例えばこんな話 13
@AB
CDE
FGH
IJK
MNO
今日の門番がシラスでよかったなぁ! イズモかコテツだったら、あんな例え話、出来なかったもん。
だって・・・・ イズモとコテツは拷問部所属。 室長イビキさんの部下だ。 暗部の・・・・ 拷問部。
ヘンに勘ぐられたら、マズイし。 なんにも関係がないシラスに話したら、本当にスッキリした。
うん。 あんな・・・・ 花街の女が喜びそうな忍び二人のブツを抜いて・・・・ イカせたんだぞ?!
こんな体験した中忍、木の葉広しと言えど、多分俺だけだ! しかも男なのに!! 貴重な体験だった。
・・・・もうないけどな。 てか、あっちゃ困る。 う〜ん、あれからまだ一週間か・・・・。
しかし強烈なインパクトだった。 あそこまで認識が違うと、いっそ清々しいな。 やはり大物は違う。
今日の俺の任務は、最近キナ臭い噂がある国の情報を得る事。 内乱になったら間違いなく依頼がくる。
なにかと普段から木の葉隠れを頼る小国だから。 その国から避難して来た大名が草津屋に来るらしい。
我先に逃げたんだろうな、内乱が収まったら帰るつもりなんだろう。 その間、大陸巡りでもして。
最近の出来事、噂、なんでもいい。 その国について出来るだけ聞き出すのが、按摩師 雨射の任務だ。
温泉街に一歩でも入ったら、俺は雨射だ。 草津屋の旦那さんも、俺が里の忍びだと知ってるけど。
どこで誰が見聞きしているか分からないから。 草津屋専属の按摩師 雨射になりきるんだ。
最初はわざとらしかった旦那さんも、口数が多くなって、今ではとても自然に振る舞える様になった。
もう四年だ。 あんまりわざとらしいから、頼むから喋らないで下さいと、お願いした思い出もある。
「おはよう、雨射。 この手紙を預かっていたよ? 雨射さんに、って。 ほら、前に来た忍びで・・・」
「?? 忍びの方々には御贔屓にしてもらっていますから・・・・ 特に木の葉の里の・・・・」
「そう、木の葉の、ほら! 行ったり来たりしてた・・・ ほら、お面つけた四人組の方!」
「・・・・・木の葉の暗部さんですね? 有難うございました。 部屋で読みますね。 ・・・・では。」
雨射には滞在用の部屋がある。 予約が入ったら必ず朝からこの部屋に居るんだよ、按摩師は。
あの時の暗部達から手紙?! まさか自分達も予約を?! 落ちつけ俺、お礼の手紙だよきっと!!
潜入員なのに、動揺しちゃマズイだろう。 自然に、自然に・・・・・ いつもの様に・・・・・
と思いながらも、少し足早になっていたかもな。 だって懐にしまった手紙が気になって仕方がない。
「よし、テリトリーに入った! ふぅ! うぅ・・・・ せっかく吹っ切って来たのに・・・・」
自分の部屋に入ってすぐ、怖々封筒を懐から出して開封してみた。 ・・・・・お礼の手紙には違いない。
でも今回もやはり、暗部達の思考は俺の予想を遥かに上回ったモノだった。 なんでこういう認識?!
いつでも呼び出して下さいだぁ?! ああ、恨むべきは軽はずみな自分の失言・・・・ 俺の馬鹿っ!!
・・・・・・でもな。 なんか・・・・・。 こんなのに絆されちゃう俺って、潜入員としてどうなの?
草津屋の按摩師 雨射こと 潜入部隊のうみの中忍へ
本当は会ってお礼を言いたいのですが、部隊長達の牽制が怖いので、手紙にしました。
あれから部隊長達は、生き生きとしています。 任務での迅速さには更に磨きがかかりました。
それもこれも雨射の、いえ、うみの中忍のおかげです。 ありがとうございました。
さすがゴールドフィンガーの異名を持つ按摩師ですね! とにかく。 感謝、感激です。
あの癒し券も。 あんなの作った事なんてなかったですから。 新鮮な体験でした。
あれを持っていそいそと草津屋に行ったのかと思うと、それだけでおれらは嬉しくなります。
これからも部隊長達を、雨射の心のこもったマッサージで癒してあげて下さい。
今日、雨射のマッサージを予約したいと言ったおれらに、鋭い殺気が飛んで来ました。
きっと部下のおれらにさえ、分け与えたくないんですよ、うみの中忍のヒーリング効果を。
聞きましたよ? ゴールドは照れくさいから、ヒーリングに訂正してくれと頼んだんですか?
いいじゃないですかゴールドで。 何でも一番は金です。 銀や銅も凄い、でも頂点は金なんです。
黄金コンビの裏に、ゴールドフィンガーあり! これでいいじゃないですか、完璧ですよ!
それぐらい部隊長達は心身ともに癒された、っていう事です。 もう独占する勢いですよ?
心のこもった仲間からの癒しの空間。 それは部隊長達にとってなくてはならないモノです。
おれらは皆、部隊長達の様な立派な忍びになりたくて・・・・ つまりは似過ぎているんですよ。
だから、おれらと一緒にいる時の部隊長達は、どうしても暗部の長という立場になってしまいます。
ご存知の通り、おれら暗殺戦術特殊部隊の中に《癒し》なんて言葉は存在しません。
そんなおれらの何が、人として正気を保たせているか。 それは里の仲間からの信頼なんです。
敵や一般人にどう思われようが、知ったこっちゃないです。 どんな汚れもドンと来いですよ。
木の葉の仲間が、おれらを誇りに思ってくれている限り、おれらは強く信念を貫けるんです。
どうかくれぐれも部隊長達の事をお願いします。 目指せ、黄金トリオ! 隊員代表 アラシ
本当なら・・・・ この手紙をビリビリに破って火遁で燃やしたいぐらいなんだけど。 俺には出来ない。
俺達が誇りに思ってくれている限り・・・・ か。 なんだかなぁ。 常識外れのマッサージ認識なのに。
この手紙から受ける印象は、一隊員として尊敬する暗部の長に対しての、純粋な善意しか伝わってこない。
好き勝手な言われ方をしてるけど。 てか、訂正したのに、なんで照れくさいとか言われちゃってる訳?!
・・・・独占ねえ? 部隊長達が、この俺のマスかきテクを気に入ったのか?! ここ、喜ぶトコロ??
まあ、いいや、知らせてくれたと思えば。 せっかく吹っ切った出来事だったけど、どうやら続行らしい。
ようは・・・・ 部隊長達が雨射を訪ねて来たら、また指圧して抜いてやってくれ、って事だろ?
・・・・俺もツメが甘かったしな。 ここまでズレた認識を持ってるなんて知らなかったし・・・・
こうなりゃ、なるようになれ! だ。 そのうち飽きて花街が恋しくなるよ、文字通りボディマッサージが。
しかし・・・・・ 気に入ったのか、あれが。 ちょっと手とか震えちゃたんだぞ? それでも??
「・・・・・お粗末なのが、かえって新鮮だったのかなぁ。 やっぱ、大物は違うな、うん。」