受付忍の心得 2
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はぁ・・・ あの三人にわざわざ自分から関わるなんて馬鹿のする事だ、と誰でも気付くだろう?
だからこそ諸先輩方は自分で確かめる事はせず、新人、お前が聞いてくれ、ってな視線を寄越す。
けど、任務受付所に配属になる忍びというのは、ある程度察しが良くなければ勤まらない。
自分で言うのも変だが。 おれもよく、気が利く、気が回る、と言われる。 だから配属になった。
任務受付所での三原則、笑ってごまかせ・知らぬ存ぜぬ・臭い物には蓋。 要は、笑顔でスルー。
これが出来なきゃ、任務受付所で座ってられない。 だからあれも、臭い物には蓋、なんだけど。
諸先輩方は、お前なら笑ってごまかせるから聞いてくれ! ってな感じなんだな、これが。
・・・・まあ、どっちも任務受付所に配属になった忍びの心得、ではあるんだけどなぁ・・・・。
あ・・・・ あと一個 “知らぬ存ぜぬ” が残ってるけど、それって聞いた後の対処の仕方か?
なんか。 どうやってもおれしか聞けない、って雰囲気が充満してきてる気がするんだけど??
あれか・・・・・ さっき海野中忍が火影室に呼ばれたからか。 そう、もう彼はここに居ないんだ。
海野中忍はどういう訳か、三代目によく呼ばれる。 一度呼ばれたら半日は戻って来ないんだ。
そんな海野中忍を、三代目に取り入ってる、とか言う奴もいたりする。 全くのデマだけどな。
だって呼ばれてるのは、火影室の掃除だとか整理整頓だとかの雑用だし。 おれもこの目で見たし。
海野中忍に確認したい事があって・・・・ って、これは業務上でな? そんで火影室へ行った事がある。
その時に海野中忍は割烹着を着て・・・・ って、たぶんエプロン代わりだと思うけど、それを着てた。
んで、頭には三角巾をかぶっててマスクもしてて。 ハタキをポケットに入れ、掃き掃除をしてた。
三代目はどうやらご自分で掃除はしないらしい・・・・ って事が良く分かるちらかり様だったな。
「というワケでメバルちゃん。 コレ、今夜、海野中忍に差し入れてくれる?」
「は? ナニがどんな訳でおれが?? 夜間当番を自分から辞退したのは・・・・」
「だからさ。 ほら、オレは今夜出れない事にしたよな? なのにそのオレが行けないだろ。」
「・・・・まあ、それはそうなんですが。 でも今度会った時にでもご自分で・・・・・」
「ガッデムッ!! オレ達忍びに今度、という確定した未来はないっ!」
「や、それもおっしゃる通りですが・・・・ これはそれには当たらないと・・・・」
「メバルッ!! お前は言えるのか?! 明日同じ朝日を必ず拝む事ができるのかとっ!」
「いや、言えませんが。 ・・・・・・ものすごく巧妙に、話をそらしてますね・・・・」
うっ! 今迄遠回しだった視線が、行け、お前なら聞ける、笑顔でスルーしてこいっ! に変化。
・・・・・そう、おれは任務受付所に配属になった、ある程度察しがいいと自他共に認める男。
先輩諸氏の意気込みも、おれに対する尋常じゃない期待も、全て感じ取っているんだ、今。
あんな三人に首を突っ込んだら宜しくないのに決まっている、と長年の勘で分かってはいても。
お前しかいない、チャンスは一度きりなんだ、ケリをつけさせてくれ! という先輩諸氏の期待。
オレはもう上がっちゃってて、イルカが戻って来ないんだから仕方ないだろ?! な、担当者。
机に置いときゃいいじゃないですか、戻ってくるんだし・・・・ とは突っ込めない、完璧な流れ。
「今ここに置いていったら、そんな暇あったんだ? もしかして唯のサボリ? って思われる。」
「・・・・ですね。 それはよくわかります、急用が出来た事にしましたもんね?」
「うんうん、お前なら気付いてくれてると思ったよ! はははは!」
「・・・・・・あー。 一応聞きますが。 なんでおれ??」
「そりゃー お前・・・・・ メバル中忍は最近配属になった新人だから?」
「・・・・やっぱり。 そんな気はしてました、ずっと。 ははは・・・・ はぁ。」
今、おれの他にこの人を抜かして受付忍が4人いる。 なのにおれ。 理由は新人だから、だ。
帰り際に会ったんです、おれ、差し入れを頼まれちゃって・・・・ とかを言って欲しいらしい。
相当急いでたみたいで“丁度いい、お前買って持って行ってくれないか?”とかなんとかをな?
そんで、今夜ここにいるだろう三人の関係を聞いて来いと。 そういう事ですね? ふぅ・・・・
「うひゃー やっぱ、察しが良くて助かるなあ! ・・・・・ってコトで、宜しく!」
「・・・・・これ今、買って来たんですね?」
「だってお前、明日の昼には鰻重の特が来るんだぞ? 前倒しのお返しだ。」
「・・・・・甘栗甘屋の芋ようかん。 あんまり甘くなくて、実はおれも好物です。」
「ふっ、ふっ、ふっ! そう言うと思って、お前の分も買ってあるぞ?」
「参りました、買収されますよ。 ・・・・察しのいいのはどっちですか、全く!」
それは受付所に配属になる忍びの、第一条件だからな! と、周りから合唱が起こった。
仕方ない、知らぬ存ぜぬで訪ねてみるか。 いざとなったら笑って誤魔化して蓋をすればいい。
何事にも犠牲はつき物だし。 一度はっきりさせておけば、皆もおれもスッキリするんだから。
そんなこんなで、おれは今夜、ここに座る海野中忍に、芋ようかんを届けるハメになった。
暗部の二人から、邪魔しやがってこの野郎! みたいな視線を浴びる、空気読め男になってな。
すっとぼけて。 もしかして三人はお付き合いなどされているのでしょうか? なんて聞く事に。