これも運命だと 思えるか 7   @AB CDE GH IJK LM




家の前で昨日の子供が待っていた。
よっぽど、お気に入りなんだろう、木彫りの犬・・・に、見えなくもない人形をかかえている。


「おや、昨日の・・・太助の友達じゃな? 膝はもう痛くないかえ?」
「・・・和樹。  これ、ばばさまにあげる。」
「おお、大事にしとったワンこじゃろ? ええのか?」
「もういっこ、作った。太助と、ばばさまも、みんなおそろい。」
「そうかそうか。 ありがとな。可愛いワンこじゃのぅ。」
「ばばさまのあめ、太助とぜんぶ食べた。」
「おお良かった、美味しかったかえ? 今、新しい飴ちゃん持って来るで、待っとるんじゃよ?」


きっと、昨日のお礼のつもりなんだろうな。 無口だけど、優しい子だ。
飴をまた貰えて、子供が喜んでいる様子は、なんともほほえましい光景だ。
バイバイと、手を振って帰るその子をつい、呼びとめてしまった。 ・・・・つい、な?
里でこれぐらいの年の子に、良く言っているから。 押付け説教、みたいなやつ。

「私はトウヤ。 君と一緒で、この婆さんにお薬を付けてもらって、元気になったんだ。
 そこで痛い思いをした先輩として忠告するよ? 君が怪我をしたら、
 君のお父さんやお母さん、太助君もそのお父さんも、皆痛い。怪我をした君よりも。
 だから、怪我はなるべくでいいから、しないように遊ぶんだよ? いいね?」

「・・・・・・・・・うん。

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、一樹君はうなずいた。
まだ何のことか、さっぱりわからない・・・っていう感じだ。 それでもいい。

〜お前が悲しいのを我慢して笑っておると、ワシのほうが悲しいんじゃ、イルカよ。わかるか?〜

たとえ刷り込みであっても、自分を思う誰かがいるこということは、何かあった時に必ず励みになる。
今は何のことかわからなくても、心のどこかに残れば、それでいいから。

「・・・・・トウヤも・・・痛いの?」
「ああ、私も婆さまも、もし君が怪我をしたら、もの凄く痛いよ。」
「・・・・・・うん。」

やっぱり、素直で優しい子だ。今度はしっかりうなずいて帰って行った。

チラリと横を見ると如月上忍の目が点になっていた。
『自分の事を棚にあげて、何言ってんだ、お前!』・・・みたいな感じだろう。
そんなつもりはないんだけど、彼女はいつも俺を心配してくれるから。
俺はこれからその<心配>を<信用>に変えるべく、頑張らなくちゃいけない。

「婆さま、可愛いお礼貰っちゃいましたね。」
「・・・・そうじゃな。 うちの一番いいところに飾るとするかのう。」

そう言うと彼女は中へ入って行った。 巣に戻ればいつも通り、上忍と中忍だ。変化したままだけど。
今朝、朝食をとったちゃぶ台の上に、それはちんまりと置かれていた。


「如月さん、ここですか? 一番いいところ??」
「ココに決まってるじゃない。 話しやすいでしょ?」
「話すんですか? ・・・コレに??」
「・・・・・まあいいわ。 あんたはご飯の支度でもしてなさい。」
「はい。 任せといて下さい!」

親が早くに死んだせいもあり、俺は炊事が得意だ。 安くて速くて旨いが俺のポリシー。
食事を持って部屋に行くと、如月さんが小声で話しかけていたんだ。 木彫りの犬に。
女性がぬいぐるみとかに、よく話しかけているのをみるけど・・・ 如月さんもそういうタイプ?
暴力的なところが多々ある如月上忍の可愛い一面を見た気がするよ。
でもこの場合は見た目が老婆なので微妙。 ・・・“キモ可愛い”という域を超えてる気がする。

「・・・うみの。予想してた通りだった。・・・非合法の臓器移植よ・・・」
「!!・・・やっぱり、神崎先生が?」
「倉持が窓口で、神崎が実行犯。 患者のお偉いさんは土の国の大商人で、火の国の大名 橘の紹介。」
「橘家と言えば、特に目立ったところもない、普通の小大名じゃないですか!」
「火影様より暗殺命令が出たわ。 火の寺にいる猿飛上忍を、橘家に向かわせたそうよ。」
「なら、1〜2日で橘家は終わりですね。」


“猿飛アスマ”といえば、木の葉で知らない者は誰もいないだろう。
火の寺守護忍十二士の代表で、三代目火影猿飛ヒルゼンの実の息子。
でも俺にとっては、小さい頃よく遊んでもらった、アスマ兄ちゃんだ。
まだ任期は終わらないみたいだけど、たまに里へ帰ってきた時は、今でも飲みに連れて行ってくれる。
ここだけの話、とてつもない酒豪。 将来、お嫁さんになる人がかわいそうかも・・・

「あたしたちも、早く監禁場所を、突き止めなくちゃ・・・」
「そうですね・・・ う〜ん。 やっぱりわからない・・・」
「・・・・うみの。 あたしに考えがある。・・・・やってくれる?」
「!! もちろんですよ! そのために火影様は俺をよこしたんですから! 使って下さい!!」
「ありがと。  ・・・よく聞いててね?」


・・・えっと・・・・ なぜにソイツが優先??  今、すごーく、集中するとこですよね?
如月さんが実は寂しがり屋さんでファンシー、ギリ、キモ可愛いかもしれないお婆ちゃんの姿でも。
作戦をその木のワンコロもどきに先に言うの??? 俺に、じゃなくて?! おかしくないですか?!
ちょっと泣きそうになったが、すぐに俺に向かって作戦を説明してくれたので、立ち直った。

・・・当たり前だが、潜入部隊はよく囮に使われる。 怪しまれない分、成功率がいいんだ。
いざという時は、他の3人が助けてくれるし。 今回も、俺を囮に使う作戦だ。
安心して囮になれる。 木の葉の仲間は、たとえ囮だろうと見捨てないからね。

・・・・あれ? そういえば如月さん、いつの間に暗部に繋ぎとってたんだろう?? やっぱり、上忍って凄い。