受付忍の心得 15
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LMO
・・・・・・・。 えーっと。 その話のどういう所が感動するいい話なのか、真顔で聞いてみたい。
確かにダントツで鈍いのは海野中忍だったけど。 それじゃナニですか? 同時に気づいたと??
この三人がただの同僚なら。 鈍感レベルが目くそ鼻くそ耳くそだろっ! ってツッコむところだ。
だがおれは、そこまで命知らずじゃない。 あくまでも第三者の聞き役に徹するべし、で通す!
甘栗甘屋の芋ようかん一本で貧乏くじを引いた感は否めないが。 ギブ&テイク主義は忍びの鉄則!
ウヤムヤ事項をスッキリとさせる為に今日ここへ来たという、おれの中にも使命感がある訳で・・・・
聞くな・・・・ 聞いちゃだめだ・・・・ わかってはいても、人は時として誘惑に勝てない時もある。
あの。ちなみにどのあたりが感動ポインツなのでしょうか。 そこの所をぜひとも聞いてみたいと・・・・・
へー 暗部の自分達が、他の潜入員の心配までして変装して行動した事・・・・ ですか。 ふ〜ん。
潜入員の活動拠点付近では目立たない事、そんなの当たり前でしょうがっ! ってツッコみたいっ!!
あと。 いい話なんだ、と海野中忍がおススメする内容も・・・・・ あ、目から鱗、なんですか。
へー 同じ事をされても好きな相手だと反応が違う事を、肌で感じたと・・・・ ほー なるほど。
あんたの鈍感レベルは、もやは三葉虫の化石並みだろ、それ! ・・・・って。 うがー ツッコみたいっ!
ほんのわずかな好奇心への誘惑と、芋ようかんに見合ったプチ使命感で聞いてはみたが。 軽く後悔した。
「だからサ。 そんな危なっかしい潜入員は、もう引退させた方がいい、って話になって。 ネ?」
「そうそう。 いくら言っても、自分で自分の首を絞めてるのにも気づかないんですよ、ほんと。」
「あー まあ、その元潜入員にとっては、二人の言う事が何を置いても絶対なんで・・・・・。」
「「・・・・・んもう! イルカめっvv」」
「・・・・・・・・・・・はははは、仲直りも早いですねー ははは・・・・」
あー 引退勧告をしたのはお二人か。 ・・・・という事は、だ。 十中八九、おれの予想は当たってる。
海野中忍だけが引退したと思い込まされているだけで・・・・・ このチームはいまだ健在なんだ。
二人の恋人が海野中忍だと知られてはいけない、海野中忍が二人の恋人だと公言してはいけない。
頑なにそのスタイルを貫き通しているのは・・・・・ 里内で待機中だと思わせる為、か。
「・・・・イルカがよく言うんですよ。 近しい仲間には隠し事はしちゃいけない、って。」
「ウン、里の看板とも呼べる、任務受付所に配属になる忍びは特に信用できるから、って。」
「そんなラブラブな恋人達のとってもいい話を・・・・ 聞かせたいなー なんてな!」
「・・・・・・・・・・・・くすっ!」
「「「・・・・・えへへへvvv」」」
ふふ! 了解です、誰も入り込む余地もないほど、お三方は幸せに包まれてる、っていう事ですね?
本来なら言ってはいけない事を遠回しに知らせたのは。 おれが任務受付所に配属になったからか。
海野中忍や・・・ カカシさん、テンゾウさんに。 信用出来る忍びだと・・・ 思ってもらえたんだな。
なんか。 天下の暗部四天王の二人が。 海野中忍といると普通の野郎に見えますよ、ふふふ!
その恋人は、長年のM属性の囮生活で、有り難くない無防備な癖が身についてしまった受付忍。
海野中忍にその気がなくても、相手をその気にさせてしまうという恐ろしい特技を持っている。
そんな恋人にハラハラする・・・・ 普通の・・・ いや、普通よりちょっとヤキモチ焼きの男達。
そうか。 これは海野中忍の職場仲間や、多分お二人の所属する暗部もそうだろうな・・・・
そういう限定された者達だけが知ってればそれでいい、という事なんだ。 水面下で知っておけ、と。
・・・・・あれ? この空間に向かってくる忍びが・・・・ マジで?! どんだけ勇者なんだ?!
