受付忍の心得 16
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・・・・・はっ! 待てよ? ちょっと待て。 これは果たして偶然なのか? 芋ようかんも偶然か!?
おれは新たに任務受付所へ配属になった受付忍だよな。 海野中忍情人説も、なんとなく確証があった。
先輩諸氏も、お前新人だから聞けよ、みたいなオーラを飛ばしまくってたよな、うん、確かにそうだ。
だからカマスさんもおれに、ここぞとばかり差し入れを持ってけって・・・・・・・ いや。 違うな。
近しい者には知らせるべきだと言われて・・・・ 単純に、お三方に信用されてる、って喜んだけど。
誰かが真相を聞きに来る前に、この三人が先手を打って知らせる者を選別したのかな、そう思ったけど。
そうじゃなくて、全部仕組まれていた? おれが新人だから、という理由は本当にそのままの理由。
海野中忍の職場仲間として新たに加わったおれ。 水面下で知っておくべき情報を与えられたんだ。
任務受付所に配属になった者は全員、もれなくこのお三方のラブ洗礼を浴びなきゃならなかったんだよ。
先輩諸氏は多分・・・・・ いや、絶対。 皆このラブ洗礼を受けたんだ、個別に。 で、事情を知った。
真実を知っていても・・・・ 自分達の口からは・・・・ 教える事が出来なかっただけなんだ。
下手に刺激して暗部の二人の反感を買う事は極力避けろ。 海野中忍の無防備な行動には要注意だ。
暗部の戌猫両部隊長が受付の夜間警備を申し出た時は、速やかに海野中忍以外の担当者は辞退しろ。
後にはお礼の鰻重の特上が待ってるぞ。 全部が受付所の暗黙のルール・・・・・ という事だ。
任務受付所の諸先輩方の視線。 お前なら聞き出せる、新人だから。 これもそのままだったのか。
カマスさんが芋ようかんを差し入れてくれ、とおれをここに来させたのは。 先輩諸氏の企みだ。
公言できないから。 三代目との誓約があるから。 査察チームのを邪魔する訳にいかないから。
自分の目と耳で真実を確かめてこい、お前ならおれ達と同じく三人の事情を把握できるはずだろ? と。
お三方はおれを見て喜んだろうな、まだ事情を知らない新人がやってきた、今がチャンス! ってな。
もしかしたら、近いうちに何らかの形でおれに接触して、事情を話そうと思っていたのかもしれない。
でもその必要はなかった訳だ。 こうやって受付所の先輩が、ちゃんと無知な新人を送り出してくたから。
音場上忍のAランク任務からの帰還がある事。 これは任務受付所の忍びなら、大方の予想がつく。
先輩諸氏は最近の状況から、そろそろイナダ上忍を二人が牽制に来ることも知ってただろうな・・・・。
もしその時、海野中忍が夜間の受付窓口担当なら、二人が必ずボランテア警護を申し出る事も知ってた。
あー だったら。 わざわざ甘栗甘屋の芋ようかんを買ってきてくれたカマスさんは、知ってたんだな。
「あの、海野中忍。 甘栗甘屋の芋ようかん、おれの好物だ、って知ってました?」
「? あはは、自己紹介の時に言ってたじゃないか。 甘党じゃないけどあれは好きです、って。」
「・・・・・・・・ああそうか、それで・・・・。」
「オレ達も甘いの苦手だケド、イルカが最近よく買ってくるから食ってみたらイケた!」
「確かに、あんまり甘くなくておいしいです。 メバル中忍のおススメだったんだね?」
やっぱり。 海野中忍の好物じゃなくて・・・ いや、おいしいって言ってくれたけど。 おれの好物だ。
自分が自己紹介後、ちょこっと口走った事を覚えててくれたんだな、カマスさん。 海野中忍も。
・・・・・ですよね。 任務受付所の受付忍を勧められる忍びの第一条件は“察しがいいヤツ”だ。
新人にはこうやって、この複雑な事情を抱えたウザラブな三人の事を・・・・ 教えているんですね?
「ところでここだけの話、音場上忍は海野中忍に何したんです??」
「あははは! さすがメバルだなぁ! いや、あれは単なるヤキモチだから。」
「ヤキモチ・・・・・ やっぱ、おれ。 カカシさんとテンゾウさんに同情します。」
「「メバル中忍っ!! でしょう? そう思うでしょう?!」」
「あははは! ええ。 じゃぁ、おれはこれで! 事情はバッチリ把握しましたから。」
「げっ! ちょっと待てメバルッ! この状況で帰るなよ!」
「「だいたいイルカはいつも・・・・・・・」」
「メバルッ! 待てって、おいっ!」
「「メバル中忍じゃなくて、今はイルカの話っ!」」
海野中忍、悪いですけど。 おれがとばっちり受けないで速やかに帰れる為の餌になって下さい。
だって忍びを引っ掛けるめちゃめちゃ優秀なチームの囮。 注意を引くのは得意中の得意ですよね?
あの二人のお小言はうるさそうですが・・・・ きっとまた“チューしちゃる!”で仲直りですよ!
おれに課せられた使命は全うした。 ズバリ、ウザラブ三人組の事情を把握せよ! だった訳だから。
くすくす! 公言出来ないお三方、思う存分ラブって下さいね? ウザいのはこの際我慢します。
なんてったって、功労者には鰻重の特上が待っている。 おれの場合は芋ようかん10本とかかも!
ん? 勝手に交代は任務規則違反? いいんだよ、そんなもん。 だいたい規則なんてのは破る為にある!
そんな頭の固い奴は任務受付所の受付忍には向いてない。 何事も臨機応変、察しがいいのが一番。
おれ達受付忍の三原則は、笑ってごまかせ・知らぬ存ぜぬ・臭い物には蓋。 笑顔でスルーが心得だ。
今からここがピンクムードになろうが、高度な結界が張られようが。 もうおれの知ったこっちゃねぇ!
「あ、おはようございます、カマスさん。 昨日は芋ようかんごちそうさまでした!」
「おう! おはようさん! ・・・・・なかなかに・・・・・ ウザかったろ?」
「ええ、ほどほどに。 それより、全ての謎が解けて、スッキリです、おれ。」
「あー もし今度新人が入ったら。 その時はメバル、お前が誘導してやれよ?」
「あははは! 了解です! だっておれは、痒い所に手が届く男、だそうですから!」
「おー 察しがいい事が、受付忍の第一条件! さすがだな、メバル!」
「なら当然、今日の昼に来る鰻重、半分おれのですよね?」
「うっ! ちゃっかりしてるなぁ! でも多分・・・・ 二個届くと思うぞ?」
「・・・・ぁ。 そうですよね、海野中忍。 任務受付所の看板ですもん!」
「ははは、そういう事! あとこれは・・・・ 受付忍の裏心得な? “長い物には喜んで巻かれろ”」
「・・・・・・くすっ! それも了解ですっ! あははは!」
密かに人気があったアマモ君に、もう一回出てもらいましたv やっぱりまだ根に持ってるらしい。(笑) 聖