蒼〈あお〉の一族の呪い 10   @AB CDE FGH JKL M




「見損なわないで下さい、父上! わたしが・・・ ひとりで亡命など出来るとお思いかっ!」
「その声は、サキ?! どうして・・・・ なぜ・・・・ お前が此処に・・・・。」
「サキさま!」 「ご無事でしたか!」 「よかった、サキさま・・・・」
「みな・・・・ よく・・・ 生きて・・・・・ 父上っ!! うぅ・・・・ 父上っっ!!!」

最下層は拷問部屋と牢屋だった。 そこで生存者数人と、たくさんの鉱物。 そして父を、発見した。
これで、建物全ての部屋を回った。 父と皆の顔を見た途端、抑えてた涙が、とめどなく溢れてくる。
父は酷い拷問を受け、目は潰され、爪が剥がされ、足首がなかった。 けれど・・・・ それでも。
生きていた。 生きていてくれた。 わたしは・・・・・ わたしは、ひとりじゃないっ!!

「たった一人の為に、みなが犠牲になるなんて絶対させないから。 そんなの、わたしが許さないっ!」
「サキさま、私達はみんな、次の長のあなたの為なら、喜んで犠牲になります。」
「おれ達は遥か昔、同族の少女を殺してしまった。 同じ過ちは繰り返さない、あなたを売る訳がない。」
「ずっと前海に落ちて、もう駄目だと思った。 サキさまだけが諦めずに探してくれた事、今も覚えてる。」


わたしがいなくなった事は、あれからすぐ、夕霧に知れた。 夕霧は、とうとう本性を現した。
国主に直訴でもしに行かせたか、その前にわたしを見つけ出し殺す、そう言ったそうだ。
まあ、運よく国主に直訴出来たとしても、信じてはもらえぬだろうがな、と捨て台詞まではいて。
本島に石忍を向かわせていたのなら、わたしが見つかる訳がない。 火の国に行ったのだから。

怒りに狂った領民に、一族は皆殺しにされたという事にして、ひとり残らずここへ連れてこられた。
夕霧はその領民達を仕方なく処刑した。 領内の平和を乱した罪、ケンカ両成敗だと公表したそうだ。


父を拷問にかけたが、ひと言も話さない。 一族の者が、ひとり、またひとりと、父の前で殺された。
それでも何も言わない父。 夕霧は拷問に飽きて、コイツラを使って血液の研究をしろと、石忍に命じる。
そして、この牢から毎日、一族の者が上の研究室へと、連れていかれた。 皆、死ぬ覚悟を決めていたと。

「感動の再会を邪魔して悪いんだケド。 早く保護して、撤退するヨ?」
「そろそろ、おふくろさんも、上に来てるかもしれないしな。」
「この階で起爆札の準備は全部、終わりました。 あとは脱出するだけです。」
「みんな、すこし浮遊感があるけど心配しないでね、いい?」

わたしは皆の名を順に呼ぶ。 父は見えないからオタオタしている。 何が起きているのか、わからないから。
血でゴワゴワしている変わり果てた父。 その父を、少し可愛らしいと思った。 大きな父を小さく感じた。
これからは、わたしが皆をまとめていかなければ。 例え、呪われた一族であろうと、その命が続く限り。




「そろそろ出て来る頃だと、思ってました。」
「お疲れさん、おれ達も今終わったとこだ。」
「??? えっと・・・・ ぼくは、どこの子かな? お父さんとお母さんは?」

「な・・・・ イ、イルカ先生、何ですかその格好?! そんななりしてウロウロしてたんですか?!」
「チョット! イルカ先生、もうそんな変化、解きなさいヨ! 夕霧暗殺完了したんでショ?!」
「え?! ・・・・・えーーっ! イルカさん?! この小さい子が?!」

「あ、そうだった! 変化したままだった・・・・・  解!!」
「まったく! 城の人間は、手癖の悪いのが多いんですよ?! ヘンな目に合ったらどうするんですか!」
「なにも自分に変化しなくてもいいでショ?! もっと可愛くない子に化ければイイじゃない!!」
「・・・・ふたりとも口うるさい小舅みたいですよ? せっかくカッコいいのにもったいない。」


「な? アレを要訳するとだな。 “イタズラされないか心配だ”だ。」
「なるほど。 “小さくてもイルカさんなら可愛い”なんですね?」
「ふっ・・・・・ あんた、やるなぁ。 一口乗るか?」
「くすくすくす。 いやー、楽しいですね、わたしも賭けようかな?」

ボロの小型船に戻る途中、カオルさんの背中で話をした。 暗部の中では、ほとんどカカシさんだそうだ。
カカシさんには頭が上がらない、って事でテンゾウさんは次点。 ふたりとも振られる、が大穴。
かおるさんは? って聞いたけど、教えてもらえなかった。 どっちに賭けたのかな? あたしは・・・・

忍者の社会では思想が自由なのよね? だったら重婚なんてのもアリかな。 三人で、って面白そう。
そう言ったらカオルさんが驚いていた。 “折半か、おれのひとり勝ちだと思ってたのに”だって、ふふふ!



大きな爆発の音が聞こえて来た。 ここまで聞こえるなんて。 あの施設がまるまる吹っ飛んだんだ・・・・・。