例えばこんな話 6   @AB CDF GHI JKL MNO




「ウチのお偉いさんがそりゃーもう、ご立腹でネー? 必ずオレ達で、ってご指名。」
「誘拐は金銭取引のビジネスでしょう? 人質を殺してたんなら、取引は成立しませんよね?」

依頼は火の国のとある有名な大名から。 誘拐されて殺された子供の弔い任務。 まあ、早い話が報復。
先行してウチの中忍が交渉に行ったんだけど・・・・ その時点で人質本人に異和感を感じたらしい。
で、その交渉任務の中忍の隊が調べてきたら、人質のフリをしていたのはどこかの忍びだったみたい。
既に大名の御子息は殺されていたって事。 それを報告したら、即、暗殺任務に変更になったんだ。

一番可愛がっていた子息だったらしく、大名の憤慨はもの凄かったって、三代目が言ってた。
火影直属のトップツーに、息子の命を奪った奴らを皆殺しにしろ、って直々に依頼に来たんだって。
直々にご指名とあらば仕方がない。 カカシ先輩とボクで、わざわざコイツらを狩りに来た、って訳。

「なんだ、お前らっ! 一体どこから・・・・・?! 忍び・・・・ なのか?!」
「心配ないよ、その為に雇ったんだから。 お願いしますね、身代金は3:7でいいですから。」
「・・・・・木の葉の暗部か。 マズイな・・・・」
「ち、ちょっと・・・・ あなた雨忍でしょう?! 大丈夫なんですよね?!」
「マズイって・・・・ そんな頼りない事では、困りますよっ!!」

だいたいね、ウチの中忍を舐め過ぎ。 身代金の交渉、受け渡し、全て請け負うのは、熟練した忍び達。
言わば、人質交渉として経験豊富な忍びが派遣されるんだから。 その目を誤魔化そうったって無駄。
大名本人や身内が交渉していれば、誤魔化されたかもしれないけど。 火の国には木の葉ありき、だよ。

雨隠れの忍びだったのか。 ボク達の姿を見るや否や、撤収しようとした雨忍を速攻で木遁拘束。
逃がす訳ないでしょう、報復任務なんだから。 交渉は決裂したんだ、後は・・・・ 分かるよね?
そう言って、雨忍の後ろに隠れていた誘拐犯どもの首を落とした。 自業自得ってヤツですよね、先輩。
その間、カカシ先輩は遊んでいた訳じゃないよ? 忍犬八匹に殺された子息の遺体を探させていたんだ。

「カカシ、これで全部じゃ。 バラバラになっとったが、集めて来たぞ。」
「ン、皆ご苦労さま。 ハイ、じゃぁ、この木箱に一つ残らず入れてあげて?」
「心得た。 ・・・・まだ三歳ぐらいじゃろうな、可哀想に・・・・・・」

「はは! パックン、お爺さんみたいなセリフだよ!」
「当然じゃ! ワシ達は口寄せ獣、お主らよりも長生きしとるからの。」
「フフフ、ねぇねぇ、皆本当はいくつなの??」
「・・・・・・内緒じゃ。」
「「ちぇっ!」」

何気ない会話をしながら、忍犬達は探して来た肉片を木箱に入れる。 そして先輩が木箱ごと燃やした。
その子の遺灰を壺に入れて大名に返すんだ。 雨忍は生け捕り。 大名自ら拷問にかけたいそうだよ。
指を全て切り落とし、切り口を焼いて献上。 もちろん関節周りの靭帯は全て切断してから、だ。

忍びの生け捕りと、遺体捜索、誘拐犯の暗殺。 これが依頼人の希望。 なんてことない暗殺任務。
ごく日常的に起こる要人関係者の身代金目的の誘拐。 よく依頼される暗殺任務の一つ。 なのに・・・・
部下達が温泉に一泊して疲れをとって来て下さい、なんて言うから。 高速で終わらせちゃったよ!
なんだか凄く楽しみになって来た。 ソープでしてもらうマッサージとどう違うんでしょうね、先輩!




大名への挨拶もそこそこに、任務を完了させた。 報告はパックン達がしてくれるから問題ない。
ボク達はこのまま、休息日に突入だ。 部下達の言う様に、気分をリフレッシュさせてこよう!
ワクワクと温泉街についた頃には、夜中を回っていた。 でもまあ、木の葉の忍びだし、招待状もあるし。
ふふ、アイツら、どんな顔してこれ作ったんだ? ・・・・・癒し券、か。 よし、癒されに行きますか!

「今晩は〜 予約入れてる木の葉隠れの忍びなんですケド。」
「遅くなってしまってすみませんね。 今からでもいいですか?」
「もちろんですとも! ようこそ、温泉旅館 草津屋へ。 ささ、どうぞ?」

時間が時間だし、こういう時には一般人に変化しない方がいい。 早々に木の葉の忍びだと伝える。
ここに潜っている潜入員に会いに来た仲間だと思ってもらえるからね。 まあ、お面にマントだけど。
上忍達がよく立ち寄るみたいだから、忍びがウロチョロしても全然平気らしい。 潜入員のいる巣だしね。
それに防犯上、木の葉の忍びがいてくれた方が心強い、っていう旅館の思惑も見え隠れしてる。

火の国の中でも、こういう観光地では他国の人間が多いから、木の葉隠れの忍びは歓迎されるんだ。
揉め事が起きた時に、迅速に対応してもらえるから。 だから場所を提供してくれる所が多いんだよ。
木の葉の潜入員は、重宝がられてるだろうね。 でも潜入員でも手に負えない忍びがいたら仕方がない。

「慌てて式を飛ばしたんだろうなー その潜入員・・・・・ くすっ!」
「ネ? 霧と岩を中忍一人で、なんて。 さすがに無理だもん、良い判断だーヨ。」
「・・・・・ウチの上忍連中を夢心地にさせるぐらいだとか、言ってましたよね、アイツら。」
「・・・・・温泉や料理より、実はソッチのが楽しみだったりするんだよネー オレも!」

そうなんだよね、なんでもマッサージを受けた上忍連中に、ゴールドフィンガーと呼ばれているとか。
駄目だと分かっているのに、ついつい任務帰りに立ち寄ってしまう巣なんだとか。 大いに期待できる。
木の葉の忍びをも唸らせる・・・ 今ではソレを売り文句にしているらしいよ? なかなか頭が良い。

それだけ頻繁に木の葉の忍びが出入りするんじゃ、潜入員だと怪しまれても不思議じゃないのにね。
ともすればマイナスになりそうな状況もプラスに転じて利用するなんて、かなり使える潜入員だよ。
暗部隊員に招待状を作らせた張本人。 正しい状況判断も出来るゴールドフィンガーな中忍か。
ボクも先輩もカラスの行水で温泉から上がり、案内された部屋で、まだかまだかと潜入員を待っていた。