蒼〈あお〉の一族の呪い 9   @AB CDE FGI JKL M




部屋に転がっていた鉱物が、残らず巻物に入っていく。 この欠片も彼女達の一部という事だ。
皆を巻物に保護して、わたしはテンゾウさんに“ゼロです”と言った。 ・・・・泣くな! 泣くな!!
この娘達は、それすらも出来ない。 わたしが泣いたところで、彼女達が生き返る訳じゃない!


テンゾウさんが“気丈ですね、立派です”と言った。 ギュと巻物を抱きしめて、隣の部屋に向かう。

「!!!   ・・・・・・待たせてごめんね。  アキラ・ショウ・ムビ! ・・・・ゼロです!」
「どんどん下の階に行きますよ? さあ、サキさん!!」
「はい!」

同じようにして、腹を開かれた青年達がいた。 うん、もう大丈夫、絶対みんなを見つけるからね?
この実験はおそらく、わたし達の生殖臓器の研究だろう。 健康な男女の、活発な生殖細胞の研究。
わたし達の人工授精に成功したら、ピュアサファイヤは好きなだけ作れる。 至極真っ当な理由ね。
ある程度の大きさに育ったら、殺していまえばいい。 その時点で、青色の鉱物の出来上がりだもの。


「ココは、人の気配がしないですね・・・・ これは? イヤリングですか??」
「それは!! ・・・・わたしのはコレ。 わたし達が死ぬまで着けているモノです。」
「いわゆるドッグタグですね、イヤリングバージョンの。」
「はい。 死んだら元の形がなくなるので、不慮の事故での場合、だれの死骸か判断する為です。」

石忍の死体しかない、引き出しだらけの部屋に入った時は、一族のイヤリングを見つけた。
これはマサさんとカイさんのモノだ。 引き出しの中は、様々な鉱物が仕分けされて入っている。

仲の良い兄弟だった。 昔、綱渡りのバランスのとり方を教えてくれたのも、彼らだ・・・・。
イヤリングの持ち主の名を呼ぶと、いくつかの引き出しが開き、中の鉱物が巻物に向かって飛んくる。
大きく巻物を開き、隠されていた鉱物を受け止めた。 バラバラにされた、ふたりの一部だ。

「ゼロ! 行きましょう、テンゾウさん!」
「・・・・では。 カカシ先輩達に追いつきますよ?」
「はいっ!!」

ある者は機械に繋がれて生かされて、ある者は既に鉱物と化していた。 研究という名の殺人行為。

巨大な血液タンクの部屋は、年長者の様に、血液だけを抜き取られた者達の鉱物が転がっていた。
腹を切られた妊婦と、へその緒が繋がったままの赤ん坊は、 その状態のまま水槽に入れられていた。
首だけにされ、頭皮を剥かれていた者。 脳の研究だろう、腐らぬように防腐処理を施されていた。
心臓だけを取り出して、血液を人工的に作り出している部屋もあった。 今さら、もう何を見ても驚かない。

「カカシ先輩!! カオルさん!!  やっと追い付きましたよ。」
「お、結構早かったな? ・・・・・上出来だ、サキさん。」
「かすかだケド、この下の階に、生きた人間の気配がするヨ? 石忍じゃないヤツ。」
「!!! それは・・・・ 良かった・・・・ 間に合ったんですね?」

先に行ったふたりに追いつくと、嬉しい知らせが待っていた。 まだ生きている者がいたんだっ!!

三人がそろった事で、より迅速に行動できるはずだ。 今まで、首を落とされた石忍の死体を見て来た。
悲鳴も聞こえず、物音もせず、敵に気付かれてもいない。 カカシさんとカオルさんの実力を、肌で感じる。
火影は三人で充分だと言った。 三人は大部隊分の働きをする、と。 本当にその通りだった・・・。
三人が下の階へ降りて行く。 静かな、それはとても静かな死の足音。 これが忍びと呼ばれる所以なのね。



「?!」

「・・・・・・・生きていたんだ。 それだけで十分だろう。」
「ボク達にはそうかも知れませんが、一般の方は、やっぱりショックだと思いますよ?」
「そんなもんか?  サキさん、おれ達は下の階を押さえて来る。 ・・・・・ついてこいよ?」
「女のアンタには、ちょっとキツイかもネ・・・・ ま、もう少ししたら、おいで?」

「うぅ、ゲホッ・・・・・ サキさま・・・ですか? 生きておられたのですね、よかった・・・・。」
「アサツユ・・・・・。 もう大丈夫。 よく頑張って、耐えましたね・・・・。」


一族の中で一番美しい娘、アサツユ。 両手をベッド上部につながれ、両足には延びる鎖をつけられていた。
舌をかまぬよう、口に詰め物をされて。 体には何もつけておらず、男達の性欲のはけ口にされていた。
わたしの心配なんてしなくていい。 心身の傷はいつか時間が癒してくれる、生きていてくれてありがとう。

この部屋に転がっていた石忍の頭を拾い、全て壁に叩き付け潰した。 これはアサツユのお礼だっ!
アサツユの名を呼び巻物へ。 名を呼ばれる前、彼女はわたしの行動を見て、少し笑った様な気がした。

生きていてくれた・・・・ 人の命の他に、どんな価値があると言うのか。 さあ、三人を追いかけよう。