先生に教わろう! 7
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「え、そうなんですか?? ・・・・・くす! みつかっちゃいましたね、山城上忍?」
「傷口を消毒したからってなんですか! 刺し傷なら深いじゃないですか! もうっ!!」
「わわわ・・・・ ちょ・・・・ ちょっと・・・・・」
一人は笑いながら任務報告書に目を通してる。 もう一人はなんとアオバさんのベストに手をかけた。
例え小さい傷であろうと、いきなり手負いの上忍に触れたら無意識で反撃されても文句は言えない。
なのに彼はそんな事は眼中にないらしい。 まあ・・・・・ 情報部のアオバさんだし・・・・ でもね?
普通はそんな無茶な行動、上忍が相手なら絶対にしないよ。 下手したら自分が重症を負うハメになる。
「分かった、分かったから! う、腕だから! ・・・・・・ほら、ここのとこ・・・・」
「あ、ほんとだ。 じゃあこれ貼って・・・・ 医療班特製のパッチですから安心ですよ?」
「・・・・・ありがとう。 ・・・・さすがに目ざといなぁ、ははは。」
「・・・・はい、終了! まあ、一種の職業病です。 小さい傷ほど敏感ですからね、俺。」
「へー 貼るだけで皮膚下に消毒殺菌効果が浸透するパッチなの? 便利だね。」
「ええ。 医療班にお願いして作ってもらったんですよ。 いつも携帯してるんです。」
「そうか、生徒さん達用に。 くす! イルカ先生って本当に・・・・・ っ!! 誰だっ!! 」
「「??」」
げっ! アオバさんに見つかった!! というか、ボク達がチャクラコントロールを乱したんだけど。
いや、だって・・・・・ あの彼がそうだったらいいな、なんて思ってたところにいきなり・・・・。
上忍が自ら消毒したと言ってる小さな傷であっても、しっかりと確認する中忍が、イルカ先生だった。
その名を聞いて、抑えていたはずの気配が漏れちゃったよ・・・・・・ またしても痛恨のミスだ。
このまま気配を消し続けたら、間違いなく敵とみなされる。 はぁ・・・・・ 何やってるんだか。
カカシ先輩。 なんだかボク達、あり得ないようなうっかりミスばかりしてますよね・・・・・
初キス体験に向けての未知のイメージがムクムクと膨らんでいますから、無理もないんでしょうけど。
気配を消すのを止めた途端に、任務受付所の一番奥の長椅子に座っているボク達に視線が集まった。
突然現れた様に見えると思う。 実はさっきからここに座ってて観察してました、とは言えない。
取り合えずペコリとお辞儀をしてみたら。 驚きつつも、三人は律儀にお辞儀を返してくれた。
「あー 吃驚した。 また、どうして暗部の司令塔がこんなとこに・・・・」
「イ、イルカ先生にお願いがあって・・・・」
「さっきから来てたんだケド、その・・・・」
「あっ!! 聞いてます!! 昨日訪ねてくれた暗部はお二人だったんですか。」
「「?! う、うん、そう!!」」
・・・・・受付忍二人を即座に庇う姿勢をみせたアオバさん。 木の葉の上忍としてなかなかのもの。
なんて、ちよっと感心していたら、なんとイルカ先生は引き継ぎでボク達の事を聞いていたそうだ。
さすがと言おうか、任務受付所の連絡系統はしっかりしてた。 暗部も負けてられないですね、先輩。
「あ、山城上忍が任務報告中だったから、気遣って下さったんですね?」
「ははは! イルカ先生に用事なら、俺の報告は別に気にしないでよかったのに・・・・」
「あー まあ・・・・ でも傷を放置するのはもっと駄目だし・・・・・ね、カカシ先輩?」
「ン? ア、そうそう、邪魔しちゃ悪いかなー とか。 オレ達の用事は後でもイイし。」
いや、もっと前から来てたんだけど・・・・ なんて、今は正直に盗み見してた事を言う必要はない。
なんとなく良い様に誤解してくれてるから、そのままにしておこう、うん。 少しの時間差だしね!
それよりも、上忍のちょっとした傷を見逃さず、ちゃんと適切に処置してたイルカ先生に感動中。
こういう所はやっぱり忍びだ。 見過ごしがちな小さな傷程怖いと知っているんだね・・・・・。
ボク達の部下にも結構いるんだよ。 かすり傷だから、って消毒して終わり、っていうヤツが。
でもそれは大きな間違い。 かすり傷や小さな刺し傷は、それだけで安心だと思いがち。
誰だって血がドクドク出る様な傷は慎重に手当てする。 そこが油断なんだよ、実はね。
傷自体は小さくても、そこに何かしらの薬が仕込まれていたら? 追効果が本来の目的なら?
ちゃんとした医療忍者の処置を受けられない状況では、小さな傷程怖いモノはない。
・・・・・カカシ先輩、イルカ先生って度胸もあって仲間思いで・・・・・ 予想以上の中忍ですね。
まさかこんな嬉しい誤算があるとは。 監察という名の盗み見で、彼本来の人柄まで確認出来たなんて。
「イルカ先生。 俺の傷はほら、これ貼ってくれたし、もう心配ないよ。」
「仮眠室で話して来たら? 今の時間帯ならおれだけで大丈夫だぞ?」
「そうだな、夜間は報告書の確認だけだし・・・・ そのほうがいいかな、うん。」
「おう、任せとけ。 もし万が一、帰還の上忍ラッシュに見舞われたら呼ぶな?」
「あはは! ないない、くすくす! じゃぁ、頼むな。 ・・・・・・あの、ぞうぞ奥へ。」
イルカ先生がボク達を受付所の奥にある仮眠室へ呼んでくれた。 当然ながらいそいそとそちらへ向かう。
もう一人の受付忍とアオバさんとのやり取りを横目に、頭の中はもうイルカ先生とのキスで一杯だった。