先生に教わろう! 9   @AB CDE FGI JKL MN




俺は校外学習や課外授業をする。 アカデミー校舎を出て、実際に森の中を散策するのが方針だ。
たくさんの森に囲まれた木の葉隠れの里。 実際に目で見て触れば、地形も不思議と体が覚える。
赤ん坊がいつの間にか喋れるようになるのと同じで。 自分の中のチャクラ質も自然に感じる。

そういう日は朝から丸一日外に出ちゃうんだ。 午前、午後のどちらも受付には入れない。
自分の都合でシフトを優遇してもらってるんだから、ちゃんと借りは返さないといけないだろ?
その分を夜勤に回してもらえば、それで貸し借りはナシ。 でないと俺の気が済まない。
でもこんな事は今までなかったから吃驚。 俺が任務受付所にいない時に暗部が訪ねてきたらしい。


若い暗部が二人、アカデミーの最年少クラスに子供を編入させたい様子、三代目の推薦らしい。
イルカ先生の人柄や、受付とアカデミーを両立出来ているのか、自分の目で確かめたい感じだった。
嬉しいからって、むやみやたらのキスは怒らせる可能性大。 子煩悩だけど注意されたし。  メバル



こんなメモが昼番から引き継ぎで渡された。 今夜気が変わらなければ訪ねて来るだろう、と伝言も。
いきなりの登場に吃驚したけど、本当に訪ねてくれた。 しかもなんと暗部の部隊長とその補佐だとか。
よっぽどの事情があるのかもしれないな。 でもアオバさんが気付かなかったら、全然分かんなかった!




素顔を見せるのは俺への信頼の証だろうか・・・・・ 一体どんな複雑な事情があるんだろう?
少しだけ不安になったけど、三代目が俺のクラスを薦めて下さったんだ、自信を持とう、うん。
ウチの里の暗部の長は、他里も恐れる黄金コンビ。 でも今は我が子を心配する親そのものなんだ。

そう思ってたんだけど・・・ からかわれてる? でもこんな手の込んだ悪戯、暗部の長達がする訳がない。
・・・・・・・・・今さっき真剣に聞くと約束したばかりでなんだけど・・・・ これ、お子様のお話なの??
異議申し立てをしないと言ったキスの話だ・・・・ どう聞いてもお二人の個人的な事情っぽい・・・・

暗部の面々はあまりキスをしないらしい。 口内は広く様々なモノを仕込めるから危険だとか。
口は人の体内に直結している一番大きな穴である、体内は鍛えようがなく無防備である・・・・・・
いや、そういう風に言われれば、確かにそうなんだけども。 そんな堅苦しく・・・・・・ ぁ。

生徒達が自分で何かを発見したり行動したりすると、嬉しくなって抱きしめてキスしちゃうんだけど。
頑張ったな! 自分で考えたのか? 偉いぞ!! って勢い余って・・・・ “ちゅ!” っと頭にな。
もしかしてそのキスぐせを気にしないと言いつつ、とんでもない事だと心底思わせる為、なのかも。
忍びにとってキスがいかに恐ろしい事かを俺に自覚させる為?? お前も自分で気付け、みたいな??

「ンー 特に経験しなくても全然問題ないと思う。」
「というか、その方が確実に危険を回避できるし。」
「・・・・・・・・・・・。」

なんか、こんな風に切々と真剣に訴えられたら・・・・ 俺、とんでもなく悪人の様な気がして来た・・・・
よく考えたら、免疫も何もない小さい子供の頭に“ちゅ!”っとやる訳だ。 俺の唇は外気にさらされてる。
空気中を漂う様々な物質に、大人で忍びの俺は免疫があるけど、最年少クラスの子達はそうじゃない。

自分自身で体感させる事は俺の方針。 だから俺の方針通りに意見してくれたのかもしれない。
けど、俺だって教師だ。 このまま相手の意見に影響されて、ホイホイ考えを変える訳に行かない。
確かに俺のキスは、お父さんやお母さんが可愛いからと、愛情表現で子供にしてあげるのとは違う。
子供は感情に敏感だけど、大人の様に声のトーンや微妙な表情で感じる訳じゃない。 単純明快が一番。

「お二人の考えは、忍びとしてこれ以上ないほど完璧なモノです。」
「「?! イルカ先生っ!! 理解して・・・・・・」」
「けれどこれだけは言わせて下さい。 自分のクセを正当化する訳じゃありませんが。」

「俺のキスはコミニュケーションの一環だと思って下さい。」
「「う、うん・・・・・・。」」
「それとこれはもっと余計な事かもしれませんが・・・・・ 悲しいですから。」
「「え・・・・ 悲しい・・・・・??」」

考え方は忍びとしては超一流。 ほんの僅かな油断が死を招くのを、一番知っているだろう部隊だ。
でもな、やっぱり悲しいよ。 我が子にもチューぐらいしてやれよ。 子煩悩パパの名が泣くぞ?
俺の担当してるクラスは3〜4歳の子が中心の最年少組。 プニプニほっぺとかツヤツヤ頭とか。
皆、これでもかってぐらい可愛い。 あの弾ける笑顔をみたら抱きしめたくなるだろ? チューも。

「キスは自分の命の危険を脅かす怖いモノ・・・・・ なんて。 悲し過ぎる認識です。」
「「・・・・・・・・・。」」
「愛情表現のひとつなんですよ? ・・・・ヘンな意味じゃなく、大人の口づけだってそうです。」
「「愛情・・・・・。」」
「ええ、単純明快に考えて下さい。 誰が見てもキスは愛情を表現する手段、ですよ。」

俺はいつも生徒のこれからの事を考えています。 ほんの少しの成長が、当人より何倍も嬉しい。
頑張ったな、良くやったな、信じてたよ、そうやって努力する姿勢が大好きだよ、その気持ちが溢れる。
だから・・・・・ そうですね、こんなのを真似する必用はないんですけど、キスをしちゃうんです。
俺の中には生徒一人一人に対する愛情が、一杯あるんですよ。 ハッキリ言って押し付けです、ははは!

「「イ、イルカ先生・・・・・・」」
「わわわ・・・・ どうしたんですか? 本当に悲しくなっちゃいました??」
「「・・・・・イルカ先生みたいな人がいて・・・・・ 嬉しい・・・・」」

「そんな、俺の方こそ。 わざわざ戒めて下さったのに、自我を通すような話を・・・・」
「「・・・・・・・イルカ先生、教えて。 イルカ先生に教わりたい、大人のキスの仕方。」」

わー やっぱり我が子にもキスをした事がなかったのか・・・・ 教えてほしいだなんて・・・・・
・・・・・・は? ・・・・ん?? キスの仕方?? 大人の・・・・ キスって?? え? え? 大人の??