あれは音場中忍・・・・ じゃなかった、彼はこの前、正式に上忍として名乗れと辞令が下りたんだ。
上忍になりたてじゃ、ウザラブオーラに気づかないか。 来ない方がいいですよ、という視線を向けてみる。
一瞬、お? という顔をしたけど、おれの忠告視線を無視して音場上忍が入ってきちゃったよ・・・・
おれは今、外野とはいえ普段から任務受付所に入ってる受付忍。 お疲れ様です、と声をかけた。
順番から行くと入り口に一番近いおれが、まずお帰りなさい、と迎えるのが普通だから。 大丈夫かなぁ?
そしておれの次は当然、今日の夜間担当の受付窓口にいる海野中忍が・・・・・ あれ? なんで??
「「アマモ、お帰り〜」」
「あ。 カカシさん、テンゾウさんも、ご一緒だったんですか!」
「「仲良しこよし、無敵のチームだもんvv」」
「・・・・・ですよね? あはははは!」
海野中忍が声をかけようとしたら、カカシさんとテンゾウさんが机をピョンと飛び越えて来た。
まるで海野中忍を音場上忍から隠すように。 はい、と手を出してる。 報告書を出せという事か?
音場上忍の報告書は、カカシさんとテンゾウさんを中継して、海野中忍に手渡された。 ・・・・・??
「音場上忍、お帰りなさい。 単独Aランク任務、記入漏れはありません、お疲れ様でした。」
「・・・・はい、海野中忍・・・・ って。 やめて下さいよ、カカシさん、テンゾウさんっ!」
「「アマモに芋ようかんの差し入れ。 うりゃっ!!」」
「いででで・・・・・ いや、おいしいですけども! 痛いってっ!!」
これは一体・・・・・?? さっきまで小さくちぎって海野中忍に食べさせてた芋ようかんを・・・
同じく小さいけど丸めて指で弾いて飛ばしてる。 音場上忍の口の中へ芋ようかん版の石つぶてを・・・・
なんだろ、音場上忍、何か二人の気に障る事でもしたのかな・・・・ すごく気さくないい人なのに・・・・
なんだかんだ、ちゃんと食べてる所をみると、さては音場上忍も甘栗甘屋の芋ようかん、好きですね?
「こらっ! やめなさいっ!! もうとっくに過ぎたことでしょう?!」
「そうですよ! 今だって、カカシさんとテンゾウさんに手渡し・・・・・ いでっ!」
「「アマモのくせにっ! 生意気っ!!」」
「あの・・・・・ ひょっとして音場上忍は・・・・ ご存じで??」
「ん? あ、この三人?? あはは! メバル中忍も上忍試験だったの?」
「・・・・・・上忍試験って・・・・ はっ?!」
「「「・・・・・・・・・・・誓約、って。 そういう事情だから。」」」
「・・・・あははは、そうか! おかげでスッキリしました、音場上忍っ!!」
「・・・・・・?? なんかわかんないけど、役に立ててよかった。 じゃ! おれ撤収するから!」
「「お疲れ様でした!」」
「「アマモ、またね〜」」
上忍試験は各里内で非公式で行われる。 何があったか、誰が推薦されたか、全部が終始非公式。
それを受けて正式に上忍になれた者だけが知っている事。 受かっても内容は明かしてはならない。
上忍試験に落ちた者は、何が試験だったかさえ知らせてもらえず、不適格だと言われるだけらしい。
メバル中忍も・・・・・ “も”と言った。 つまり音場上忍は上忍試験だったんだ、三人が絡む。
上忍試験にこの三人が絡み、カカシさんとテンゾウさんのこの態度と、海野中忍の態度とくれば。
・・・・・三人は長年チームとして敵忍のあぶり出しをしてきた。 忍びを引っ掛けるのはお手のモノ。
ははは、公言しては駄目な訳だ。 里内待機じゃなく、チームは今も現役で査察任務を続行中なんだから。