蒼〈あお〉の一族の呪い 7   @AB CDE GHI JKL M




カカシさんが石忍を捕らえ“サキを発見、捕獲”と暗示をかけた。 わたしに変化したテンゾウさん。
その石忍は“族長の娘”を捕まえたと、研究所内に変化したテンゾウさんを連れて行った。
堂々と正面から入る。 おそらく、ここの責任者とも言うべき忍びの元へ、差し出すはずだろう。
中のテンゾウさんが、同室内の忍びを始末したら、わたし達を口寄せしてくれる手筈になっている。



「潜水艦の中でイルカさんに教えて頂いた、忍術や用語など、もの凄く勉強になりました。」
「あのお人好しは、実際イイ先生だからネ。 イルカ先生は、先生やってる時が一番楽しそう。」
「ふふふ。 “一番楽しそう”って事は、どんな時のイルカさんも見ている、という事ですね?」
「別にヘンな意味じゃないヨ。 ホントのコトだもん。」

「ほらな、言ったろ? 超がつく音痴だって。」
「くすくす、確かに。 超がつきますね。 ふふふ。」
「・・・・・・ ナニ? 何なの??」

思わずからかってしまった。 目にもとまらぬ速さで、石忍を捕まえた人と同一人物だとは思えない。
テンゾウさんも、きっとこんな感じなんだろう。 一流の忍びの可愛らしい一面を見れて微笑ましい。

わたしの心臓が破裂するんじゃないか、と思うぐらい緊張するはずなのに。 肩の力が抜けていた。
こんな人間らしい忍び達と一緒のせいだ。  ・・・・・?? きた! イルカさんが言った、浮遊感!
今回の作戦時に関わる忍術を、イルカさんに説明してもらった。 今のコレが、口寄せの術なんだ!


口寄せされた先の部屋には、4〜5人の石忍と思われる死体があった。 首がないから確かめるスベはない。

「とりあえず、この部屋の石忍は、全員殺しておきましたから。」
「お疲れさん、テンゾウ。 ・・・・・サキさん、この部屋から始めてくれ。」
「蒼の一族だと思ったら、巻物で保護。 この部屋にいないと思ったら“ゼロ”だヨ、イイ?」
「はい。 この部屋には・・・・誰も。 “ゼロ”です!」

「そうか、わかった。 よし、次の部屋に行くぞっ!!」
「石忍は気にしないで、ボク達がいます。 “救出”に集中して下さい、行きますよ?」
「頑張って、見つけてあげなネ、みんなきっとあんたを待ってる。 行くヨ?」
「はいっ!!」

口寄せされた部屋には残念ながら、一族の欠片もなかった。 この建物の部屋をひとつづつ調べる。
敵に異変を悟られれば、石の里から本隊が来る。 火影が言った “国交問題” に発展させてはならない。
少しづつ確実に、研究所内の石忍達を始末して行く作戦だ。 迅速に、隠密に、正確に、敵を仕留める。


「・・・・・ゼロです!」
「次の部屋行くヨッ!」

「・・・・・ゼロです!!」
「よし、次っ!」

「・・・・ゼロ!」
「地上クリア!! サキさん、地下に行きます!!」

予想はしていた。 表向きは鉱物研究所だから見える所には何もないと。 夕霧の欲は地下にある。
以前わたしが忍びこんだ時、この先の実験室で婆さまや爺さまを見つけた。 その亡骸である鉱物を。
ココからだ、覚悟を決めないと。 何を見ても動揺しない、冷静でいろ、と自分に言い聞かせる。

地下へと続く階段を下りる。 空気が重い。 カカシさんとカオルさんが、石忍を殺しに先へ行った。
扉の向こうの安全を確保した、と連絡を受けたテンゾウさんに連れられ、あの実験室に入る。
覚悟はしていた。 けれど、わたしの心が叫ぶ。 声なき悲鳴はおう吐物となり口から出てしまった。

「うげっ・・・・・ ごほごほ・・・・ す、すみません。 もう・・・・大丈夫です。」

「おれ達は奥の部屋をドンドン潰していく。 後からこい、もう少し休んでていいぞ。」
「大したもんだネ。 吐いただけで済むなんて、さすが長の娘。 んじゃ、先に行ってるヨ。」
「はい。 ゼロの合図を待って、追いかけて行きます。  サキさん、巻物で救出を!」

「・・・・・ は、はい・・・    ツグミ・カナ・ユマ・チヒロ!!」


一番にわたしの目に飛び込んできたのは、首が落とされた石忍の死体ではなく、転がっている鉱石でもない。
寝台に縛りつけられた一族の娘達。 生きたまま腹を開かれていた。 死ぬと鉱物になってしまうから。
生かしておく為に、さまざまな器具が取り付けられていた。 邪魔な手足は関節から切断されている。
おそらく、周りに転がっている鉱物が手足だった部分。 今、楽にしてあげる。 みんな、頑張ったね。

わたしに名を呼ばれた一族の娘達は、巻物の中に吸い取られる。 あの器具がなかったら生きられない娘達。
巻物に吸い取った時点で死んでしまう。 でも、確かにわたしは見たのだ。 “殺して”と叫ぶ瞳を。
巻物から出した時、鉱物に変わるとわかっていても。 これであの生き地獄から救うコトが出来たと思う。