受付忍の心得 3
@AC
DEF
GHI
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しっかり音を立てて歩く。 今、任務受付所に人が向かってますよー って、おおいに宣伝中。
だってそうしないとマズイいだろう? 海野中忍情人説は、ほぼ確信に近いモノがあるから。
よもや任務受付所でイタしてはいないと思うが。 デバガメしにきたのではないと示さなくちゃ。
ちゃんと来訪をお知らせしておけば、きっとそんな雰囲気であっても中断してくれるはず。
ちっ! このお邪魔虫め! というぐらいの視線は覚悟しておくべきだが、その他は御免だ。
海野中忍が慌ただしく奥の仮眠室から出て来たりしてみろ、明日どんな顔して会えばいい?
だからそんな事にならないように、こうやって音をさせて移動中なワケだ。 おれの気配丸出しで。
・・・・・・おれ、確かに気配バリバリ出して来たよな? 知った気配が近づいて来るなー な感じで。
なのに。 まぁ! なんで里の誇る暗部四天王のお二人までも、一緒に受付に座ってございますの?
思わず、Dランク任務のお得意様 マダムしじみみたいな口調になってしまったのは、許して欲しい。
それだけ今、おれが動揺しているという事を理解してもらいたい。 ただ座っているのではなく・・・・
ピッタリ隙間なく三人が並んでいる。 あの・・・・ おれが来る事なんて分かってましたよね?
あ、知った気配が近づいて来る、イヤんな事してる場合じゃないな・・・・ って、離れますよね普通。
なのにこれですか? 野郎三人があまりに近すぎる距離で座っている、どうみても不自然ですよ?
「あ、メバル! どうした? あれから任務だったのか??」
「いや、カマスさんから頼まれて。 “抜けちゃったから差し入れ持って行ってくれ”って。」
「差し入れ? そんなの気にする事ないのにな? 今度代わってもらうんだし・・・・」
「・・・・個人的な急用だから、って。 本人の気がすまないみたでしたよ?」
「そうか。 んじゃぁ、あり難く頂いておくよ、サンキューな!」
その匂いは甘栗甘屋の芋ようかんだネ? あれ甘くなくて美味しいんですよねー って両サイドの二人。
自分達への差し入れの様なこの反応に、それは海野中忍への差し入れです、とは言えないよな?
ペリペリと包装を破いたと思ったら、テンゾウさんが芋ようかんの一欠片を海野中忍の口元に。
・・・・・あの。 それは俗に言う、“はい、あ〜ん”とかいうヤツでしょうかね。 野郎同士の。
今度はカカシさんが同じように食べさせて、二人して芋ようかんつきの自分の指をぺろりと舐める。
そんなちょびっとじゃ、味しないでしょう? と言った海野中忍に、イルカの味がするからv って。
さすがにイタしてはいないけど、やはり予想通り、この三人は恋人同士で間違いないな、うん。
ピッタリくっついてる三人を見ても、果たして報告書を提出しようというツワモノがいるのかな?
この三人を見ただけで、明日にしようかなー とか独り言こいてUターンするんじゃなかろうか。
昼間のイナダ上忍じゃないけど、家で書き足して来ようかなー、とか。 退散する、に100両。
こんだけの雰囲気を醸し出してるから、海野中忍は二人の情人で間違いはない。 ・・・・だけど。
これなら、任務受付所でのやり取りから感じた事とあんまり変わらない、ちゃんと確かめないとな。
先輩諸氏が・・・ というかカマスさんに芋ようかんで買収されただけだけど、一応役目は果たさなきゃ。
この三人の誰かの口からちゃんと、おれ達恋人同士です、みたいな情報を聞いて帰らない事には。
「もうっ! ・・・あ、メバル、お前もつまんで行けよ、届け賃がてら! な?」
「いや、実はおれの分も買って良いって言われたから、しっかり購入済みです、はい。」
「あはは! ちゃっかりしてんなぁ! そりゃそうか、タダならパシラされ損だもんな!」
「はは・・・ まあ、そう言う事で。 ところで、その雰囲気はあれですね? 人もうらやむ恋・・・・」
「「スト―――プッッ!! そこまで!! その先は言っちゃ駄目っ!!」」
へ? ナニが?? 言っちゃダメって・・・・ あ。 海野中忍が口の前で人差し指のX印を作ってる。
・・・・・よし、訳がわかんないけど、とにかく笑って誤魔化そう。 そう、それが受付忍の心得!
はははは! なんか事情がありそうですね! 訪ねてはいけない事をおれ、聞いちゃいました?
すみません、まだ新人の域から抜け出せなくて、ははは! それじゃぁ、お邪魔しまし・・・・ ぐぇ!
そのまま臭い物に蓋をするが如く、知らぬ存ぜぬで帰ろうとしたおれの両肩を、ワシッと掴む手が二本。
まぎれもないそれは、カカシさんとテンゾウさんのおてて。 え・・・・ おれ・・・・ なんかした??
「まぁまぁ、メバル中忍。 もう少しゆっくりして行こうよ?」
「そうだヨ? せっかく来たんだし。 他に人もいないしネ?」
「・・・・・・・・そ、そうですか? ではお言葉に甘えまして・・・・・」
「あー メバル? お茶でも飲むか?」
「ど、どうもすみません、頂きます・・・・」
そうしておれは今、受付の机を挟んで三人と向かい合う形で、小さな来客用の椅子に腰かけている。
海野中忍が入れてくれたお茶を飲みつつ・・・・ 誰かのお見合いの席かと思うほど姿勢を正して。
泣く子も黙る暗部四天王のお二人が、これは自分達の知り合いの話なんだけど聞いてくれるかな?
そう言って手前勝手に話を始めた。 どうやらおれは、強制的に聞き役にされてしまった様だ。