餌の時間 3   @AC DEF GHI JKL M




この会話は・・・・ 海野中忍が任務で慰安に行った事があるかの様な・・・ まるで色忍への個人任務だ。
おれの推薦のキッカケとなったあの任務報告も、海野中忍が受理してくれた。 あんなに遅れたのに・・・
海野中忍の第一声は“お帰りなさい 医療忍者を連れて行って正解でしたね?”と共感してくれたんだ。
この人数で行ってどうしてこんなに時間がかかるのか、みたいな視線はこれっぽっちも感じられなかった。

経典を取り返すだけなのに遅過ぎる、大丈夫なのか木の葉はと、依頼人の不安を煽った事はまず間違いない。
山賊の討伐も兼ねているから遅くなってるだけで、心配ご無用です・・・・ そんな事を聖職者には言えまい。
他の忍びが報告に来る度、坊さん連中の無言のプレッシャーを受けてただろうな、と容易に想像できる。


“予定より遅くなっちゃったから、依頼人が痺れを切らして怒ってただろう?”と聞くまでもなく。
“任務依頼は依頼を受けた時点で木の葉に主導権があります、待たせとけばいいんですよ”と笑って。
“ちゃんと遅れると式も飛んできたし、なんの問題もなかったですよ?”そう言ってくれたんだ。
任務受付所は、直接依頼人が依頼に来る所。 苦情を受けるのは、窓口となってる受付の忍びなのに。

任務報告書を確認しただけで、現場の状況を考慮してくれる・・・ そんな気遣いの出来る海野中忍が。
まるで慰安任務に向いていると言われている様で悔しかった。 もちろん色忍の慰安任務も立派な仕事だ。
そんな事は誰だって分かっている。 でもここは心が渇く戦場じゃない、海野中忍が言う様に里の中だ。

しかも相手は暗部、火影様直轄部隊の隊員。 そういう切り替えを一番知っているはずの精鋭部隊なのに。
こんな事、許される問題じゃない。 でもさっきの二人の言葉は “任務” だった。 暗部の個人依頼。
里の忍びは自分に任務依頼をしてはいけないが、他の者に頼むのに正式に個人依頼をしてもいい。
それに見合った報酬を出し、貸し借りナシの状態で取引できる、だから任務と言われてしまえば・・・・。

・・・・海野中忍の様に、さりげなく相手の事を気遣う忍びなら・・・・・ 断れないだろうとも思う。
まだおれの存在は気付かれてはいないはずだから、今ここで何かが起こったら迷わず飛び出そう。
例え暗部の忍びといえど、ほんの一瞬出遅れる、その為に気配を殺したんだから。 海野中忍を逃がす!


「俺は・・・・ お二人を尊敬しています、今も。」
「んー でも・・・・ 今は尊敬はいらないのヨ? イルカが欲しい。」
「どうして分かってくれないんですかっ! 俺は・・・・」
「ボク達からの依頼だから? 前の様に火影の依頼ならいいんですか?」

「そういう問題じゃありませんっ!!」
「里じゃダメなの、分かった。 ・・・・今夜必ず迷いの森の“森の宿”においでヨ?」
「ちょ・・・ ちょっと、何を勝手に・・・・」
「ボク達は一歩譲りましたよ? 今度はイルカが・・・ 誠意を見せる番ですよね?」

「・・・・・あのネ。 これは任務なの。 分かるよネ?」
「・・・・・ふふふ、また楽しませて下さいね、イルカ?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「「じゃぁ、後で。 報酬は弾むからねー!」」

「・・・・・・・・カカシさん・・・・・ テンゾウさん・・・・・・」


!!! カカシ・・・さん?! それに・・・・ テンゾウさん、とな?! ・・・・・・マジか?!

暗部の隊員どころの騒ぎじゃない。 あの二人は・・・・ 戌部隊と猫部隊の・・・・ 暗部の部隊長だ。
・・・・・おれ、バレてたんじゃないかひょとして。 じっとしてたから無害だと思ってもらえたのかも。
いや、そんな事より・・・・ 海野中忍だ。 おれはたまたまこの場に居合わせた、これも何かの縁だ。

どうやら以前、火影様の依頼で慰安任務に就いた事があるらしい。 聞いた話の内容はそういう事だ。
その時の海野中忍が忘れられないから、今度は個人で慰安任務依頼をした。 本人が受理していないのに。
・・・・だったら行く必要はない。 海野中忍は請け負うと言ってない。 このおれが証人だから。

「海野中忍、行かなくていいよ、あんな一方的な慰安任務。」
「?! 音場・・・ 中忍・・・・ どうして・・・ 今の・・・・ を?」
「三代目に話した方が良い。 ご自分の直轄部隊が里内でこんな横暴な振る舞いを・・・・」
「・・・・・三代目はご存知です。」

「?! どういう事だ?! まさか三代目が容認しているのか?!」
「・・・・・暗殺戦術特殊部隊は、並大抵の気力じゃ生き残れない。 さしずめ俺は彼らの餌、かな。」
「冗談じゃないっ! 里の忍びが同意なしの任務依頼をするだなんて・・・・ 認めないぞ、おれはっ!」
「!! ・・・音場・・・・ 中忍・・・・・ ありが、とう・・・・・」

いつも慎重すぎると言われているおれ。 そのおれの剣幕に、海野中忍は少し驚いた様だった。
今も尊敬していると。 そんな扱いを受けていても、それでも尊敬していると海野中忍は言った。
おれだってそうだ。 暗部は木の葉の誇る精鋭部隊、皆の尊敬を集める忍びの集団だと思うから。


考えろ。 どうすれば穏便に事を運べるのか。 本人の合意があって初めて、契約が成立するんだと。
火影様が黙認していたとしても。 同じ木の葉の忍びとして、同じ中忍として。 悔しくて仕方がない。
直属の部隊だからと、多少の我儘に目をつぶる事。 それは誉れ高い部隊としてどうなんでしょうか?
彼らは四部隊に分かれていて、それぞれの長が隊を纏めている組織・・・・ ひょっとしたら・・・・

果たしておれごとき一介の中忍に、暗部の部隊長達が会って話を聞いてくれるかどうか分からないけど。
組織の長同士は互いを尊重し合うと聞いている。 同じ部隊長からの説得であれば有効かもしれない。
暗部のあとの二部隊、酉班と猿班の部隊長に事情を話し、カカシさんとテンゾウさんを諌めてもらおう。