蒼〈あお〉の一族の呪い 6
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空気の膜に包まれている、壊れかけを装った小型の船。 その船で、海中の潜水艦から海上に出る。
この小型船が入り江に泊めてあっても、誰も不審に思わないだろう。 ボロに見えるから盗まれもしない。
この三日間、とにかく驚きの連続だった。 わたしの知っている今までの忍びのイメージが壊れた。
それはいい意味で、だ。 たった三人でも・・・・実質四人だが、その少数がかえって頼もしく感じる。
会話はごく自然に、むしろ場を和ませるものであった。 けれど隙のない行動は見事という他はない。
「じゃ、イルカ先生は夕霧暗殺よろしく。 終わったらコッチに合流してネ?」
「了解です。 サキさん、また後で! ・・・・中忍、海野イルカ、ターゲット暗殺に行ってきます!」
「サキさんはボク達と一緒に。 ・・・・さっきの手順で、皆さんを助け出して下さい。」
「はい、わかりました。」
「・・・・では。 蒼の一族救出作戦、開始!!」
なにが一番驚いたかと言うと、それは暗部のふたりからイルカさんに、とても情熱的な視線を感じたから。
鉱の国では考えられないが、思考も自由な忍び社会で、同性どうし将来を誓い合う事は、普通らしい。
お人好しや世話焼きだと、一見イルカさんを馬鹿にするような発言をした彼ら。 でもそれは愛情の裏返し。
最初はわからなかったが、この三日間、彼らと過ごして気付いた。 あの視線の先はイルカさんだ、と。
「あなた達のうちのどちらが、イルカさんの恋人ですか?」
「 ぶっ!! ・・・・・ ナンデ?! 意味わかんないっ!! ナニ言ってんの?! 」
「 はぁ?! イ、イルカ先生の・・・・ 恋人?! 寝言は寝て言って下さいっ!! 」
「え! ち、違うんですか?! そ、それは失礼しました、てっきり・・・・・」
「どっからそんな発想になるの? 全く・・・・ テンゾウ、飛ばすヨ!」
「ホントに。 何なんでしょうね? あ、待って下さい、カカシ先輩っ!」
「ふっ。 直球で来たか・・・・ サキさん、あんた結構、人みてるな。」
「あの・・・・ もしかしておふたりとも片思いなんですか?」
「忍びとして一流のアイツらは、超恋愛音痴なんだ。 一般人のあんたにさえ、わかるのにな?」
「それって、自覚すらないって事ですよね? あんなに乞うような目で見ているのに・・・・。」
コレだから女は・・・・という空気を漂わせて、ふたりはカオルさんをおいて、先に行ってしまった。
つまりわたしも。 今わたしはカオルさんに背負われている。 忍びの足の速さで懐かしい事を思い出した。
綱渡りの練習。 高い綱から落ちるのが、楽しくて仕方なかった。 あの落下時の風のような速度。
つい楽しくなって、話しかけてしまったけど、逃げ出したくなる様な話だったなんて。
「・・・・オマケにおふくろさんは、天然の口説き魔だしな。 前途多難だ。」
「思ったんですけど。 カオルさんって上手い事イルカさんを表現しますね、凄くわかりやすいです。」
「アイツの事は、暗部内で話題になってるんだ。 ・・・・どっちとくっつくかで賭けてる。」
「ふふふふ。 木の葉の皆さんは、楽しい方ばかりですね。」
背中越しに会話してる間に着いた。 ここは夕霧所有の建物で、表向きは鉱物研究所となっている。
わたしが前に忍び込んだ所だ。 当たり前だが、あの時より見張りの忍びが格段に増えていた。
カオルさんは、わたしをおぶったまま、大きな岩に近づいて行く。 先に行ったはずのふたりはどこに?
よく見れば、暗闇にまぎれて、カカシさんとテンゾウさんが、岩と岩の間から顔をのぞかせていた。
だいぶ先に着いたらしい。 こんな優秀な忍び達が恋愛音痴とは・・・・ 天は二物を与えない、か。
「遅い。 待ちくたびれたヨ! ・・・・まさかカオル、また悪いクセだしてないよネ?」
「そりゃ、悪かったな、ひとり美味しい役をもらって・・・・ おかげで、充実したよ。」
「くすくす。 わたしも昔を思い出して、気持ちよかったです。 ありがとうございました。」
「意味深ですけど、まあいいです。 ではもう一度打ち合わせしましょう。 サキさんは・・・・・」
わたしの役目である“救出”に使う巻物を渡された。 生き残りや死骸を発見したら巻物を広げる。
それは広げて名を呼ぶだけでいいらしい。 一族皆の名前。 わたしなら見間違えるはずがない。
すると呼ばれた者は、この巻物の中に吸い取られる。 つまり、巻物の中に保護する、という事だ。
待ってて、父上、みんな。 例え残っているのが体の一部であろうと、必ずわたしがみつけるから。
「おいおい任務中だぞ、おれはそんなに信用ないのか?」
「前科があるでショ、何度か。 依頼人の女と任務中に寝たって。」
「・・・・・まあ。 時々あるにはあるな、ボランティアも。」
「ボランティアときましたか。 あくまでも己に落ち度はないと。」
「・・・当然だ。 やましい事など何もない。」
「「・・・・・・・・・・・。」」