、デレデレだ。
“かまって、もっとかっまって!”と声が聞こえてきそうなほど、甘えた顔になっているに違いない。
イルカさんもそのうちに“もう! そんな嬉しそうにして・・・”と苦笑い。 お説教終了となる。
“わかりましたね?”の言葉に“はい!”なんてイイ子の返事。 絶対わかってないのに決まってる。
わたし達蒼の一族は、大陸を旅する語りべとして、各地を転々としている。 木の葉の里を出て一年。
二か月前、女の子を出産、カオリと名付けた。 きっと一族を背負う、強い子に育ってくれるはず。
一族が種をつけた子をひとりもらって、今では8人の所帯。 増やすのは10人までと決めた。
種をもらうか、種をつけるか。 相手に呪いの事を、決して知られてはならない。 争いの元になるから。
許しがくるその日まで一族の血は絶やさず、供養の旅路を歩き続ける。 それがわたし達の命の重み。
あの爆発事故で、一族の古い書物が失われた。 もう、呪いの秘密を探るすべはない。 けれど。
木の葉隠れの里の火影は言った。 石忍の古代文字の解釈は、間違っている可能性がある、と。
“他民族に一族の血を飲ませる”という解釈より“他民族の血が一族に混ざった”のではないかと。
『怪我か何か、何らかの形で輸血を受けたのじゃろう』 ・・・確かに。 そう考える方が自然だ。
だとしたら、元凶はその輸血してくれた相手、という事になる。 物質の色を変えられるような力。
忍者の中には血継限界という、特殊な力を持つ者がいるそうだ。 これは憶測なのだが・・・・・
遥か昔、一族の少女に血を与えたのは、そういう忍びだったのかもしれない。 突然変異は、この事?
そして変異したその血液は、ウイルスのように感染力を持ち、血に触った人間の体質を変えたのでは?
感染した者は、細胞の活動停止と共に固体に変わる。 もしそうなら、これは呪いではないかもしれない。
無理やり一族の血を飲まされた、鉱の国の子供達は、皆、腹が裂け内臓が飛び出して死んだ。
鉱物とまではいかないが、飲んだ血が不意に固体になる事も考えられる。 これも突然変異かも。
そのせいで内臓が圧迫され、ついには皮膚をつき破り、腹が裂けたのではないだろうか?
全ては、わたしひとりの憶測だ。 一族の者が死ねば、高価な鉱物になる、という事実は変わらない。
人の欲を煽り、争いを生む元になるのも、変わらない事実。 ならば、少数の流浪民でいるのが一番いい。
その身の戒めとして、呪いだと伝え質素に生きる事が、人の欲から一族を守る唯一の方法だと思う。
「長、昨日の子供たちが。 もう一度、お話を聞かせて欲しいって、来てますよ?」
「ふふ。 わかった。 アサツユ、カオリをお願いね?」
「はい。 あの子供達の、ワクワクした目。 語りがいがありますよね。」
「実際の彼らは、もっと凄いのに。 ああ、あの子達に見せてあげたい!」
各地を回り、忍びの武勇伝を語って聞かせている。 子供達は皆、わたし達の話に夢中になる。
どこに行っても忍びは人気だ。 もちろん里や忍びの名前は架空。 でないと大変な事になるでしょう?
いつかまた、火の国に行くかもしれない。 あの火影や、素晴らしい忍び達に、逢えるかもしれない。
温かくて、優しくて、とっても人間らしくて・・・・ けれど、恐ろしく強い忍び達に。
「じゃあ、始めるわよ? これはとある国の隠れ里。 ある忍び達の物語・・・・・・」
依頼人からみた木の葉の里を書いてみたかったんです。 あと、おふくろさんなイルカ先生も。(笑) 聖