餌の時間 2   @BC DEF GHI JKL M




やっぱり昇進の話だった。 上忍二名の推薦があり、三代目も前から上忍に、と思っていたと・・・・。
おれは特出した相伝のワザがある訳ではないので、特別上忍ではなく、昇進するとしたら上忍だ。
まあ、いろんな術を組み合わせて作ったりするのは好きだけど。 近々試験を執り行う、という話だった。
上忍になったら、いつか上忍師になってみたいな。 おれの作ったオリジナルの術を弟子に伝えたい。

おれのどこをどう買ってくれたのか聞いてみたい気もするけど、推薦者の二名の名前は明かされない。
そんなことで里の特別上忍以上の忍びが左右されるはずはないが、不正取引があるかもしれないから。
俗にいう接待とか袖の下とかいうヤツ。 そんなので上忍になったとしても、すぐ死ぬのがオチだけど。

おれを推薦してくれた上忍達、火影様の為にも。 自分に出来る限りの事はしよう。 うん、そうだよ。
実力があるのに推薦がないから上忍になれない奴も一杯いる。 おれは目に止まったラッキーな奴なんだ。
責任の重圧とか里の忍びの名前が重いとか。 そんなこと一人でウジウジ考える前に、腹を括ろう。
それに、まだ試験を受けて受かった訳じゃない。 そういう心構えでいろと、そう言われただけだ。




・・・・・あ、海野中忍だ。 あんなとこで何してるんだろ?? 海野中忍はおれよりも上忍に相応しい。
海野イルカ、任務受付所の忍びだ。 まあ、専属という訳ではなく、おれと同じ普通の任務もこなす中忍。
愛嬌があって人見知りしないから、おれ達仲間内だけじゃなく、任務依頼に来る一般人からもウケが良い。
彼は字が綺麗で、任務依頼書も読みやすい。 だからよく、三代目と一緒に受付に座っているのかな?

その海野中忍が、書物倉庫と呼ばれている書類だらけの蔵の前で・・・・・ というか、蔵の向こう側にいる。
海野中忍は髪をひとまとめにしているから見つけやすい。 蔵の白壁から髪の先がピョコピョコしていた。
そうか、三代目に書類整理的なこともお願いされているから。 ・・・・?? あれ? 他に人がいる?!

こっち側からだと、壁の角から見え隠れする髪がブンブンしてるだけ。 あと・・・・ 数人の人の気配も。
・・・・・・・海野中忍は若いけど、三代目からも他の忍びからも信頼が厚い。 それを妬む者もいるが。
噂で判断する少数派だ。 彼と直接話せば人柄がよくわかる、裏表のない信用出来る忍びだという事が。
任務受付所に座っている忍びだからと、つい彼に任務での愚痴を言ってしまったりする奴もいるらしい。

もし海野中忍が三代目や上忍に取り入ってるとか、そんなくだらない噂を本気にしてる奴がいたら?
受付に座っている時の彼しか見た事がなかったら。 勘違いの馬鹿野郎に難癖付けられてる・・・・ とか?!
おれは海野中忍と一緒の任務に就いた事がある。 くだらない噂で彼を呼び出しているとしたら・・・・。

おれは・・・・ そうだ、火影様から上忍試験を受けてみないかと・・・・ 言ってもらったじゃないか!
こんな事、同じ仲間として見過ごせないっ! だからか、だから実力だけの奴は上忍に推薦されないんだ。
自分の目で確かめようとしない、そんな勘違い野郎が、今の里の上忍なんかになれるはずがない!
そうですよね、三代目。 戦場で敵の流した噂を信じて動く様な馬鹿は、上忍にはなれませんよね?!


てっきり海野中忍が書物倉庫の裏に呼び出されて、勘違い馬鹿に難癖付けられているものとばかり。
おれが蔵に近付くと声が聞こえてきた。 ここまで近付かないと聞こえない様に薄く結界を張っていたのか。
そう思うともの凄く腹が立って来て・・・・・ 確かに飛びだそうとしたんだ。 それを聞くまでは。

「なんでヨ。 任務でショ? あの時も任務でしてくれたんじゃなかったっけ?」
「あの時はあの時です! 里の中でなんて・・・・ 俺は聞いていませんっ!」
「じゃぁ、里の外ならいいんですね? そういうことでしょう? ね、イルカ。」
「そ・・・・・ それは・・・・・・ くっ・・・・。」

「オレ達ネ、忘れられないのヨ、あの感じ。 オレ達にでも遠慮のないイルカが・・・・ ねぇ?」
「う・・・・・ うるさいっ!! 言わないで下さいっ!」
「本当の事でしょう? こんなに威勢のいいイルカの快楽に溺れる様が・・・・ 楽しいんですよ。」
「なんで・・・・ なんで里でそんな事言うんですか・・・・・」

自分の心臓の音だけが一番大きく聞こえた。 これはなんだ?! この会話は・・・・ 確かに海野中忍だ。
そしてもう二人、どちらも男・・・・・ この結界といいほとんどしない気配といい・・・・ 間違いない。
海野中忍が脅されているのは、暗殺戦術特殊部隊の忍びだ。 火影様直属部隊、暗部だとしか思えない。
おれはただその場で気配を殺す事だけに集中した。 気を抜くとおれがここに居る事がバレてしまうから。