餌の時間 12   @AB CDE FGH IJL M




そうです、元はと言えばカオルさんが、恋の戦士だと気合いを入れた独り言を、聞き間違ったんですよ!
だいたいなんですか、アマモって。 アモールは恋の神さまなんですよ? キューピットさんなんです!
なんかもう一個別の意味があった様な気もしますが、忘れました。 仲人の気合いを入れたんですから!
なんでおれが海藻で気合いを入れなくちゃならないんですか! そんなんじゃ気合入んないでしょうがっ!

「エロスの神だね、確か。 よく細工物のモチーフに使われているよ?」
「・・・・・・ほう? 海藻とは随分違うじゃないか。」
「・・・・・・・あ、それだ・・・・ てか、アマモと言ったのはカオルさんですよ?」
「ああ、言ったね。 アタシは聞かれたから答えただけさ。」
「・・・・・・・・そうだったか?」

カオルさんって何も気にしない人かも。 アズサさんは意外に博学なんだな、アマモといい、アモールといい。
そうだ思い出したよ、アモールの別の意味。 エロスだ。 ちょい待ち、エロスの戦士はちょっとな・・・
晴れて上忍を名乗る訳だし。 やっぱり別の通り名を考えよう。 でも四天王のお墨付きをもらうなんて。
やっぱりおれはツイてるな。 運の良さはなかなかのものだ、うん。 ・・・・シャレじゃないぞ?

運がいいんだからラッキーボーイか? ボーイって年じゃないしなぁ・・・・ マン? ラッキーマンか??
そういや昔、そんなアニメがあったな、ただ運が良いだけの正義の味方なアニメ。 かぶっちゃうな、却下。
ラッキー・・・・ ラック・・・・ ラックエンカ? これもなんかラップと演歌みたいでヘンだよ。

「ハイハイ、空想世界はそこまで。 もう宣言は済んだし、オレ達の任務も完了だからネ。」
「ラップでも演歌でも好きに名乗ればいい。 けどね、これだけははっきりさせておくよ?」
「・・・・・今、声に出てました? すみません。」


「・・・・・・ふっ。 謝るなら今の内だぞ?」
「?? 謝る?? え、何を? ・・・おれの独り言を??」
「アハハハ! ホント根性あるね、アンタ。 気に入ったよ!」

「あのサ、イルカはオレ達の情人だから。」
「色々気をまわしてくれてありがとうね?」
「・・・・・・・・・・・へ?」

「カカシとテンゾウの色だ。 イルカは。」
「だからアタシ達も気付いたんだ。」
え゛〜〜〜〜っっ!!

ちょっと待ったーーーーっ! 木の葉の忍びとして恥じない行動だったとか、そんな話じゃなかった!!
睨まれるのは当然だろう、おれ!! だって・・・・・ だっておれ・・・・ 叩いちゃったよ、頬っぺた!!
海野中忍がいつもの彼らしくなくて・・・・ 悲観的だったから・・・・・ 喝を入れるつもりで・・・・。

ぎゃぁーーーっ!! 怒ってるっ!! これは怒って当然だよっ!! マズイ、何気にマズイよ、おれっ!
アズサさん、カオルさん、当然助けてくれますよね? ね? おれ、いま蛇に睨まれた蛙状態ですよ?

・・・・え? 上忍を名乗るからには、自分の行動の責任は自分で持て、ですか?? ええ、ごもっともです。
それはしごく当然の話ですよね。 でもホヤホヤですからおれ。 上忍なりたてのホヤホヤですよ?

「三代目から正式に辞令もまだなんですっ! それまではか弱い中忍ですよ、おれっ!」
「自分と相手の能力の違いを即座に計算、使えるものを使う。 ・・・・ふっ。 やるな、アマモ。」
「ああ、最小限の力でその場を切り抜ける。 機転が利くじゃないか、新米上忍。」
「いや、そんなところ絶賛されても嬉しくありませんから。 弱い者いじめは問題ですよね? ね?」


「いや? アマモはオレ達が認めた上忍だヨ? 階級差なんか抜きにして話そうよ?」
「さっきアマモ自身が言いましたよね? あくまでも、ただの男と男の話ですよ。」
「わわわ! 確かにそう言いましたけど! でもそれは恋してる者として・・・・・」

忍びの掟は目には目を。 こりゃ、一発殴られるな・・・・ いや、二人いるから。 ・・・・・二発か。
大丈夫だ、海野中忍の顔は腫れてもいなかったし、唇だって切れてなかった。 何倍返しなんだろう・・・・。
うぅ・・・・・ 腹をくくろう。 カカシさん達が言う様に、四天王が認めてくれた上忍だ、ホヤホヤだけど。

目をギュッと閉じて歯を食いしばる。 ・・・・・・・が。 待てど暮らせど拳は飛んで来なかった。
・・・・・・・・・?? 恐る恐る目を開けると、おれの目の前で拳が止まってた。 ってか、寸前だった。
アズサさんとカオルさんは卓袱台の上のお茶を飲んでいて。 ブッ飛ばされる様を傍観する気だったようだ。
ちょっと! どんだけ我が道を行く人達なんですか、アンタら! きっと顔が腫れあがりましたよ、これ!

二人の拳が顔の前から移動し、肩に回される。 ポンポンと、子供をあやす感じで。 ・・・・フェイント?
これもひょっとして新米上忍に対してのフェイントなんですか? その心構えを見届ける、みたいな??
わー カカシさんとテンゾウさんから肩を組まれてポンポンされてる! ニコニコと笑顔まで見せてくれて。
どこからどう見ても“やったなおい!”的な、イイ感じの雰囲気が広がる。 でもその理由はすぐに分かった。


「カカシさん、テンゾウさん、どうでしたか? 音場中忍は合格でしょう?」
「ウン、合格。 イイ人材だーヨ。 ネ、アマモ?」
「木の葉の上忍として誇れますよ。 ね、アマモ?」
「・・・・・・・・・・・ 頑張ります ・・・・・。」

「アマモ?? 音場中忍、通り名までつけてもらったんですか?」
「・・・・・・・ええ、その・・・・ カオルさんに。」
「あ! カオルさん、アズサさん! お二人まで??」
「・・・・余興だ。」  「ヒマだったしね。」
「・・・・・・・・・。」

海野中忍の気配がしたから、おれへの制裁は中止になったんだ・・・・・。 どうなんだ、これ・・・・・。
いや、でもやっぱり運が良いよな? 猿酉両部隊長は傍観を決め込んでたし、ブッ飛び確定だったおれ。
天の助けとばかりに海野中忍が来てくれたなんて。 やっぱりおれは運が味方した男、なんだよ!
ぅ! 肩に置いた手、少し力が入り過ぎてやしませんか? “ポンポン”が“バンバン”になってますよ?