これも運命だと 思えるか 12
@AB
CDE
FGH
IJL
M
岩隠れの小隊を含む敵は、既に壊滅させていて、黒紫陽花の群生地も確保済み。
国主から依頼された任務内容はとっくに完了していた。
火影様の要望《住民の避難 (任意)》・・・これを遂行中なんだ・・・・。
住民を避難させていた洞窟の有る山が、戦いの最中崩壊。
一人は土遁で山崩れを食い止めていて、今一人は、
木遁で洞窟の中に取り残された人達の人命救助をし続けている。
生き埋めになりかけている民を救い出すべく、動いたのは木の葉の忍び二人だけ。
花の国の軍隊は、敵軍壊滅と黒紫陽花群生地の確保を見届けると、とっとと撤収したそうだ。
しょせん、小国家とはそんなものだ。
任意だが住民の避難を要望した火影様や、その意思を汲んで行動する彼らの様な・・・・
火の意志を貫く強い団結力を持っている木の葉隠れ忍びを、俺は誇りに思う。
ようは、チャクラを練り続けているので、その場を動くことが出来ないだけらしい。
だが・・・・。 “その場を動けない”というのは、忍びにとっていい状況ではない。
話を聞いて、少しだけ落ち着いたけど。 なるほど、援護はなるべく早い方がいい。
しかし。 はぁ・・・ 敵軍全滅か。 土の部隊が七隊組み込まれていたんだぞ? それを・・・・
土の国 岩隠れの里の忍びは、残忍で凶悪な事で知られている。俺がそこにいたら、瞬殺だ。
一般兵から見れば中忍の俺は、恐ろしく強く映るだろうな。 でも。
もしそれが上忍なら? 一般兵は目にする前に殺られてしまう。 それぐらいの差があるんだ。
そして暗部戦術特殊部隊に属する忍びは・・・・ 皆が一目を置く存在。 一騎当千の忍び。
人命で賭けをするのは、賛成は出来ないけど“隊員全員が成功にかけている”とはつまり、
人並みはずれた部隊長の実力は彼らが一番良く知っている、という事にほかならない。
それを知らない俺が説教じみたこと言って・・・・ 彼・・・ アラシ君に謝まるべきだ。
「さっき、部隊長を信じる皆さんの気持ちを疑うようなこと言って・・・ すみませんでした。」
「ん? 賭けの話? あれはみんな面白がって参加し・・・・・〈ボカッ〉」
「・・・・お茶を濁すな。」
「あぁ・・・きもちいい・・・ 透明な気だわ。 癒される・・・・・」
・・・俺のチャクラって、暗部限定でクリーニング作用でもあるのかな?
あの二人もこういう反応するんだよな・・・ 何故だろう?
まあいいか。 チャクラの相性は、悪いよりいいに越したことないもんな。
「さあ、部隊長たちの所へいきましょ。 首を長くして待ってるわよ? ふふ。」
「はい!!」
「やばいなぁ・・・ おれ、一発づつ殴られる程度で済むかなぁ・・・」
「・・・・・お前。 何か余計なことを言ったのか?」
「・・・・あははは・・・・ ちょっと。」
「・・・・・・・。」
分身が報告書を提出したことで、今迄の彼らの努力が報われない恐れがある。
上層部は難癖をつけて、制度の設立を認めないかもしれない。
いや、この場合、ムチャを言っているのは暗部部隊長の彼らなんだが・・・
俺も始めは“こんなこと仕出かして何考えてるんだ!”とか思ってたけど。
チャクラクリーニングで二人の気が休まるのなら、それでいいかと思い直した。
生活面やメンタルケアをする世話人制度は、設けた火影様の思いやりが込められている。
ほとんどの忍びに無視されてきた制度だが、最近になって、やっと注目されはじめたのだ。
それも、あの二人の『暗部専属世話人制度 設立騒動』のおかげでね。
俺は少し前に腹をくくったんだ。 もし、上層部が設立を認めなくても、
俺が自分からサポートする。 それなら何の問題もないだろう?
俺のチャクラとの相性がそんなにいいなら、理由はもう、それでいいじゃないかと。
彼らのバックアップを中忍の俺が出来るなら・・・・ こんな名誉なことはない。
暗部が木の葉の里にもたらす莫大な利益と、俺のちょっとばかりの夢が先延ばしになる事。
どっちが優先かなんて、考えなくても子供にだってわかる。 帰ったら、俺から申し出よう、うん。
そこはまだ、凄まじい戦いの後を残していた。おびだだしい血と肉、死臭でむせかえっている。
黒紫陽花が咲いている一帯だけが、美しい姿をそのままに保たれていた。 一種異様な光景。
紫陽花は土の養分で色を変える。もしあそこで戦いがあったなら、来年の色は黒ではないだろう。
俺の胸の巻物ホルダーに定着していた札は、合流と同時に消滅した。
本人たちが、こちらの到着を確認して分身を消したのだ。
2人は相変わらず“オレの石清水チャクラ”とか“ボクの純正水溶液”とかいってる。
札のままでよかったかも、と少しだけ思ったのは秘密だ。 ・・・無事で本当によかった。
さすがというか・・・・ 三人が合流したら、あっという間に紫の里が、復興した。
崩れ落ちた山肌も、倒壊した家屋も、全て同じとはいかないが元通りだ。
失われた命もたくさんあるが、そこに住む人たちの大半が救われた。
人間生きてさえいれば、どうにでもなる。 後は自分たちの力で這い上がるだろう。
暗部一行は、皆にいつまでも見送られて、紫の里を後にした。
ところで、アラシ君のほっぺたが、面からはみ出るぐらい腫れてたんだけど・・・・・・。
いつ怪我をしたんだろう? ・・・・・・あ、おたふく風邪かもしれない。 もしそうなら・・・・
男が大人になってからかかると、精子が無くなるって聞いたことある。 アラシ君、大丈夫かなぁ??