蒼〈あお〉の一族の呪い 5
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鉱の国は大陸から離れた所にある三島列島で、財源は鉱山から採れる鉱石。 一番近い国は土の国だ。
石隠れの里がなかったら、大戦中、冷酷な忍びが多い土の国に吸収されていたかもしれない。
近いと言っても海を隔てて。 この海もまた、自然の要塞の役割を担っていた。 地の利も味方している。
夕霧の領地は、一番大陸寄りの一島。 ひとつの島を丸々任されているのは、大名の中でも夕霧だけ。
もちろん石隠れの里があるのは、その夕霧が治める領地内だ。 国主の信頼はそれほどまでに大きい。
「ウチに来たのはまだバレてないケド、サキさんが島を出たコトは、もう夕霧に知られているネ。」
「速攻性を重視するなら、夕霧暗殺と救出部隊に別れた方がいい。 ・・・・海野中忍、夕霧を頼む。」
「はい、わかりました。 ではコレをどうぞ。 皆さんの頭に入れて下さい。」
「ではボク達は鉱物研究所へ救出に向かいましょう。 どれどれ・・・・ あ、ここ使えそうですよ?」
「・・・・・・・。」
今朝がた依頼をして、今は鉱の国に向かう船の中。 いきなり作戦会議(?)を始めた彼らに、驚かされた。
オマケにつけると言われたイルカさんが、夕霧を暗殺。 三人が救出部隊だと決まった。 そして・・・・
イルカさんが取り出した巻物に、夕霧の領地である島の見取り図と、城・研究所の地図が描かれていた。
しかも色分けされている所は、出入り口や死角、抜け道など。 これにはさすがのわたしもビックリした。
「い、いつの間にこんな詳しく・・・・ イルカさん、あなたは一体・・・・・。」
「イルカ先生は潜入先の地図を覚えて頭に入れて来るの。 退路は必ず確保する、お人好しの心配性。」
「自分が行かない任務の時は、こうやって巻物にして人に持たせる、お節介の世話焼き。」
「・・・・受付、教師、火影室の書類係で中忍。 ・・・・おれ達忍びの“おふくろさん”だ。」
「ちょっと、カオルさん!! その呼び方はヤメテ下さいって、言ってるでしょう?!」
・・・・・おふくろさん? わたし達一族は、皆、片親しかいない。 種をもらうか、つけるかだから。
そうか、お人好し、世話焼き・・・・ 母とはこんな感じなのか。 ふふ、一族の婆様もそうだった。
まあ、彼に至ってはまだ若いし男性だし。 そう思われるのは嫌だろう。 でもあの夫婦漫才のような会話。
【里のおふくろさん】・・・・イルカさんを一言で説明できる表現だ。 なんて的確な呼び名だろう。
彼らはその巻物を頭に入れたらしく、読み終えると手から火を出し燃やした。 火遁という忍術らしい。
「どんな事を目にしても、自暴自棄にならないデヨ? 依頼人が死んじゃったら任務中止にするカラ。」
「忍びの実験がどんなものか、一般人には想像もつかないでしょう。 覚悟はしていて下さい。」
「それに権力者の欲が加わったとなると、おそらく全員の救出は無理。 長の娘なら・・・・ わかるな?」
「サキさん。 あなたを生かそうとしたお父上の意志を、決して忘れないで下さい。」
「・・・・・・・・はい。 肝に銘じます。 そして皆さんに“生きる”と誓います。」
彼らに、一族の生存率の低さを知らされた。 最悪の場合、ひとりも生きていないかもしれない、と。
それだけじゃない、彼らは・・・・ わたしが皆と運命を共にしようとしている事を悟っていた。
わたしだけが生き残る結果であっても、負い目を感じ、自棄を起して死んではいけない、と言っているのだ。
“生きる”それは、他国民の為に命を懸けてくれる木の葉の忍びに、わたしが出来る唯一の約束でもある。
火の国の造船技術と、木の葉の里の忍術を組合わせて開発された船は、水中を移動する事が可能らしい。
わたしが一週間かけて移動した海上を、この潜水艦という船は、わずか三日で移動するというのだ。
半信半疑だったがふたを開けてみれば、本当に三日で着いてしまった。 障害物はないから当然か。
素晴らしい技術と、忍び達。 あらためて、火の国 木の葉隠れの里を訪ねて良かった、と思った。
「こんなに速く戻れるなんて、なんと感謝すればよいのか・・・・」
「・・・・人命がかかっている。 ・・・・速いに越した事はない。」
「カオルさんって、声が渋いからまともなコト言うと、カッコいいんですよね。」
「・・・・・ふっ。 おふくろさんは、男を口説くのが上手いな。」
「口説くって・・・・ あ!! またそう呼んだっ!! ヤメテ下さい、もう!!」
「くすくす、イルカさんって、ほんと・・・・・ あははははは!!」
「・・・・・あれ、口説いてるんですかね? だったらボク達、普段から口説かれまくってますね。」
「前後に結構失礼なコト言っても気にならない。 イルカ先生のあの“カッコいい定義”は話術だよネ。」