先生に教わろう! 15   @AB CDE FGH IJK LM




俺自身が“こいつ頑張ったな!”って思ったら、つい子供のつむじにキスをするクセがある。
抱きしめたり頬ずりしたり。 “努力したのを知ってるぞ?”を手っ取り早く表現する為だ。
まだ精神的に未熟な子供に、言葉の真意を感じろと言っても無理な話。 一目瞭然のモノがいい。
そういう分かり易いスキンシップなら、言葉はいらないだろ? “大好き”が一瞬で伝わる様に。

子供によって“見て見て!”って自分の成果を、さも褒めて欲しそうにPRする子もいれば、
“こんな事ぐらい訳ない”っていう顔して、自分が頑張った姿を隠そうとする子もいる。
俺達教師の仕事は、そんな子供の一人一人の違いを理解して、同じように褒めてやる事だ。

タイプが違うから、自分が思った通りに素直に伝えないからと、愛情に違いがあっちゃ駄目だろう?
だから俺はどの子も同じように褒める。 表現の仕方は違うけど求めてるモノは同じだから。
子供は “この先生は自分を好きで、ちゃんと見ててくれる” という安心感を求めてるんだ。

・・・・・・クラスの生徒と俺の関係を、二人の様に理論立てて説明するなら、こんな感じだな。
結果が出ても出なくても、努力した事を誰かに認めてもらえると、人はそれだけで嬉しいもんだ。
だからこれもそう。 相手はアカデミーに入学したての子供じゃないけど、努力をしたんだよ。

俺、教師ですからすぐに分かりましたよ。 発見の喜びと努力の成果を見て欲しいんですよね?
まるで大きな生徒だ、自分の心を乱す元になると、愛情だけを思考から消し去った大人の子供。
見つけたよ先生、褒めて! と言わんばかりだ。 飛び付いて来た二人を抱きしめながらそう思った。
・・・・・・・・でもそこはやっぱり、大人と子供の大きな違い。 大人の愛情は・・・・・・ ね?



「さすがアオバさんですね。 気が利きますv」
「代行? ・・・・・・・・・お礼って・・・ パッチの?? いや・・・・ それよりも・・・・・」
「イルカ先生ー? 影分身解いたの気付いてる??」
「見られ・・・ た? ・・・・・・・・キスしてるとこ・・・・・ 見られた・・・・・ とか??」

「ウン、それはもうバッチリとネ! イルカ先生からのキスを。 フフフ!」
「くす! ちなみに受付君も、ボク達が動物にじゃれてる時、覗きに来たよ?」
「赤ちゃん動物を可愛がってる黄金コンビを・・・・ 見てしまったと??」
「「無言で戻って行ったから、急ぎの用じゃなかったみたいvv」」
「・・・・・・・・・そういう問題じゃありません。 ( 二人の面子が・・・・・ ) 」

「ねぇ、イルカ先生。 帰ろ? でもって、もっと一杯キスしよう?」
「キス以外の事もしたいなー。 先生に一杯教えてほしいんだけど?」
「・・・・・その他に一体何を俺がお二人に教えられると言うのでしょうか?」
「「愛情たっぷりの反応〜〜vv」」
「・・・・・それなら俺にも出来そうですね・・・・・ ははは・・・・」

そりゃそうだろう。 キスは拒絶してたというだけで、その他は入れ食い状態だったろうから。
・・・・だって里の誉だ。 どこからどうみてもパーフェクトな男達、女がほおっておくはずがない。
寝っ転がってアンアン言ってるだけなら俺にも出来そうだ・・・・・・・ って。 早っっ!!!

どんな瞬身移動?? てか、これ時空間移動じゃないか?? ってぐらいの速さで拉致られた。
ここどこ?! ・・・・まあいいか。 受付はアオバさん本人が代行してくれる、って言ってたんだし。
今はただ、この愛を思い出したばかりの大きい生徒達に・・・・・ 目一杯、愛情を注ぎたいんだ、俺。
愛情の押し売りをします。 後から想像と違った・・・・・ とか言っても、もう返品不可能ですからね?

「返品なんて冗談じゃない! 絶対イルカ先生がいい!!」
「イルカ先生でなきゃ、いらない!! 他は欲しくない!」
「それはどうも。 くす! ・・・・それが理屈じゃない愛情です、理由なんていらないんですよ。」

俺が愛情を教えてあげたいと思ったのは“キスは必要ないけど体験してみたい”と言ったから。
つまり言いかえれば“愛情なんか必要ないけどそれがどんなモノかは知りたい”だ。
そうしなければ生きて来れなかったとしても、愛情を否定して欲しくないと思ったんだ。

二人は暗殺戦術特殊部隊のトップツー、忍びとしては俺なんか足元にも及ばないほどの人物。
なのにキスが怖いと言う。 理論立てた言い訳をしてるけど、愛情を思い出すのが怖いだけだ。
愛情は人が産まれながらに知っている感情なんだ。 抱っこされない子供はいないだろ?

野生の動物が本能で生後すぐに立ちあがるのは、敵に襲われない為。 自分で立たなければ死ぬ。
そんな環境にない人間は、誰しも最初に人の手を借りる。 だから必ず知っているはずなんだよ。
抱き上げてくれる腕がなかったら、人は生きられない。 でも一人ではどうする事も出来ない。
必ずそこには誰かの支えがある。 だから温もりや愛情を知らない人間はいない、忘れてるだけ。

俺が教えたんじゃない、二人は最初から知っていた。 ただ、それを認めるのが怖かっただけだ。
俺は教師だから、頑張った二人をやっぱり褒めてあげたい。 そしてちゃかり宿を予約してた強かさも。
・・・・・さすが暗部の司令塔。 キスを教えてもらう為に、お気に入りの宿を予約していたそうだ。






アオバさんと同僚から個別に聞かれ、俺達の関係を話した。 縁があって二人の情人になりました、って。
ふふ! 吃驚してたなぁ、同僚は。 アオバさんは“ああ、やっぱりね”って、感じだったけど。
あんまり褒められたもんじゃないのに、子供についやっちゃうキスぐせが縁結びだとは言えなかった。
・・・・・お、本日の依頼人第一号様だ。 粋な藍色の羽織りは、大きい御店のご主人かな?


「ようこそ木の葉隠れの里へ! ・・・・お人探しですね? ・・・イルカというキスの先生・・・・を?」
「暗部のお偉いさんが、花街で探していたそうで。 そんな人物ならぜひウチにと思いまして・・・・」
「・・・・・・・・・・・・あー それ、実は単なるデマですから。 該当人物はいません。」
「そうなんですか・・・・・・ 残念・・・・ ふぅ、専属で契約しようと思ったのに・・・・・」

「ちゃんとご主人の目で確認してからスカウトされるのがよろしいかと・・・・・」
「ははは、その通りです。 そんな上手い話はない、ってコトですね。 ははは!」
「実在する人物なら、いつでもお力になりますよ? お力になれなくて申し訳ありません。」


・・・・・・カカシさん、テンゾウさん。 よりによって・・・・ 花街で俺を探してたんですか??
・・・・・・この悪癖のおかげで二人と知り合えたけど。 俺・・・・ 本気でキスぐせ治した方がいいかもな。




キスでどこまでエロい雰囲気にできるか、への挑戦(笑)でした。 コメディにならなくて良かった・・・ ほっ!  聖