これも運命だと 思えるか 9
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「うみの・・・・ 残念だけどここにいる人たちは戻せないわ。」
「如月上忍の忍術でも解けないほど、記憶操作されているんですか?」
「いいえ、そういう事じゃなくて・・・」
如月さんの話す真相は、俺の予想を遥かに超えていた。
確かに村全体が監禁スペースだったが、それだけじゃなかったんだ。
村に住んでる人達は誰もがもう外では暮らせない体にされていた。
たびたび訪れていた大名の使いというのが、新鮮な臓器を届けに来ていた忍びだろう。
一人の人間の体の中に同じ臓器がいくつも入っていたのだ。
胃が8ヶある人や、腎臓が10ヶある人、俺用に連れてこられた彼らには、心臓が4ヶあった。
まさに、臓器保管のためだけに生かされていると言っていい。
死人がいない訳がわかった。生かさず殺さず、臓器の保管の役割をしている人達と、
内臓だけ抜き取られて、どこかに打ち捨てられた人達と、果たして、どちらがましなのか。
彼らは各血液型に分類され整理されていた。さながら生きているファイルだ。
村人は、神崎が無料で定期検査をしていたと感謝しながら言っていた。
あの男はただ、ファイルを管理していただけに過ぎない。
神崎の天才ともいえる延命技術とその管理のおがげで生かされていた彼らは・・・・
この後、徐々に内臓が腐っていく。 そしてその激痛にさらされながら死んで行く。
もう普通に戻る事も生き続けることも出来ない。 先に待っているのは確実な死、だけ。
「彼らをどうするか、さっき、火影様に式を飛ばした。もう少し待ちましょう、返事が来るまで・・・」
「・・・・・。」
上空を旋回しながら青いインコが飛んできた。
アスマ兄ちゃんが飛ばす俺宛の式だ。 俺がいるって知ってたのか・・・・。
そこには、猿飛隊が暗殺任務を最速成功させた事が書かれていた。
表向きは、大名 橘の乱心による一家心中となっている。 家名は断絶だそうだ。
「さすがアスマ。風遁チャクラ気性だもん、速攻型なのよね。」
「・・・ですね、あ〜あ、兄ちゃんに会いたかったな・・・」
「天下の猿飛アスマが、こんな目立つ式、何で飛ばしてくるかなぁ 任務中に・・・」
「そりゃ、敵がいようがいまいが関係ない如月さんの実力を知っているからですよ。」
「うみのはホントに・・・・・ ううん、ツッコムのも疲れてきた。」
あ。 今度は赤いインコが飛んで来た。 じっちゃんからだ!
如月さんは、最近の式はインコがはやってんの? とブツブツ言いながら読み始めた。
あの二人は俺がいる隊には、必ずインコ型の式をくれる。 式を使う必要がある時だけだが。
火影様も猿飛上忍も、俺が昔可愛がっていたインコのピーちゃんの事をまだ覚えてくれてるんだよ。
「隠れ里討伐を済ませた暗部が、火影様から勅命をうけてもう戻ってくるそうよ。」
「はぁ? 速すぎるでしょ、さっき討伐に向かったころですよね?!」
「知らないわよ、書いてあるんだもん。 影分身でも出してたんじゃないの?」
「そ、そっか・・・・ へ? 影分身?? たしか禁術ですよね、それ。」
「並みの忍びなら一日もすればチャクラ切れ、消費量凄いから。 まぁ、暗部だしね、何でもありよ。」
暗殺戦術特殊部隊。 暗部が戻ってくるという知らせは・・・・・ 暗殺、そういう事だ。
本当はこの時点で、如月さんと俺はもう任務完了なんだけど・・・・・。
俺は火影様のつらい決断を思うと、どうしてもやらせてもらいたい事が出来た。
じっちゃんや暗部だけに後味の良くない思いをさせないために。
この村で知り合ったのも、怪我をしちゃいけないよと言って聞かせたのも、何かの縁。
暗部に頼み込んで、出来れば俺があの少年、“和樹くん”に引導を渡し最後を看取ってあげたい。
何の気配も感じなかった。 後ろの声にあわてて振り返る。
「お疲れ様です。 火影様から連絡を受けています。」
「そうですか。 後は引き継ぐから二人は帰還して下さい。 任務お疲れ様。」
「如月上忍はこれまでの経過の報告書を作成して提出ネ? ヨロシク。」
「看取ってあげたい子がいます。 一人だけでいい、俺に暗殺を許可して下さい。」
「うみの! あんたいい加減にしなさい! 暗部の任務の邪魔をするってどういう事?!」
俺は暗部の前で頭を下げたまま、返事を待った。
「度重なるうみの中忍の失言、申し訳ありません! 責任はあたしが・・・」
「・・・・・イイヨ。 べつに邪魔にならないし。 むしろ、いっこでも仕事が減るんだから。」
「・・・先輩。 わかりました。 先輩がそういうなら、ボクはなにも言いません。」
「ありがとうございます!」
今回の暗部が話の分かる人達でよかった。 ヒーローの様に登場するサービスもしてくれたし。
普段も気さくな人達なんだろう。 もし里の中であったとしても、俺からはわからない。実に残念だ。
「では、あたしもわがままを言っていいですか?」
「・・・・・なぁに?」
「この薬を使って下さい。 無味無臭、水によく溶け、眠るように脳細胞の活動を止めます。
あたし用に作らせてあるので、この村の人数ぐらいなら余裕で葬れます。 ・・・即効性です。」
「ここの人達は切られてばかりいたから、最後は眠らせてあげたいんですね? ボクもそう思うよ。」
「・・・ははは。 じゃぁ、俺の出番はなし・・・・ ですね。」
「そういう事。 ・・・・この任務の隊長はあたしなんだから。」
「如月さん・・・・。 ・・・ありがとうございます。」
「「・・・・・・・・・・・・。」」
倉持村長に変化をした如月さんが、村のみんなに緊急事態を呼びかけ、全員を広場に集めた。
暗部が水遁と雷遁で雨を降らせる。 即効性だという如月上忍の自害用の・・・・ 薬入りの雨を。
誰一人“死”に気づく事なく逝ける。 突然の雨や雷に村人は驚いて、ザワザワとしていたが・・・・
やがてひとり、又、ひとりと膝をつき、5分と待たず静粛がおとずれた。 あの子もきっと・・・ あれ??
「雨はちゃんと火遁で、蒸発させておきますよ、毒は残しません。安心して下さい。」
「最後まで一緒だったんだからサ。 如月上忍、あんたが全部の報告書をかきなヨ?」
「了解です!・・・ありがとうございました。」
「・・・待って下さい! あの子が・・・ 和樹くんがいません!! 俺、探してきます!!」
「うみの、待ちなさいっ!! ・・・・・あの。 ・・・・・いいんですか?」
「・・・・先輩?」
「・・・行かせてあげて。 イイから。」
そういえば、あの子は友達の家に遊びに来ているという記憶操作がされいていたはず。
この村の村長に緊急といわれても、広場に出てくる訳がないじゃないか!
太助君の家を如月さんに確認しておけばよかった・・・・ 和樹くん・・・どこだ? どこにいる?!