受付忍の心得 4
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あのネ? これはオレ達の知り合いの話なの。 イイ? そこんトコ、よく覚えておいてネ?
ものすごーくラブラブで仲がイイのネ? そんな恋人達なのヨ、オレ達の知り合いのヤツらはサ。
そう言って口火を切ったのはカカシさん。 ・・・・・けど、これ。 十中八九、本人達の事だよな?
おれは、海野中忍が入れてくれたお茶を一口飲み、瞬時に悟った。 複雑な事情があるみたいだ。
そんな中、相変わらず目の前のお二人は、海野中忍に芋ようかんをちぎっては食べさせている。
そんでもってやっぱり、芋ようかんの欠片がついた自分の指を舐め、たまに唇の端を舐めてる。
こっちは自分の唇ではなく・・・・ 海野中忍の唇の端だ。 お二人曰く“ついてるよv”らしいが。
「その恋人達は、どうしても世間様に公表できない事情があるんです。」
「へ、へー それはまた。 なんだか可哀想ですね・・・・・。」
「ウン、可哀想でショ? でもソレもコレもある任務の為だから仕方ないのヨ。」
「もぐもぐ・・・・ へへ、おいしい!」
「・・・・・・・。 (この芋ようかん、ひょっとして海野中忍の好物?) 」
「だからオレ達、その可哀想なラブラブの恋人達の話を、こっそりと広めてあげてるんだよネ。」
「本人達が公表できないなら、代弁してあげれば問題ない、噂はいつの間にか広がりますから。」
「・・・・・あの、もしよければ。 おれも協力しましょうか??」
そうだよ。 こうやって強制的に、おれを聞き役にしたのならば、それが真の目的なのでは?
任務の為、とか言ってたし・・・・ この話を聞いてしっかり噂を広めるんだぞ? みたいな。
だからおれが来る事を知ってても、いちゃこらしてるのか。 実は自分達の話だと臭わせる為に。
「ン? メバル中忍も広めてくれるの? アハハ! ありがとネ? でもサ・・・・・・」
「厄介な事に誓約なんですよ。 その恋人達が里で仲良く暮らす為の・・・ 交換条件です。」
「え。 そんな理不尽な約束を誓わされたんですか?! でないと里で暮らせないと??」
「うん。 里外任務専門だったしね、彼。 ・・・・もぐもぐ、おいしいv」
「・・・・・・う、海野中忍、その芋ようかん好きなんですね・・・・・」
「そう、あんまり甘くなくて、俺達三人とも大好きなんですよ、ね?」
「「ねーーーーv」」
「・・・・・・・・。 (多分、お二人は違うんじゃないかな・・・・) 」
実はおれも好きなんです、とは言えない。 そんな事を言おうものなら、どんな事になるか。
お前もこの可愛い唇の端についてるカスを舐めたいの?! イルカの味つき芋ようかんを?! とか。
それこそ、もの凄い理不尽な理由をこじつけて、今後ネチネチと虐められるに決まってる。
そう、おれは自他共に認める察しのよい男。 我が身に起こる不幸シミュレーションなど容易い。
しかし・・・・ 暗部のお二人に。 しかも四天王と呼ばれるほど名を馳せている忍びに交換条件?
・・・・・そんな事出来るのは多分、いや、この里に一人だけだ。 三代目火影 しかいない。
けれどいくら任務の為とはいえ、我らが忍びの父と慕う三代目火影が・・・ 要求するだろうか??
「ンー ちゃっかりしてると言うか・・・・・」
「人の足元みるのが上手いと言うか・・・・・」
「・・・・えーっと。 お知り合いの恋人達の話・・・・ ですよね? 確か・・・・・」
「あ、そうそう! そう言ってたんだよ、知り合いの恋人達が!」
「ウン、ソウソウ! よくそうぼやいてるのを聞くんだよネー?」
「任務の為や交換条件とくれば、我らが火影様、ですもんね。 ぼやきたくもなるでしょう。」
「おー! さすがメバルッ!! ピンポイントで察してくれるなぁ!」
「・・・・・・はあ、まあ。 おれもこの度、受付所に配属になりましたからね、ははは!」
カカシさんとテンゾウさんは外側の片手しか使ってない。 海野中忍に至っては手が出ていない。
という事は、だ。 海野中忍の両手とカカシさん、テンゾウさんのもう片方の手は繋がっている。
きっと机の下で繋いで、仲よしこよしなんだろうな、っていうのがおれの見解。 いや、多分正解。
片肘をついて自分の指を舐める仕草が、妙にエロ臭いですよ、カカシさん、テンゾウさん。
要は、この話は第三者には漏らさず、おれの胸の中だけに留めておけ、そういう事だな。
ぼやきはするが、火影様の出した交換条件というのが、二人には呑むに値するものだったはずだ。
でなければ、いくら三代目でも任務を盾に取る様な事はしない・・・・ と思うんだけどけど、どうだろ?
う〜ん・・・・ 三代目に公言するなと誓わされたから、他人の話だと前置きしたのか、バレバレでも。
なるほど。 だったら第三者が噂を広めると、それはそれでマズい。 追及されるのはお三方だしな。
でも水面下で誰もが知ってる他言無用の話として、職場仲間なら知っておくべき情報だと思ったら?
この回りくどい忠告も頷ける。 つまり先手を打った訳だ、誰かが真実を知ろうと聞きに来る前に。
日頃の三人を観察していたら、否が応でもモヤモヤとする。 本当の所はどうなんだろう? ってな。
・・・・・ん? “彼は里外任務に就いていていた”と海野中忍は言った。 ひょっとして“彼”は自分の事?