先生に教わろう! 1
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・・・・・・結構、というか。 かなり興味のある話だった。 今さっき、通りすがりの二人の忍びの話。
二人組の忍びは居酒屋を出て帰宅途中なんだろう、程よく軽い足取りでケラケラと楽しそうに笑いながら。
その話の内容は、楽しそうに笑いながら出来るもんじゃない。 なのに実に楽しそうにこう言った。
「“イルカ先生のキスがあればいいの!”・・・・だもんな〜 まいったよ、ふぅ。」
「“もう! 触らないで!!”・・・・とか拒絶しやがるんだよ、どうなんだ?」
「イルカ先生のキスは嫌じゃないんだと。 ははは!」
「俺のキスよりイルカ先生のキスか! あははは!」
・・・・・・ちょっとそこのお二人さん、その話もう少し詳しく聞かせて下さいな、と後を追いたかったけど。
ボクはこれから任務に行く所。 手配中の忍びが里を出た先の町に居る、って聞いて狩りに行くんだ。
だから寄り道は出来ない。 迅速かつ確実に。 任務後ならいざ知らず、これからって時には余計にね。
チラリと耳に入って来た話、そのチラリの瞬間に覚えた名前は、イルカ先生。 キスが上手いらしい。
ボクはキス否定派。 そんな勇気は持ち合わせていないんだ、急所を相手に差し出すなんて言語道断。
これはなにもボクだけの意見じゃない。 カカシ先輩を始め、暗部の隊員のほとんどはそうだと思うよ。
なら、咥えてもらうのも抜いてもらうのもヤバいんじゃないのか、と思うだろうけど、違うんだよ微妙に。
キスは近すぎて相手との距離を保てないけど、その他ならこの目で追える。 だから安心だろう?
前に狩ったクノイチの歯は全部が差し歯で、一本一本効果が違う呪印が仕込まれてた、実に恐ろしい。
だからって訳じゃないけど、直接体内に侵入できてしまう経路は、出来るなら保護しておきたい。
基本的にやっぱり忍びは警戒心の方が先にくるんだ。 口の中にはあらゆるモノが仕込めるからね。
でも興味がない訳じゃない。 信用出来る好みの玄人さんに、なかなかお会いできないだけで。
食べ物を食べる、食べなきゃ死んでしまう。 口で何かをするのは、単純に生きる事を実感できるんだ。
口の中でかみ砕いたり、味を確かめたり、呑み込んだり。 自分の生の糧となる行為を行う箇所だ。
カムバニズムが究極の愛の形だ、とか主張する危ないヤツもいたりするぐらい、性的な象徴でもある。
「キスか・・・・・・。 同胞が勧めるぐらいだから・・・・・ 安全なんだろうな・・・・・」
実はあれから、任務を終わらせてすぐあの忍び達を探してみたけど、もう帰った後だったんだよね。
居酒屋から出てきた所だったし、いないだろうとは思ってたけどね、一応。 どうしてこだわるのか。
それはあの内容だから。 どう考えても普通なら怒る所だよ、自分が拒絶されたのに笑えるか??
ほろ酔いだからじゃない、実に楽しそうに笑いながら話してたんだよ。 二人ともが自慢するみたいに。
「お疲れ、テンゾウ。 ナニ、神妙な顔しちゃて。 そんなに手強い賞金首だった?」
「あ、カカシ先輩、お疲れ様です。 あ、いや。 そっちは問題なかったんですが・・・・」
「・・・・・・・? もしかしてナンか謎の術くらって来たとか言う??」
「討伐任務は完了、報告済みです。 ・・・・・そうだ、カカシ先輩。 ヘンな事聞いて良いですか?」
何を隠そう、カカシ先輩は色事の師匠だ。 暗部の部隊長から補佐へそして隊員へと、伝授されていくもの。
教えだけではなく、色事に関しても引き継いでいくんだ。 忍びにとって信用出来る店は貴重だからね。
だからカカシ先輩ならそういう噂を聞いた事があるかも。 先輩、キスの上手なイルカ先生って知ってます?
「・・・・・?? 知らないケド・・・・ キスが上手なの??」
「う〜ん、残念。 カカシ先輩ならそういう噂を小耳にはさんだ事があるかな、と思って。」
「ナニ、お前。 ひょっとしてキスを試してみよう・・・・・ とか考案中??」
「・・・・・だって興味があるんですよ。 そのイルカ先生は嫌われてないんです。」
「???」
いや、ボクが討伐任務に行く途中で、ほろ酔いの木の葉の忍びが二人、笑いながら話してたんですよ。
チラッと聞いただけなんですけど、その二人の恋人か奥さんか、それは不明なんですが・・・・
イルカ先生のキスの方がいいとか、触らないでと拒絶されたとか・・・ そんな事ってあり得ます??
しかも笑って話してるんですよ、二人とも。 まいったなぁ〜 っていう感じで楽しそうに。
どう考えても“キスは嫌だからもうしないで! イルカ先生のキスがあればいいの!”ですよね?
お互いがさも自慢げに言うんですよ。 イルカ先生と比べられちゃったら仕方ないなぁ、みたいに。
そんな発言の原因ともなったそのイルカ先生とやらを“ボコってやる!”とか言うなら分かりますが。
「・・・・・・・・へー。」
「・・・・あ、その顔。 先輩も興味がわきましたね?」
「・・・・先生って・・・・ キスの先生なのかな??」
「ナルホド! そこまで頭が回りませんでした、ボク。」
キスの先生か。 それならあの反応も頷ける。 特訓してもらってて試した成果があの会話。
まだまだイルカ先生のレベルじゃないんだな、みたいな感じですかね・・・・・ どうなんでしょう??