これも運命だと 思えるか 4
@AB
DEF
GHI
JKL
M
「今回のうみの人物設定を教えて。それから指示を出す。いい?」
「俺は地質学者を志す青年。雷の国の商家の息子。火の国に留学中。
この山の土を調査中に賊に襲われた・・・という設定です。」
「OK。 じゃあ、こちらの状況を話すわ。 わかっている事は・・・」
この村だけが、周りと比べて裕福なこと。
倉持村長に、おかかえの医者がいること。
噂を聞きつけて、その医者を訪ねてくる人間が多いこと。
村のどこかに監禁場所があるもしれないこと。
三日に一度のペースで、ある大名の使いが来ること。
その大名の背後には 新興の忍びの隠れ里がついていること。
全く、胸糞悪くなる話だ。国境といえど、ここは火の国。
他の大名がみてみぬふりをしても、依頼が来たからにはこんな事、火影様が見逃すはずがない。
大名絡みだからか。正式な依頼として扱うまでに、ずいぶん我慢なさっただろうな。
「あたしはあの医者が気になるの。口減らしで自分から山を下りてきた老い先短い老婆。
一宿の恩義を感じ、野草の知識が人よりすこしある為、村の役に立とうとここに残る決心をした。
・・・どう? けなげでしょ?マイ設定。 イイ感じに信用されてるわよ?」
「如月さん、野草の知識もあったんですね・・・」
「無いに決まってるでしょ? 適当に草すり潰して塗ったら、医療忍術で完治させてるわよ。」
「・・・そんな如月上忍が大好きです。 俺の死んだ母ちゃんみたい・・・(ボコッ!) いてっ!!」
「馬鹿うみの!! あんたは正直すぎるっつーの!」
グーで殴られた。俺の母ちゃんも、上忍で豪快な人だった。ホントなのに・・・
・・・外に人の気配がする。 俺も如月さんも、あわてて役作りを開始した。
「婆さままだ起きているかい? 今うちに息子の友達つーのが来ててな、
夜も遅いのに二人してドタバタ・・・ おや、先客かい? 」
「うちの裏に倒れておった。知らん顔じゃが、おおかた山賊にでも襲われたんじゃろうて。
薬を塗って手当てをしたから、もうすぐ目が覚めると思うが。しかし、よう寝ておる。」
「そりゃ、運が良かったな。この村には先生も婆さまもいるし・・・と、そうだ、
その子がよ、はしゃぎまくって膝小僧を切っちまった。 何か塗る薬を分けてもらいに来たんだ。」
「神崎先生はお留守だったのかい? 婆でよければ診てやろう。 切傷はほっといちゃいかん。」
「今どこかのお偉いさんが先生の噂を聞きつけて、診てもらってるらしい。
なに、婆さまの薬があれば十分だ ・・・と思う。」
「ばい菌が入ってからじゃ、遅いでの。 すぐその子を連れておいで。」
噂の医者は“カンザキ”というらしい。俺は薄目を開けて寝ているふりを決め込んだ。
うまいなぁ・・・ 如月さんはさりげなく、子供を連れてこさせるように仕向けている。
医療忍術は手からチャクラを送らないとダメだからな。 変な草の汁じゃ、よけい化膿するかもだ。
男は子供を連れてくると言って、アタフタと出て行った。 イイ父親だな。息子もイイ子だろう。
しばらくすると、男が小さい子供をおぶって戻ってきた。 膝に切傷がある。この子が息子の友達か。
俺も始めて友達んち泊まった時は、はしゃいだもんな。 チビたちの様子が手に取るようにわかる。
「これでよし。すぐ乾いてかさぶたになる。 かさぶたはめくったらいかんよ? ええな?
さすが太助の友達じゃ。 ちゃんと我慢出来たのぉ。
偉い、偉い。 手に持っておるそれは・・・ 犬の人形か?」
「うん、木で作ったの。太助も持ってるよ? おそろい。」
「ほう、器用じゃて。じゃが子供は、夜は早く寝にゃいかんよ? おおそうじゃ、これを持ってお行き、
ばあ特製の飴ちゃんじゃ。 太助にも持って行っておやり。 二人で明日にでもお食べ。」
「ありがとよ、婆さま。その兄ちゃんも早く目覚めるとイイナ、じゃ、おやすみ。」
「なんの。こんなワシでも、皆の役に立てて嬉しいんじゃ。 いつでもおいで。 おやすみ。」
神崎先生とやらは、住人にそうとう慕われているようだ。老い先短い老婆も。
バッチリ医療忍術使ってたな。あのチャクラコントロールは素晴らしい、さすが如月さん。
婆さまに助けてもらった恩を返すという名目で俺がしばらくここにいても、誰も怪しまないだろう。
なんだか本当に眠くなってきた・・・・ ダメだ俺もう寝ます。 オヤスミナサイ火影さま・・・
「ねえ、うみの。さっきの気付いた? ・・・??? あきれた・・・ ほんとに寝てる。」
・・・火影様、どうしてこんな子を忍者にしたんですか?
もしあたしが裏切り者だったら、彼は今迄、何度も死んでいますよ。
いくらなんでも仲間を過信しすぎです。ここまで体当たりで信頼されたら、もちろん嬉しいです。
すぐに懐に入るから、潜入には向いているでしょう。 あたしは正直、怖いです・・・
彼を死なせた時の自分を想像すると、その後悔の大きさに押しつぶされてしまいそうだ。
そして、そうならないよう、自分を身代りにしてしまいそうになる。
でもそうすると、彼は一生苦しむ。 それがわかるから、やっぱり、身代りにはなれないのだ。
忍びは仲間の死も、自分の死も受け止めなければならない。
忍びとして死ぬより、ぶざまに生き残ろうとしてしまう自分を認めたくない。
上忍のあたしにすらこう思わせてしまう彼が・・・怖い。
まだ彼には話してないけど。 今回、書類上はあたしが隊長。 でもこの任務は暗部が同行している。
フォーマンセルは形だけ。 あたしかうみのが核心をつかんだら暗部にあとを引き継がなきゃならない。
感情を殺してこそ耐えられるものもある。 特に暗部の様に暗殺専門を請け負っている忍びなら。
もし暗部が彼と一緒になったら・・・・ 一番恐ろしいものを思い出させる事になりかねない。
それこそ危険分子として真っ先に殺されてしまう可能性も。 うちの暗部はそうでない、と思いたいけど・・・。