例えばこんな話 15
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「ほほほほ。 ・・・・・そんなにあ奴が気に入ったか?」
「「それはもうっ!!」」
「そうかそうか。 お主達がのぅ・・・・・ てっきり興味はないのかと思おておったぞ?」
「ヤ、自分達が一番ビックリしています。 守りたいナニかを形で手に入れたいだなんて。」
「凄くね、落ち着くんですよ。 多分、一日中くっついてても違和感がないと思います。」
「他人を心に入れる事は、ワシ達忍びにとって己が恐怖と向き合う事になる・・・・ 覚悟は出来とるか?」
「「出来ています。」」
三代目の危惧している事は分かる。 ボク達忍びが誰か一人に固執してしまえば、弱点になるから。
うみの中忍の名を利用されて、心理的に追い込まれる事は間違いない。 そんな事は端から承知だ。
殺してやったとか、人質に取ったとか、別れたいだとか。 敵はあらゆる情報でかく乱してくるだろう。
でもちょっとやそっとじゃ、そんなのは信じない。 自分達の中の愛情と直感を信じれば良い事だ。
ボク達は今まで何度も、死の淵を行ったり来たりしながら、それでもしぶとく生き抜いて来た忍びだよ?
もしもそんなボク達の弱点を利用したらどうなるか。 100倍に返して思い知らせてやるだけだ。
木の葉の暗部の名が、他里に威圧感を与えるのと同じように。 ただじゃおかない、必ず後悔させてやる。
己の恐怖と向き合う・・・・か。 うん、そうだろうと思う。 戦いでは必ずそこを利用されるだろう。
術にかかれば、大切な人を殺される幻を見せられる。 敵が変化するのは間違いなく、その人間の姿だ。
何度も大切な人が殺される姿を見る事になる。 そして何度も自分の手で殺す事になるだろう。
全てが敵の術のせいだとしても、術が解けるまでは。 その死にゆく様を見続けなければならない。
「うみの中忍も忍び。 オレ達と同じように、失う恐怖と戦ってくれると信じてます。」
「市井に溶け込んでいる雨射は、優秀な潜入員だと知っています。 それにもう・・・・」
「もう既にオレ達の心の中に入れちゃったんですヨ。 本人がどう思おうと、オレ達の弱点です。」
「ええ、その通りです。 見ているだけでも同じなら、手に入れたい。 一緒に生きたいんです。」
「うむ、よう言うた。 ワシはの、遊ぶだけのお主達が、少々不憫でならんかった。」
「「・・・・・三代目??」」
「己で欲し、己が手で守る。 それは何より強い心を生む。 お主達はとうとう見つけたんじゃな?」
「「・・・・・・はいっ!」」
そうだ。 部下を持った時、一番最初に“死ねない”と思った。 まだコイツらを残して逝けない、って。
でも今回は“死ねない”じゃない。 生きたい、死んでたまるか、ずっと一緒に生きたい、そう思った。
自分の手で守るモノは・・・・・ 愛する人だけじゃない。 自分自身も守る事に繋がるんだ。
そして、同じ思いをするという事は相手もボク達の様に、自分自身を守って共に生きてくれるという事。
「ほほほほ。 ますます我が里の暗部の長は、他里の忍び達の畏怖の対象になるじゃろうて。」
「「必ずや。 お約束いたします。」」
「うむ。 ・・・・時にの、巷で横暴じゃと言われておるお主達に、ちと相談があるんじゃが。」
「「横暴?? ・・・・なんでしょう??」」
「お主達が雨射を独占しとるらしいんじゃが、ワシだけちょこっと大目に・・・・」
「「駄目です! お断りしますっっ!!」」
「なんじゃっ! ケチじゃのぅ!! イルカはワシが小さい頃から・・・・・・・」
「「マッサージのみにして下さいっっ!!!」」
まさかとは思ったけど、やっぱりかっ!! 冗談じゃありませんよ、お断りです、この好色爺っっ!!
これだけボク達が思いのたけを述べたのに、まだそんな未練ったらしい事を言うんですか?!
ふふふ、甘いですよ三代目。 もしかしたらこういう話になるかもと、ちゃんと想定済みなんです。
ボク達は雨射の任務の邪魔はしませんからね、情報収集の為のお仕事としてなら黙認しています。
任務以外で雨射に癒しを求めに来る輩は認めません。 ええ、横暴とかほざいている上忍達の事です。
カカシ先輩と話し合ったんですよ。 お年寄りから雨射を丸々取り上げてしまうのも大人げないな、と。
・・・・・だから。 あそこまでの腕に育て上げた功績に免じて、マッサージのみ、なら許します。
「なんかようわからんが、散々な言われようじゃの。 ・・・・・ワシ、肩揉みは頼んでいいんじゃな?」
「肩揉みだけ・・・・ 三代目、ずいぶん妥協しましたね、ありがとうございます。」
「コッチも誠意を見せなきゃネ。 肩揉み+頭皮マッサージまでは容認しますヨ。」
「・・・・・・・器量が小さいのか大きいのか。 いまいちよくわからんのぉ・・・・。」
「最近ネ、オツムがめっきり薄くなってしまわれたので、一応気にはしているんですヨ、オレ達。」
「火影笠は通気性が良いと思いますが、はやり笠は笠。 蒸れますからね。 頭皮は大切に・・・・・」
「余計な心配はせんでええ、馬鹿もんっ! 休息日にしてやるゆえ、はよ口説きにいかんかっっ!!」
「「!!! 三代目っ、ありがとうございますっっ!!」」
さすが三代目だ、話せばわかる! まあそこは、妥協してくれた三代目とボク達の誠意、って事で。
ふふふ。 うみの中忍の心のこもった頭皮マッサージで、髪の毛が増えたらいいですね、火影様。
わお、休息日ですよ、カカシ先輩っ! 三代目も認めてくれた事だし、早速、草津屋に行きましょう!