これも運命だと 思えるか 3
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俺の肩にとまったこの赤いインコは、俺用の火影様からの式だ。 なんだろ?
≪イルカよ、またタダ働きさせて悪いんじゃが、たのんだぞ?≫
「任せといてじっちゃん! 潜入なら得意だから!」
俺は、じっちゃんの個人的な頼みは絶対に断らない。
例え無料奉仕でもね。 そういう時ほど、裏に必ず事情がある。
九尾襲来で両親を一度に亡くした俺は、火影様に拾われたようなものだ。
一度拾っていただいた命。 少しでもじっちゃんの役に立とうと心に決めている。
火影様からの式は、今の任務の後帰還せず、そのまま潜入任務に向かってくれというものだった。
潜入先はこの山を降りてすぐの村。 この隊が一番近いらしい。 俺だけ別行動になる。
隊長に式を見せて着替えたら、今夜のうちに目的の村へもぐろう。
「可愛がられているのか、いい様に使われてるのか・・・」
「俺は里と火影様のお役にたてるなら、どう使われてもいいです。」
「・・・・・そういう事を素面で言う奴だったな、お前は。」
「?? どういう意味ですか?」
「この任務の報告書は気にせず、とっとと次に行って来いやこのヤロー、って意味だ。 ハハハ!」
隊長はバシッと俺の背中を叩いた後、送り出してくれた。
スリーマンセルの残りの一人に挨拶をして、俺は新しい任務地へ向かった。
俺の任務は、この村へ先に潜入しているらしい如月小隊とうまく合流して、
この村と、村長『クラモチ タイゾウ』の隠しているらしい秘密を暴く事だ。
如月上忍とは結構潜入任務で一緒になる。聞くまで見破れたためしがない、変化の名人だ。
ここ近年、この村の周りで同じような依頼が、何件もあったらしい。
ところが、依頼内容と金額の差があまりにありすぎて、請け負えなかったそうだ。
村の周りの他の村、小さな里、集落なんかで頻繁に起こる神隠し事件。
ここだけ神隠し事件の依頼が来ていないことから、
この村に何か原因があると考えて、まず間違いない。
【塵も積もれば山となる】やっと同じ依頼で、小隊を一か月動かせる金額が貯まったらしい。
その依頼用紙の枚数は、全部で180枚を超える。
その枚数と同じ数の人間が、この村の周りで消えているのだ。
学者風の服を少し破いて・・・と、よし、そろそろいいかな・・・
俺は、もう少し行くと村の民家が見える、ギリギリのところで倒れた。
あの民家からは、かすかに人影が確認できるだろう。ここで一晩明かすのだ。
運が良ければ夜のうちに見つけてくれるかもしれない。
俺の顔には大きめの鼻傷がある。この傷は小さい頃に出来たらしいが、よく覚えてない。
アカデミーを卒業したころには、だいぶ消えかかってたんだが、
中忍になって、潜入部隊に属してからは、結構使える事に気付いた。使いすぎて一生のこる。
俺のトレードマークだ。もう皮もブ厚くなり、少々切ったところで痛くはない。
今みたいに少し傷つけてから、倒れると、俺の十八番、行倒れ青年の完成。
何者かに追われています感ありありな設定。 オプションで記憶喪失や不治の病、なんてのもあったりする。
小細工して、唇でも咬んどこうかな・・・ う、痛い! こっちはちょっとやり過ぎた・・・。
さて、仕上げだ。 昔はよく、これでじっちゃんをビビらせたもんだ。
これは俺のオリジナル技『リアル死んだふり』・・・まぁ、今ではこの様に役立っているが、
思い返してみると、みんなに心配かけまくってたなぁ、ガキの頃は・・・
俺は仮死状態になるべく、心臓の血流をコントロールした。
おっし、どこかの民家に拾ってもらえたようだ。 おお、温かい。 ・・・・・ん?
「ちょっと、うみの! とっとと起きる! ほら!!」
「う〜ん・・・・。」
俺を拾ってくれたのは、潜入中の仲間らしい。まあいいか、どうせ合流する予定ではあったし。
みたところ、薬師の老婆を装って村に溶け込んでいるようだ。
「あんたね、毎回あたしがいると思ってないでしょうね?」
「・・・!!! 如月上忍?! うわっ、やっぱり今回も全然わからなかった!」
薬師の老婆は如月上忍だった。 変化の術は常にチャクラコントロールを維持していなければならない。
彼女の凄いところは、チャクラを細く薄くコントロールし、そのまま半年以上すごせる事だ。
そのわずかなチャクラを感知するのは、俺の様な中忍クラスには、まず不可能。
「無防備で敵の陣中にいるのと同じだから、仮死状態にはなるなと言ったでしょ?!」
「俺も、仲間がいるとわかってる時にしかやりませんよ、もちろん。」
「だから! その仲間も信用するなと、何回言ったら・・・」
「なんで? 如月上忍の隊だって知ってましたよ。 メチャクチャ信用できるじゃないですか。」
「・・・・・・。 平行線ね、いつまでたっても。 ・・・まあいいわ、今さらだし。」
『仲間をすべて信用するな』如月上忍と一緒になると、必ずこの話題が出る。
いつも俺に忠告してくれる、彼女のような上忍だから命を預けるんだ。
潜入任務に関しては、火影様から合格点をもらってる。 如月上忍も、もっと信用してくれたらいいのに。
幻術も体術も人並みだけど、人とかかわる事が好きだから、潜入部隊に志願した。
かかわった人たちの思い出の中で、それぞれ違う俺が生き続ける。 たくさんの人の記憶の中で。
例え一時でも、他人の人生にかかわれるんだよ。 それって凄い事だと思わないか?