餌の時間 7   @AB CDE GHI JKL M




もし本人が無意識のうちに、誰かで心の渇きが満たされていたなら、どうにかして気付かせてあげたい。
互いが同意の元、必要として欲しいんだ。 火影様の直轄部隊の忍び、それも手足と呼ばれるほどの。
そんな彼らが、このままだと恋しい人に憎まれてしまう。 それに海野中忍も、傷ついたままだなんて。

「そんなこと見過ごせるはずないじゃないですかっ! 他でもない、こうやって確信が持てた今は!」
「・・・・・・・・・ふっ。 そうか。 ・・・・・そうだな。」
「・・・・・・・・・森の宿に居るんだね? カカシとテンゾウは。」
「はい。 おれ。 僭越ながら・・・・仲人になってきますよ。 貴重な情報、ありがとうございました!」

そう言って帰ろうとしたおれの首の後ろを、酉部隊のアズサさんがムンズと掴んだ。 首根っことも言う。
とりあえす反射的にチャクラでコーティングしたけど。 おれ、仔犬?? この扱いはどうなんだろうか?
よっこいせ、と声が聞こえてきそうなほど持ち上げられて、180度回転。 おれの目の前には猿と酉面が。
さっき殴られなかっただけでも幸運だったんだ。 なんだろう・・・・ まさかやっぱり一発殴るとか・・・??


「ちょいと待ちな。 ・・・・・カオル、アンタ今夜サービスは中止しな。」
「・・・・・・おれは毎日サービスしている訳じゃない。 頼まれれば、だ。」
「じゃぁ、決まりだね。 アタシ達もついてってやるよ。 もし逆切れでもしたら・・・・ ってさ。」
「!! それは・・・・ どうもありがとうございます!」

「なーに、お安いご用さ。 そうだろ、カオル?」
「・・・・まあ、これはこれで面白いか。 ・・・ふっ。」
「・・・・・おれ・・・・ おれ凄く感動です!」
「「どうせヒマだから。」」

そりゃ、ちょっと掴まれた首の後ろがヒリヒリするけども・・・・ そんなのたいした事じゃないだろ?
ヒマだとなんだと言い訳しても、やっぱりそこは暗部の部隊長同士だ。 ・・・・どうなんだ、この展開!
やっぱりおれには幸運の神さまがついているとしか思えない! まさに運も実力の内、だよ。 ははは!

なんと、アズサさんとカオルさんが! 一緒に説得に来てくれるらしいんだ。 これは鬼に金棒だよ。
自分より階級が下の人間から言われてもね? 本来も、お二人に間に入ってもらうつもりだったしな。
“それは恋焦がれているのですよ?” なんて聞かされても、きっと馬鹿にされて終わり、だったかも。
下手したらアズサさんの言う様に、逆切れされるかもしれない。 そんな事態になろうものなら・・・・

その中忍は三代目からも上忍からも目をかけられていたが、皆の期待を最悪の形で裏切ってしまう。
ある朝、里外れにある迷いの森の森の宿の一室で、音場エンカ中忍の冷たい変わり果てた姿が発見される。
“上忍試験に合格させるはずじゃった、あ奴を上忍として弔ってやろう”なんて事になったらどうする?!


「・・・・ぜひご一緒に!!! お願いしますっっ!!!」

「アハハハ! 面白いねえ、音場中忍。 今また、空想の世界に入ってただろ?」
「頭をあれこれ使うのは、暗部には向いていないが、上忍には向いているぞ?」
「お黙り! アンタは考えなさ過ぎるんだよっ!」
「・・・・・お前もな。 我道を行き過ぎるぞ?」
「ぷっ! はははは! ほんと、皆さんって・・・・・ ぷっ、ふふふ!」
「「・・・・・・・・・・・。」」

いや、おれに言わせたらどっちもどっちですよ、なんて。 もちろん言えないけど! 本当に凄い人達だ。
暗部専用の演習場、しかもその訓練中にだ。 色恋沙汰の真意を確かめに来ただけの、突拍子もない中忍。
嫌な顔一つせず・・・・ というか、面で隠れてるけど! とにかく四天王と呼ばれているほどの忍びなのに。
本当に気どらない人達。 プライドと力だけが上忍並みの忍び・・・・ そんな奴らが蟻んこに思えて来た。


「・・・・・・・ところで、ウチの夕顔からなにか頼まれなかったか?」
「あ! そうです! じゃぁ、おれはその用事を済ませてから森の宿に行きますね! 失礼します!」
「ああ、もう少ししたら、アタシらも行くよ。 森の宿の前で落ち合おう。」
「・・・・・ああ。 じゃあ・・・・ な?」

そうそう! この書簡をハヤテ特別上忍に渡さなくちゃ! 仲間思いのお二人に会わせてくれたお礼に!
愛する人に手紙を届けたり、愛を気付かせてあげたり・・・・・ おれ、今まさに・・・・ 仲人って感じ?!
なんかこの調子でいったら、カカシさんとテンゾウさんと海野中忍も、上手くいきそうな気がして来た!
キューピットはこっ恥ずかしい! 恋の神さまは・・・ アモール? どっちにしてもこっ恥ずかしいぞ!

 


「・・・・・あいつ。 正規の忍びを使ったな? 破封札かなにかだろう。」
「結界を破る・・・札?! ・・・・もしかして夕顔の事かい?」
「・・・・・夕顔は盛りのついた雌ライオン並み、ついに接近禁止命令が出たからな。」
「あー 一途だからね、あの子は。 ハヤテの何もかもを搾りとるだろうさ。」

「ハヤテが三代目に泣きついたそうだ。 一回だけ助け船を出してやる、とか何とか聞こえたが・・・・」
「親父様にかい?! ・・・・それで接近禁止命令が? さしずめ、夕顔の色チャクラを弾く結界だね?」
「ああ。 結界術は中からは簡単に破れるからな。 上手く考えたな、我が部下ながらアッパレだ。」
「精気の髄まで吸い尽されるハヤテの事を思うと・・・・・ 可哀想な気もするねえ。」

「鍛えればいいだけだろ。 あと、夕顔に薬を盛る、とかな。 色々工夫すればい、忍びなら。」
「そりゃそうか。 でもまあ・・・・ 無駄に紳士だからなぁ、名家 月光一族の人間はさ・・・・。」