餌の時間 10
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事もあろうに、海野中忍を “餌” 呼ばわりしたのが、あなた方だなんて・・・・・。 ガッカリです。
そこまでお子様だとは思いませんでしたよ。 ホントもう、究極の恋愛オンチとしか言いようがない。
海野中忍も可哀想ですがそれよりも、カカシさんとテンゾウさんが、ここまで不器用だったなんて。
木の葉隠れの誉れ高き四天王の一角を担う部隊長。 三代目の両腕とも称されるお二人が・・・・。
そうですよね・・・・ 第三次忍界大戦、九尾襲来、色恋にウツツをぬかしている暇なんて・・・・・。
・・・・クスン。 そんなお二人の心の渇きを満たしてくれる人物が、すぐ側にいるのに・・・・・・。
天は二物や三物、四物は与えても、全てを与える訳ではなかった、って事ですね・・・・。
「・・・・・・・・・あのネ、アマモ? これはれっきとした任務依頼なの。」
「だからイルカは、依頼人に断りもなしに任務拒否をした、という事ですよ?」
「?! 何を言って・・・・ 冗談じゃない! あの時、拒否していたでしょう!?」
「どうして本人が来ないでアマモが来るんですか? それじゃ筋が通らないよ?」
「里の中忍でありながらさ、階級が上の人間に対して人伝えで断り? 失礼な中忍だネ。」
「・・・・・・・・・・・正論で責めて来たな。」
「・・・・・・・・痛いところを突かれたねえ。」
「そんなの・・・ そんなのは本心じゃないだろっ! それと、おれはエンカですっ!!」
「「・・・・・・・・。」」
いいですか、あなた方は里が誇る忍び、それも火影様直属の部隊を率いる部隊長なんですよ?!
なんですかその屁理屈っ! ないものねだりする子供と同じですよ! そんなのはアカデミー年少組です!
“俺は命を懸ける!” と威張って言った奴が、次の瞬間ノートに “命” という字を書くのと同じですっ!
“い・の・ち、は〜い、書けた〜”とか言って、年少クラスの女子に総好かんを喰らうんですよっ!
「オレ達、アカデミー生から年少クラスに落とされたヨ? どう思う、テンゾウ。」
「・・・・・いちいち勘にさわります。 仲間はずれにはボク、敏感ですから。」
「そういやアンタ、大蛇丸の実験体だから騒がれていたねえ、確か・・・・」
「未知の有毒物質が仕込まれてるとか何とかな。 ・・・・遠巻きにされてたな?」
「・・・・・そうなんですか? す、すみません、決して悪気があった訳では・・・・」
「気にしないでいいよ、もう過去の事だ。 ・・・・・そうだろ? テンゾウ。」
「まあ、それはそうですが。 あまりの低次元な例えにムカつきました。」
「・・・・・カカシが瞳術を解いてやれば済む事だと思うぞ?」
「そ? ま、仕方ないか。 ・・・・・・瞳術 誘導人心、解っ!!」
・・・・・・・・・ほっ! やっと心の安寧が。 自白用の瞳術を・・・・ 同胞にかけるか、普通?!
まあいい、これで少しは落ち着いて話を聞いてくれるだろう。 おれも怒りながら話さなくて良くなる。
うん、おれの脱線思考が口に出て、下手にカカシさんとテンゾウさんを煽らなくて済むと思うから。
ヘンな所で茶々を入れるけど、なんだかんだ言っても、これはカオルさんとアズサさんのおかげだよな。
「 “里の忍びの誰もが幸せになる権利はあるんじゃよ”ご存知、三代目のお言葉です。」
「・・・・・・そうだね、親父様は良くそう言うね。」
「それはどの忍びも、自分で掴みとるモノですよね、遠ざけるのではなく。」
「おれの部下の夕顔も、自分で掴みとったな。 ・・・・・・ふっ。」
「ご自分の気持ちを認めずに蓋をするのですか? それなら彼と関わってはいけません。」
「「・・・・・・・・・・。」」
「里の忍びは皆、己と向き合う。 暗部も上忍も特別上忍も。 木の葉が誇る忍び達じゃないですか。」
「「・・・・・・・・・・。」」
カカシさんもテンゾウさんも、皆が尊敬してやまない部隊の長なんですよ? その道しるべが・・・・
違う方向を指してしまっても・・・・・ これからの忍びは皆、そこを目印に歩いて行くんですよ?
たったこれだけの事なんかじゃない。 戦いでも、一つの間違った選択が思いもよらぬ事態を招くんです。
こんなのは、おれより修羅道を歩いて来た皆さんの方が、よくご存知のはず。 幸せに気付いて下さいよ。
恋焦がれた人が男で中忍でも良いじゃないですか。 このままだと海野中忍は確実に遠ざかりますよ?
以前、お二人を慰めた時の彼は、確かに任務だったかもしれない。 でも任務だからと言ってしまえば。
そういう事を続ければ続けるだけ、海野中忍はお二人から遠ざかって行くと、おれは断言出来ます。
「階級だけが忍びの価値を決める物じゃない。 ただの男になって口説いてみて下さいよ。」
「・・・・・・ただの男、ですか。 ふふふ。」
「お二人が心の底から欲しいと請えば、きっと海野中忍は応えてくれます。 これも断言します。」
「・・・・・・クスッ。 言われちゃったネ?」
「・・・・なかなかいい人材だな。 ・・・・ふっ。」
「・・・・・・カカシ、テンゾウ。 任務って、例のヤツなのかい?」
「「・・・・・・・そう、大正解!」」
「・・・・・・・・??」
さっきまでの重い空気が無くなり、突然ニッコリと、おれに笑いかけるカカシさんとテンゾウさん。
“ごぉ ―――― かぁ ―――― くっ!!”と、声高らかに宣言! 二人して親指を立てたポーズだ。
・・・・・・ごーかーく?? 合・・・・格?? 合格?! ちょっと待って下さい、何が何だか・・・・
例の任務って・・・・・ まさか。 ひょっとして。 海野中忍も・・・・ グルなんですか?!