これも運命だと 思えるか 10   @AB CDE FGH JKL M




子供の小さな気配を探りながら、村の中を駆けた。 駆けまわってやっと、みつけた。
この村の“巣”だった薬師の老婆 ハツの家に、あの子はいた。


「トウヤ? みんなヒロバにいくんだって。 おじさんがここにいなさいっていった。」
「和樹くん!! やっと見つけた!」
「ばばさまは?」
「ハツ婆ちゃんも広場に行ったよ。 でも私は、和樹くんを探していたんだ。 ほら・・・これ。」


忍びは皆、自害用の薬を持っている。 歯の中に詰めたり、爪の中に仕込んだり、人それぞれだ。
如月さんほどじゃないけど、俺の薬も小さな子供を殺すには、ほんの少しの量でいい。
俺は最初考えていた通りのやり方で、この子を看取る事にした。
村にあった楓の木。 あの木の樹液を煮詰めると、メープルシロップが出来る。
このためにチャクラをねり、楓の木から一粒、薬を少し混ぜてキャンディを作っておいた。

「ハツ婆ちゃんを真似て、私が作ってみたんだ。 和樹くんに味見してもらおうと思って。」
「・・・たべていい?」
「美味しかったら、村のみんなにも作ってあげたい。・・・どうかな?」
「うん。おいしーよ?」

如月上忍の特製の薬とは違い、俺のは効くまでに、もう少し時間がかかるだろう。
よかった・・・ 和樹くんはメープルの飴を気に入ってくれた様だ。 ・・・騙してごめんな?



「・・・トウヤ、泣いてるの? どこかいたい?」
「・・・いや? どこも痛くない ・・・・その犬には名前があるのかい?」
「てんちゃん。 こんど、もいっこ、作ってあげる。 太助と、ばばさまと、トウヤとみんなおそろい。」
「私にも、作ってくれるのかい? ありがとう、凄く嬉しいよ。」
「トウヤ、いっぱいないてる。いたくない、いたくない・・・・・」

和樹くんは、人形を抱えていないもう片方の手で、俺のまぶたをさすってくれた。
自分でもボロボロ泣いているのがわかる。 これはこの子の為の涙だ。
これから、もう泣く事もないこの子の分まで、俺が今泣いておく。
もうそろそろ、効いてくるはずだ・・・・・  俺は小さなその手をそっと握りしめた。

「んー トウヤ・・・ んー ねむい・・ よ・・・」

「和樹くん、和樹くん、私の目を見て! いいかい? 
 ・・・・忘れないよ、絶対。 和樹くんの事も、村の人たちの事も。
 小さなこの手を忘れないよ。 亜麻色の髪も、みどりの瞳も、膝の切り傷だって忘れない。
 私がずっと覚えているから。 どんなに時がたっても、私が覚えているから・・・」



俺は動かない体を抱きしめ、なんどもなんども頭をなでた。
ゆっくりと静かにまぶたがおりる。 口からこぼれた飴が俺の肩を伝ってコロコロと落ちていった。

「俺が・・・・ 覚えてるから・・・ な?  くっ・・・・」




「「・・・・・・・・・・。」」
「・・・・・今、オレの考えてる事わかる?」
「先輩、実はボクも同じこと考えています。」
「まずいよネ? このままじゃ、誰かにもっていかれるヨ、あの癒しチャクラ・・・。」
「世話人制度はどうでしょう。 確か・・・18才から任務に組み込まれるはずです。」

「・・・如月上忍、彼はいくつ?」
「うみのですか? はぁ、今年で18才・・・ になったと思いますが?」
「もういそのこと、ボクらの専属にしちゃいましょう。 ご飯も美味しかったし。」
「良く言ったテンゾウ! 決定だネ!!」
「はい! あ、如月さん、任務報告お願いしますね? ボクたち先に帰還しますから。」

「え? あ、はい。 ・・・・・ゴメンうみの。 あたし余計なこと教えたかもしれない・・・・」