例えばこんな話 1
ABC
DEF
GHI
JKL
MNO
なあ、ちょっと参考までに意見を聞かせてくれるか? ヘンな例え話をするけど気にするなよ?
野生動物の恩返しってヤツ。 例えば、狸や狐とか、助けてもらった恩を返すって・・・・ よく聞くだろ?
次の日の朝、家の玄関の前に鼠の死骸やら小鳥の死骸やらを、こっそりと置いて帰って行く、とかな。
でもそれって、はっきり言うとだ、俺達からしたら嬉しくない贈り物だよな? 有難迷惑って感じだろ??
「“せっかくだから今日の晩ご飯にしよう”・・・・・ とか。 あり得ないよな?」
「・・・・・一体何を聞きたいのか知らんが。 死骸は食わんだろ、いくらなんでも。」
「・・・・だよな? あー あと、もう一個条件を追加していいか??」
「なんだよ、誰かに何か貰ったのか、イルカ。 ・・・・・ あんまり嬉しくない物を・・・・」
う、鋭い!! てか、俺じゃないんだけど、それに近い・・・・ まあ、いいや、それはスルーしてくれ。
その狐やら狸やらは、もの凄く飼い主に忠実・・・・ じゃない、人懐っこくて無下に出来ないとする。
嬉しそうに家の近くで、様子を窺ってたり。 まあとにかく、餌付けされてるらしいんだ、その野生動物は。
その雰囲気を感じたら、取り合えず中に持って入るトコロまでは分かるけど・・・・ マジで食うか??
「あー 何が何だか分からんが。 親しい人からいらない物を貰って断れなかった、で合ってるか?」
「シラスちゃん、俺が聞いてるんだけど。 話の確信をえぐろうとするのは止めてくれるかなぁ。」
「すまん、スルーだったな? まあ、人の善意・・・・ああ、狸だっけ? 喜んで受け取るかな、一応。」
「・・・・・・・だよなー。 やっぱり、そうするよな? 俺だってそうすると思うもん。」
そうだよな、その気持ちは分かるんだよ、俺も。 好意でやってくれた事を無下に出来ないだろう、って。
それがどんなに気に入らなくても。 若干ズレが生じている認識でも、もの凄く心がこもってたりしたら。
その純粋な好意の手前、嫌だとは言えず喜んで受け取ってあげるだろうな、とは思うんだけど・・・・
なにもなぁ。 あこまで徹底しなくても良かったのに。 毒を食らわば皿まで、って事なのかもな・・・・
「?? ・・・・なんだよ、イルカ。 まさか・・・・ お前がヘンな物、渡した張本人?!」
「だぁぁあぁああっ!! だから、確信はえぐるな、って言ってるだろうがっっ!!」
「ははは! でも・・・・ なんだかんだ言っても喜んでくれたんだろう? その相手はさ?」
「・・・・・・まあな。 ・・・・・って! シラスッ!! 誘導するなよ、お前っ!!」
「チョロすぎ、イルカ。 こんな誘導に引っ掛かるなんて、潜入員の名が泣くぞ?」
「・・・・・・甘いな、シラスくん。 俺の事じゃない、って言ったろう? これは例え話!」
「・・・・なんだよ。 ああ、これから行く任務に関係ある事なのか??」
「質問返しには応じませーん、悪しからず! でもまあ、俺もそう思うから、もう吹っ切る事にする!」
そうだよな。 やっぱりそこは・・・・ 買うべきところだよな。 悪気があった訳じゃないんだから。
引くに引けなくて、どうしょうもなくて。 彼らの立場を考えたら、俺だってそうしたかもしれない。
あれこれ考えて、最終的に決めたモノ。 日頃の恩を返したかったんだよ。 一生懸命作ってたし・・・・
その善意の思いが一杯詰まってたんだ。 まあ認識は・・・・・・ どうなの、それ? って思うけどな。
あー 俺もこれだけが取り柄だしな。 なんてったって、これのおかげで潜入員として重宝がられてるし。
ちょこっと忍術を使っても、今まで一度も俺だとバレた事がない。 芸は身を助く、だよな、ほんと。
うん、いつまでも引きずっててもしょうがないじゃないか。 スーンゴイ体験をしたと思えば! ははは!
「・・・・・なんだか知らんが。 任務前に吹っ切れてよかったな、イルカ?」
「へへ! 全然関係のない奴に話すって・・・・ 何気にスッキリするもんだな?」
「・・・・・そりゃよかった。 まあ、朝一番でおれはヒマ。 門には他に誰も居ないしな?」
「じゃぁ、行ってくるよ。 中忍うみのイルカ、これより潜入任務に就く為、開門をお願いします!」
「あうんの門番、中忍シラス 中忍一名の出発を確認! ・・・・・・開門っ!!」
「これから任務に就く仲間のモヤモヤを解消させてやるのも、門番の務め! ・・・・ってか?
しかし・・・・・ おれが言うのもなんだけど。 ほんと、忍びには見えないよなー イルカって。
ああやって忍犬まで連れていると、ますます忍びには見えない。 それでこそ木の葉の潜入員だ!
・・・・・ってか、あの忍犬・・・・・ めちゃラブリーなんですけど?! おれ動物大好きだし!
へのへのもへじのちゃんちゃんこだろ? “伝令係”なんてタスキを斜めに掛けてるんだぞ?
しかも後からそーっと、ついて行くなんて。 なにあの奥ゆかしい伝令忍犬! 羨ましいぞ、イルカ!」