餌の時間 6   @AB CDF GHI JKL M




お二人にさっき自分が見た事を話した。 カカシさんとテンゾウさんが、ある中忍に任務依頼をしたと。
しかもそれは本人の同意がない一方的な契約。 どうも前回、三代目が慰安任務を頼んだらしい事も。
戦場では近くの町から慰安娼婦が来てくれるが、どうしても耐えられない時は仲間内で処理する。
慰安を頼んだ方も頼まれた方も、それが誰なのかは明かさない。 お互いにしこりを残さない為に。

だからその中忍は断ったんです。 なのに、里の中じゃなければいいのかと、揚げ足を取り一方的に。
今夜、森の宿に来いと言って消えました。 おまけに報酬は弾むから楽しませろ、などと言い残して。
三代目の直轄部隊の長ともあろう者が、それがさも当たり前の様に慰安任務を言い渡していいんですか?


「三代目もどうやらご存知の様子でした。 その中忍は自分さえ我慢すればすむと・・・・・」
「ふざけんじゃないよっ! アンタ、アタシらを馬鹿にしてるのかい?!」
「・・・・・・おれは仲間に再度里内で慰安を頼むほど、飢えちゃいないぞ。」
「カオルは黙ってなっ! あんたにゃ、一回こっきりのサービスかもしれないが・・・・」

いや、あの、話を最後まで聞いて下さい、おれも信頼しているからこそ、信じられなかったんですから。
そしてそれがある事をキッカケに、なんとなくですが形になりました。 ひょっとしたら・・・・・ と。
その中忍は、仲間思いで芯の通った奴なんですよ。 けど無防備で・・・・ 不意に可愛く笑うんです。

・・・・は? おれの彼女か、ですか? ち、違いますよ! そいつはれっきとした男ですっ!
いや、確かにおれも可愛いとは思いましたが・・・・ いえ、おれはどっちかというと女の方が・・・・
・・・・って! 何言わすんですか! おれの事はどうでもいいんです! で、こう思った訳です。
そういう人の意外な一面を見たら、ドキッとしますよね? それは暗部の長と言えど、同じじゃないかと。

その中忍は三代目も信頼を置く忍びです。 直轄部隊の皆さんは、おれよりよくご存じかも知れません。
以前から彼のそういう面を知っているのなら尚の事。 とても思いやりがあって情に厚い忍びなんですよ。
心が渇ききったカカシさんとテンゾウさんにとって、なくてはならない存在になったのでは、と思いました。

「それで、ご自分の気持ちが何であるか判らずに、彼を求めているのではないか、と。」
「「・・・・・・・・。」」
「まあ、あくまでおれの推測です。 ですからお二人に、確かめてみようと思いまして。」
「・・・・・あー そうだね。 言われてみれば恋愛オンチかもしれないね・・・・ だろ?」
「ん? ・・・・・・・ああ、そうだな。 基本的にアイツらは女好きだったからな。」


やっぱりか! 女好きであればあるだけ、自分が男に惚れたかもなどと、認めたくはないと思うからな。
いや、でもおれは、女の方がいいぞ? そりゃ、海野中忍の無防備な一面を見て、可愛いと思ったけど!
でも目指せ子沢山! だから。 おれの子を出来るだけ多く産んで欲しいし、育ててもみたい。
憧れなんだよなー おれや、おれのかみさんになる女によく似た顔がさ、ウジャウジャとお出迎え。

んでさ、いつか嫁に行っちゃうわけよ、おれの子が。 花嫁の父として家族席に座るおれと、かみさん。
“お父さん今まで育ててくれてありがとう”とか。 心のこもった手紙を朗読されたりするんだよ!
もう号泣だよな、花嫁よりかみさんになるかもしれない女より、おれの方がオイオイ泣いちゃうぞ?!

「アンタとしては、どうした・・・・・  ちょいとっ! 聞いてるのかい、音場中忍っ!!」
「はっ!! す、すみませんっ! つい・・・・ えっと・・・・?」
「・・・・・・アタシの部下ならここで一発ブン殴るんだけどねえ?」
「・・・・瀕死の中忍をおれが病院まで運ぶのか? やめてくれ。」
ほんと、すみませんでしたっっ!!!

馬鹿かおれ! リラックスするにも程がある。 おれが勝手に話を聞きに来たのに何やってるんだ!
カカシさんとテンゾウさんが、恋愛オンチだということに、妙に親しみを感じちゃったから、とかでも!
へ? 随分と胆が据わっている?? ・・・一応、今度の上忍試験に推薦されてまして・・・・ ははは。
いや、そんな事より続きですね? すみません、どうも皆さんが思ったよりフレンドリーなので、つい。

「アタシらがフレンドリー? アハハ! アンタ面白いねえ?」
「・・・・さすが推薦を受けただけの男だな。 で? どうしたいんだ、お前は。」
「ええ。 おれ・・・・ あんな現場を見てもやっぱり同じなんですよ。」
「「・・・・・同じ??」」


そうだ。 海野中忍も言っていた。 今も尊敬していると。 おれだって同じだ、尊敬してるんだよ。
おれ達は皆、平和の前には何があったかを知っている。 この平和を確立する迄に流れたたくさんの血を。
その前線に立ち続けたのは他でもない、暗殺戦術特殊部隊の面々だ。 心だってかさかさに渇いただろう。
おれ達が戦場で命のやり取りをするその何倍も、暗部は動いて来た。 だから海野中忍もああ言ったんだ。

おれは、ただの夢見がちな慎重派の男なんかじゃないぞ?! お二人の反応で、事は裏付けられたんだ。
三代目だって、推してくれた上忍達だって、おれがここで見なかった事にするなんて、望んでいない。
里の忍びの誰もが幸せになる権利があるんじゃよ? 三代目はそう言っていた。 そうだよ、誰だって!