これも運命だと 思えるか 1
ABC
DEF
GHI
JKL
M
俺には、ささやかな家庭を持つという夢があった。
嫁さんもらって、子供作って、孫を抱いて、運が良ければひ孫も抱くぞ・・・的な普通の夢。
ただ、忍者の俺には、実現できそうもないけど夢ぐらいみたっていいじゃないか。
「イルカッ!!」
「イルカちゃん!」
火影直属部隊・暗殺戦術特殊部隊、通称暗部。同じ里の忍びだが、
憧れと畏怖を遥かに通り越して、神聖視し、崇拝してる奴らもいるぐらいのエリート集団。
俺も、もちろん尊敬はしている。
思わず力が入ってしまったのは、俺の夢が彼方に遠のいた原因だからだ。
「やっとクリア出来たよ!」
「Sランク&特Sランク合わせて20! ギリギリセーフ? ほめてっ!!」
俺自身、何をどうした覚えもないんだが・・・とにかく、どういう訳か
この前の任務で一緒だったこの暗部達に、えらく気に入られた。
任務帰還後、目の前にいる二人は、俺の今後の任務を専属の世話人にすると言い出し、今に至る。
もちろん火影様やご意見番、何より俺自身が猛烈に反発したのだが、
中忍の意見は軽く無視され、あれよあれよという間に里側で談合が進み、
Sランクか特Sランクを半年以内に20件成功させたら、
暗部の専属世話人制度を新設するという事になった。
専属世話人は両暗部の依頼が最優先とされるが、二人の承諾を得れば、
俺も今迄どおり、他の任務を受けていいんだそうだ。
普通なら絶対不可能な条件にもかかわらず、期間内ギリギリに成功させて暗部達は無事帰ってきた。
俺も里の忍び、ここは腹をくくるか。他の任務に就けないわけじゃないんだし。
願わくば、こんな事に命をかけてほしくはなかったが、
彼らの行動には、敬意で答えなければいけないだろう。
「お疲れ様でした、ご無事で何よりです。」俺は火影様と、彼らを出迎えた。
「やっぱりネ・・・なんかホッとする。」
「ええ。おちつきますね。」
「このっ!・・・馬鹿もんが!! 今、どこにおる?!」もの凄い形相で火影様が怒鳴り出した。
「待って下さい、火影様! 約束は守りましたよ? イルカちゃんをボクらの・・・」
「分身は駄目って言わなかったでショ? 報告書は出したし、条件クリア・・・」
「やかましいわい!! イルカ、こ奴ら影じゃ。 すぐに捜索部隊を編成するぞ、おぬしも来い!」
「え?・・・ えぇっ?! 」
火影様がなにか唱えると、二人はヒト型の紙札に変わり、フワフワと俺の肩に乗った。
二枚の札は同じ白い紙札でどちらがどちらかわからない。ピコピコしてなんともユーモラスだ。
俺は札を胸の巻物ホルダーにしまい、足早に消えた火影様を追いかけて、火影室奥の間へと急ぐ。
火影室奥の間は、おもに暗部を招集する時に使われる。はっきりいって、暗部待機室の様な場所だ。
そこではもう、暗部小隊を前に火影様が事情を説明しているところだった。
「はい、じっちゃん・・・じゃなくて、火影様。」
俺はホルダーから札を取り出して火影様に渡そうとしたが、その札が抵抗し始めた。
「オレ、イルカの巻物ホルダーにいるヨ。」
「ボクもここがいいです。」
「まあ、よい。イルカよ、そのまま立っとれ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
火影様と暗部のエリート集団が、俺の胸の巻物ホルダーを真剣に覗き込んで紙と会話してる。
あさっての方向を見ながら、考える。・・・暗部への指示は、超極秘扱いだ。
任務内容は聞かない方がいいだろう。 俺は、自分を一本の木だと思う事にした。
「・・・カ ・・・イルカ。 こりゃ!イルカッ!! ちゃんと聞いておったか?」
現実逃避してた俺は、三代目の鼻つまみ攻撃で、やっと現実に戻ってこれた。
いや、全然聞いてなかったけど・・・とは、口が裂けても言えない。
「なにかあったらイルカちゃんの巻物ホルダーを覗いて下さいね。」
「お前ら・・・イルカを頼んだヨ?」
「はい、先輩!!」 「承知した。」 「了解!」
チョット待て、もしかして、この流れだと同行とか?? 暗部小隊と?!
「え?! お、俺も行くんですか? 足手まといじゃ・・・」
「仕方なかろう、そこから出てこんのじゃから。」
やっぱり。 俺が木になりきってる時、そんな話になっていようとは・・・・・
どう考えても、俺は足手まといだ。 さらに一番考えたくない事が頭をよぎり、寒気がした。
「チャクラの消費量を最小限にするために、それにした。 当分は問題ないと思うが・・・
イルカ、もし札が消滅したら、本体がそうとう弱っとる証拠じゃ。・・・頼んだぞ。」
「はい!この命に代えても、お二人を見つけます。」
考えたくなかったことを改めて言われて、巻物ホルダーに手をやる。
俺は今ここに、命を二つ預かっている。 それも、崇拝者がいるぐらいの、とんでもなくでっかい命だ。