受付忍の心得 5   @AB CEF GHI JKL MNO




俺はチビでヒョロヒョロの下忍。 けど根性は人一倍あると、いつも父ちゃんと母ちゃんが褒めてくれてた。
全部じっちゃんが言ってたんじゃないか! 背だって伸びる、肉だってつく、修行すればそのうちにな、って。
潜入部隊も。 “根気のいる仕事じゃよ” って言ってたから配属を希望したのに。 なんで駄目なんだよっ!

じっちゃんの分からず屋っ! ちょっと過保護すぎっ! そりゃ・・・・ 確かにチビでヒョロヒョロだけど。
俺だって好きでチビのヒョロヒョロに育った訳じゃないやいっ! ・・・・こうなったら証明してやる、みてろ?

ずっと前に、じっちゃんが心配そうな顔してたことがあった。 あんまり顔に出さないから珍しいと思って。
どうしたの? って聞いてみたんだ。 そうしたらじっちゃんは俺にこう言った。 少し淋しそうに。
“ほほほ、ワシとした事が顔にでとったか? ・・・・そうじゃな、あ奴らに任せておけば大丈夫じゃの”って。

じっちゃんの言う“あ奴ら”というのは暗部の事。 二年前の九尾襲来で大勢の里の大人が犠牲になった。
俺の両親も死んだ。 火影直属部隊のほとんどが、九尾封印の結界を守り四代目夫妻に殉じた。
三代目は火影再任に当たり、生き残った数人の暗部を中心にして、暗殺戦術特殊部隊を再編成した。

あの時は何の事かわからずに、じっちゃんが笑ってくれたから気にもしなかったけど。 でも今は。
その意味が分かるよ、俺。 暗部は暗殺専門に訓練された忍び、里の暗い部分をその肩に背負ってる。
多分、今の隊員のほとんどが俺と同じ位か、それよりもちょっと上か。 とにかく同世代が頑張ってる。
皆、もの凄く強いけど年齢が若い。 だから心配してたんだ、背負うものが重荷になってるのでは、と。

俺が人に自慢できる事と言ったら根性。 俺だって同世代の忍びやじっちゃんの役に立ちたいよ!
だったら自分が出来る事をするんだ! 潜入部隊で潜入員になる! って、言ったのに反対された。
・・・・・・・・だから。 これはケンカ売ってるわけじゃないぞ? 俺の根性の証明なんだからな?




「「・・・・・・・う〜ん。」」
「ぅっ、うっ、えっぐっ! ふぇ〜ん・・・・・」
「ねえ、ちょっと、君。 泣いてちゃわからないよ・・・ ここで何してるのかな?」
「火影屋敷の裏口だと知ってて、まだここにいるなら。 間者だと判断するケド?」

もういいかな? 顔をあげてみたら・・・・・ 犬のお面と猫のお面。 戌部隊と猫部隊の部隊長だ。
いつもじっちゃんにせがんで聞かせてもらってるから、お面の種類と意味を知ってるんだ、俺。
一つしかない種類は、めちゃ強い忍び。 部隊長と同じ面がそのまま班の名になってる事も知ってる。

だからそこ、めちゃ強い忍びを騙せたら、潜入部隊の一員として申し分ない、そう証明できるだろ?
じっちゃんの直轄部隊の忍び。 一人じゃだめだ、2〜3人騙しちゃるっ! そうしたら引っかかった。
一種面の人達を出来れば2〜3人騙そうと思ってたけど、 ラッキーだ、二人もいっぺんに釣れたぞ?!

う〜ん、今のうちに心の中で謝っておこう。 里の為に頑張ってる忍びを騙してごめんなさい・・・・。
・・・・・下忍に騙された、なんて部隊長の恥だもんな? だから人に言わないと思うんだ、多分。
逆切れして、ボコられてもほどほど。 まあ、これぐらいで同胞殺しはしない・・・・ よな?



「うぅ・・・・ 俺、仕事に来たんだけど・・・・ 火影様がいらないって。 ひっく・・・・」
「「いらない?  仕事って・・・・・ ちなみにどんなお仕事?」」
「俺、虐めてもらうのが仕事なの。 親方がそうすればお小遣いをくれるの・・・・ ぅう・・」
「「・・・・・・・・・・。」」
「このまま帰ったら、俺・・・・・ 親方にぶたれる・・・ ぅうぅううう・・・・・」

どうよ、これ。 俺は自分のいかにも弱っちそうな風貌を生かして、M系の売り者になってみた。
火影屋敷の裏口でうずくまって、メソメソ泣いてみたら、なんと大物が二人もかかっちまったよ。
無理やり聞き出す事はせず、脅し文句も本気で言ってる訳じゃないのが分かる。 立派な人達だなぁ。

「そうなんだ。 事情はだいたい分かったヨ。 オレ達が話をつけてあげる。」
「本当?! もう一回、行ってくれるの? くすん・・・・ お仕事もらえる?」
「ええ、一緒に三代目の所へ行きましょう。 そして、今の話をするんです。」
「うんっ! お兄さん達、ありがとうっ!!」
「「・・・・・くすっ!」」

わー 買ってもらうつもりだったのに。 売買の話が成立したら、火影屋敷に逃げ込もうかと・・・・・
どうやらこの二人は、不幸な少年の今の生活を変えてくれようとしているらしい・・・・・。
暗部の部隊長って、どんな非情な人達だろうと思ってたけど。 尊敬に値する人達だよ、凄いや。

よし! 実は芝居でしたと三代目の前で暴露して、是が非でも認めさせる! 俺の潜入部隊への配属を!
・・・・・・・それに、三代目の前なら、ある程度ボコり方を加減してくれるかもしれないしね!