先生に教わろう! 11
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ボク達に愛情を教えたいと言って、突然泣き出したイルカ先生。 ボク達のつむじの先にキスをした。
期待はずれにも程がありますが・・・ と言って。 イルカ先生はキスを生徒の頭のつむじにするそうだ。
自分の生徒も、自分のキスぐせを知って興味本位でお願いしに来た生徒も、皆の頭に例外なくね。
イルカ先生はキスの先生じゃなかった。 忍者アカデミーで最年少クラスを担当してる先生だった。
「ちゅ!」 「チュ!」
「「?! ・・・・・・・ン? え?」」
「これが誤解の元になった俺のクセです。」
「「・・・・・頭に・・・・ ちゅー?」」
「男の俺にキスを期待するぐらいだから、許されるかな、と思って実践してみました! ははは!」
「「・・・・・・・・・・くすっ!」」
イルカ先生はボク達にキスを教えてくれる先生じゃなかったけど、頭にキスをしてくれた。
何だ違うのかと、もの凄くガッカリしてもいいのに。 楽しみにしてたキスを体験できないのに。
ボクの勘違いでカカシ先輩まで巻き込んで。 ぬか喜びさせちゃってすみませんと謝るトコなのに。
イルカ先生にも、キスの先生じゃないならこんな真似するなと怒ってもいいのに。 だけど・・・・
全然ガッカリしないし、先輩にも謝るなんて気は起きない。 イルカ先生を怒るなんてとんでもない。
だって今、キスが体験できるかもと思って、ドキドキワクワクしてたあの気持ちより・・・・・・
それよりももっとドキドキしてる。 イルカ先生の唇が頭に触れた瞬間から、やけに脈が早いんだ。
ボク達はキスの先生を探しまわっていたけど、誰でも良かった訳じゃない。 イルカ先生だから。
たくさんの人の話を聞いて情報収集して、ボク達の目で見て確認して、この人なら安心だと思ったんだ。
泣いちゃったせいもあるのかな、イルカ先生の唇は温かかった。 つむじだけが熱を帯びてるみたい。
何度も自分の頭を撫でてしまった。 ・・・・・・くす! カカシ先輩も同じ様に頭を撫でてる。
期待はずれなんかじゃないよ、イルカ先生。 アカデミーの生徒と同じ扱いでも・・・・ なぜか嬉しい。
これって・・・・・ さっきイルカ先生がボク達に教えてくれると言った・・・・ 愛情なのかな?
頭にチョンとしただけで、温かい空気が周りに漂っている。 う〜ん、不思議ですね、カカシ先輩。
恋人や伴侶を見つけろと言った火影様。 そんなのは引退後に生き残ってたら始めて考える事だ。
誰かと一緒に、愛し愛されて、なんて。 来るか来ないか分からない漠然とした未来の自分の姿。
でもそこに行きつく確率を少しでも上げたいからこそ、ボク達の中では “キスは危険信号” だった。
里の忍びとして木の葉の為に、火の国に住む民の為に、避けられない死があるならば仕方がないと。
けれどあがいてみろ、生き残る事を前提に動け、それが三代目の教えだった。 だからボク達は・・・・
回避できる危険をわざわざ通る事はしなかったんだ。 だってキスはそういう危険なモノでしょう?
それに、そんなの経験しなくたって平気、なくても死にはしない。 文字通り、無い方が死なない。
けれどボク達忍びは、広く浅くが基本だ。 何事も知らないでいるより、少しは知っている方がいい。
それこそ百聞は一見にしかずだよ。 だから安全が確保されてるのなら、試してみたいんだ。
そんなボク達の好奇心に負けた様な感情を、イルカ先生は探究心だと言った。 弱みへの挑戦だとも。
自分は教師だから、そういう頑張り屋さんを見ると、心の底から応援したくなるんです、とね。
勘違いな上に、いろいろ失礼な妄想を抱いてしまったボク達に、先生は愛情を教えてくれるそうだ。
真剣に聞いてと言われたから真剣に考えて対処します、そう言ってくれた。 でもどうやって愛情を??
「えー お二人が好きな動物はなんですか?」
「?? オレは忍犬使いだから、犬かなー やっぱり。」
「?? ボクはこの面に愛着があるので、猫ですかね。」
「カカシさんは犬で、テンゾウさんは猫・・・・ ですね? 分かりました。」
「申し訳ありませんが、俺の暗示にかかって下さい。」
「「へ??」」
「いや、ほら・・・・ アカデミー生なら何の問題もないんですけど、お二人が相手なので。」
「「・・・・・・・??」」
イルカ先生は言った。 “今から犬と猫に変化して二人に甘えますから、撫でてみて下さい”って。
なるほど。 イルカ先生はボク達の好きな動物に変化して甘え、庇護欲をかきたてるつもりらしい。
思わず頬ずりしたくなる、思わずキスをしたくなる、ただ可愛いから抱きしめたくなる生き物。
頬ずりやキスして細菌に感染する恐れが・・・ なんて考える前に、そうしてるのを発見して下さいと。
「最初は・・・・・・・ じゃあ、ワンちゃんに・・・・・」
「?? 影分身を使えば一度で済みますよ?」
「・・・・・使えません。 すみませんね、中忍で。」
「アハハ、そのぐらいオレ達が協力するヨ!」
「イルカ先生、手を貸して? ボクのチャクラ渡すから。 ・・・・・先輩、準備OKです!」
「ン、チャクラ量が増幅したネ、術を流すヨ? ・・・・・・・・影分身の術っ!!」
「え? え? 影分身って、禁術じゃ・・・・・・ わわわっ!!」
「「成功! イルカ先生が二人vv」」
「「さ・・・・ さすが暗部の黄金コンビ・・・・。 では俺も。 変化の術っ!!」」
「わわっ! 可愛いっっ!! 産まれて間もない感じの猫と犬ですね?」
「生後何日かだケド、目が見えてるの? ウン、先生の変化だもんネ!」
ボク達が手伝ってあげて二人になったイルカ先生は、変化の術でヨチヨチの仔犬と仔猫になった。
先生の変化した犬と猫はもの凄く小さくて、頭と体のバランスが上手く取れないでヨロヨロしてる。
あっちにヨロヨロ、こっちでコテンと転がりながら、一生懸命ボク達の膝に向かってやって来た。
さすが忍者学校の先生だ、小さい犬猫になれといっても、ここまで忠実に再現した変化はできないよ。