天敵は中忍 1   ABC DEF GHI JKL MN




オレ達が統括する部隊の持ち回り任務の一つに、尾獣九尾の人柱力 渦巻ナルトの警護がある。
まだその力を体内に眠らせてるだけの小さな子供は、他里からすればカモネギ状態だからネ。
拉致されないよう、常に目を光らせているんだヨ。 持ち回りと言っても、ほぼオレとテンゾウの任務。




尾獣九尾 妖孤の恐怖は、襲撃された木の葉の里に住んでる民が、一番良く知っているコト。
それに、自分達を守ってたくさんの木の葉の忍びが、いとも簡単に息絶える姿を見てたからネ。
怖いんだヨ。 ナルトはまだ小さな子供で、尾獣をコントロールするコトは出来ないでショ?
器であるナルトの意識を乗っ取り、尾獣本来の姿に戻るかも。 そんなのを想像しちゃうワケ。

怖いからだけじゃないヨ? ナルトに近付いて巻き込まれたくないんだよネ。 忍び同士の争いに。
ナルトの両親は高名な忍び、手なずけてどうするつもりだ、とか。 言われたくないのが本音。
里の忍びから二心あると思われたくないし、暴走するかもしれない人柱力の側にも寄れない、ってコト。

そう、九尾を赤ん坊に封印して退けたのは。 ナニを隠そうナルトの実の両親、四代目火影夫妻。
ナルトを四代目夫妻の遺児だと公表したら悲惨なコトになるヨ? はっきり言って争奪戦になる。
四代目夫妻の威光を利用しようとする輩がワンサカ、我こそはと里親に立候補するのがミエミエ。
その中にナルト本人のコトを思っての忍びは皆無。 故四代目夫妻の名を欲しているだけだから。

だから封印された尾獣九尾の話はするな、と三代目は戒厳令を敷いた。 必然的にその話もタブー。
九尾封印の話をするなというコトは、ナルトの両親に関する話もするな、というコトだからネ。
人柱力であるコト、四代目夫妻の遺児であるコト、この二つの理由がなければ、争奪戦は防げる。

言いかえれば、その二つの理由以外でナルトに近寄る忍びや民を選抜してる、ってコトなんだけどネ?
事情を知ってる忍びの多くは、その三代目の本来の目的を見抜けない。 売名目的でしかないから。
表向きはナルトを孤立させる様な形になってしまうケド、一切のしがらみを無くす為なんだーヨ。

「聞いた? ナルトのアカデミー入学。 やっとお役御免かな?」
「どうでしょうか。 まだまだ忍びのしの字にもならなさそうですが。」
「アハハ! ま、そうでしょうヨ。 まだ当分、オレ達の警護任務は続行だねぇ。」
「最近は平和で、切羽詰まった現場はなし。 もう、専属任務の様になってますよね。」

オレ達暗部や、売名行為に興味のない忍びは、ナルトが一人前の木の葉の忍びになるコトに大賛成。
小さなナルトには酷なコトかもしれないケド。 でも本人が努力して身につけた力は本物になる。
九尾の力があるからだ、四代目夫妻の血を引いてるからだ、とかを言わせない為には、努力しかない。

幼いナルトは自分がどういう存在か知らないから、独りぼっちだと誤解しちゃうかもしれないケド。
あの小さな体に背負わされたモノはあまりに大きすぎるんだヨ。 心を成長させなくちゃならない。
そう、自力で木の葉の額当てをもらうまではネ。 里内外の忍びを、側に寄せるワケにはいかないの。

三代目やオレ達が絶対守るから・・・・ なーんてココで言ってても、ナルトは聞いてないけどネ。
ナルトが自分の身を自分で守れる様になればその時こそ、オレ達の警護任務も終了なんだーヨ。

「あっ、いたいたっ! カカシさんっ! テンゾウさんっ! 協力して下さいっ!!」
「「・・・・・・・・・・・・。」」
「ちょっとこれ見て下さいよ! 今回俺・・・・・・・ って! 早っ!」

「くそぉー 逃げられたか・・・・・ 尻尾を巻いて逃げるなど、木の葉の暗部の風上にもおけんっ!」
「「・・・・・・・・・誰が尻尾巻いて逃げたって?」」
「やったv 暗部の部隊長と補佐、ゲット!!」
「「・・・・・・・・ちっ!」」

アー 大陸にはネ、体が小さくても強い忍びがいたり、ただデカイだけのボンクラな忍びもいる。
痩せてんのに重い蹴りを繰り出す体術使いや、太ってるのに素早く指を動かす幻術使いがいたり。
つまり、いろんなタイプの様々な忍びがいるってコト。 その内の一人が今、オレ達の目前に居る。

うみのイルカ、階級は中忍。 恐ろしい事に、うみのイルカは殺気を感じない忍びなのヨ・・・・
相手の殺気を感じ取れないんじゃ、強いヤツに正面から突っ込んで行く様なコトもやらかしちゃう。
そんな忍びが目の前にいるんだから、事実を認めざるを得ない。 もうネ、オレ達の天敵なのヨ。




オレ達は暗部の司令塔、泣く子も黙る木の葉の暗殺戦術特殊部隊、部隊長とその補佐なのネ?
写輪眼のカカシだとか、木遁使いのテンゾウだとか言われている、暗殺部隊のトップツーなのヨ。
例えこうやって陰ながらナルトの警護任務で暇そうにしててもサ、首の賞金額もハンパないの。

どいつもこいつも癖があって一筋縄じゃいかないヤツら、暗部の全隊員達を束ねてるのヨ。
そういうヤツらはサ、口でナニを言ってもダメなんだよネ。 態度で示さないと意味ないでショ?
オレ達に従え、って言うんじゃなくて。 有無も言わさぬ雰囲気を醸し出すワケよ、ジワジワと。
“オレ達を裏切ったらどうなるか、お前らが一番分かってるよね?” ・・・・的な雰囲気をネ。

だからオレ達の部下は言わずもがな。 そりゃもう、他里の連中からも超ビビられてんのヨ。
それはオレ達の存在感なワケ。 自他共に認めるスンゴイ強い忍びにはつきものの “箔” なの。
自分ちの所属する部隊の長達が貫禄あったら、部下だって自慢できるでショ? 正規の忍びもネ?

若くして暗部を任されたオレ達。 今迄、他里に舐められない様にと必死で積み重ねて来た威厳。
そういう雰囲気を相手が感じてくれるから、オレ達の醸し出す気は、迫力や威圧感として伝わる。
オレ達二人がナルトの警護についてる、ってだけで。 それだけで里内外の忍びは敬遠しちゃうのヨ?

・・・・・・・・・それなのに。 殺気を感知できない忍び、うみのイルカには一切無意味だった。
部下なら震え上がる眼でジロリと睨んでも。 そこそこマジな殺気を飛ばしてみても、どこ吹く風。
ヤツがオレ達の周りに出没すると、とたんにオレ達の威厳が損なわれる。 だから天敵なのヨ。