天敵は中忍 10   @AB CDE FGH JKL MN




案の定、ボク達の天敵・・・・・ いや、もう暗部の天敵と言っていいだろう、ヤツが待機所にいた。
ちょっとばかり進歩したかも、とカカシ先輩と褒めていたのに。 そういや態度に変化はなかったな。
たまたま昼間は、質問したい事が短かっただけだけなんだろう。 自主練は孤独に自分ちでやれ。

暗部待機所で覚えたての芸を披露するか? 隊員達を観客に仕立てて? この贅沢もんがっっ!!
部下達は部下達で、ボク達二人にフラれまくっている中忍・・・・ だと思い込んでる風だからね。
マニアな妄想を繰り広げている想像力豊かな部下達。 その同情心を一身に集めているだけなんだ。
うみのイルカ、君はその勘違いの恩恵に与っているだけなんだよ? そこに気付こうよ、いい加減。

「「「「「部隊長、補佐!! お疲れ様っすっ!!」」」」」
「あっ!! カカシさん、テンゾウさん、お帰りなさいっ!」
「「・・・・・・・・・・・・お疲れ。」」

「今ですね、実は影分身で・・・・」
「凄いんですよ、部隊長、補佐っ!!」
「うみの中忍、なんと影分身の術が使えるんですよっ!!」
「まあ、俺らの中じゃ普通なんですけど、たかが中忍が扱える、ってとこが・・・・・」

そりゃそうだよ。 分身を実体化させる禁術、影分身の術を伝授したのはボク達なんだから。
交換条件に “だからもう構うなよ” っていうのを、思いっきり付け加え忘れたんだけどね。
覚えも早くて根性がお前ら並みにあったから、つい指導魂に火がついんだ、ボロボロにしちゃったけど。
そのボロ雑巾具合から、謎の鬼畜妄想を抱いた連中が今朝どうなったかは・・・・ 分かってるよね?

「「・・・・・知ってる。 教えた張本人だから。」」
「おおー そうだったんですかっ!! なるほど! だからか!!」
「ちゃんと飴と鞭を使い分けてるんですね? ははは!」
「「・・・・・・・・。」」

ここは練習場じゃない、暗殺部隊の待機所だ。 三代目が選りすぐった、里の精鋭が集う場所。
お前らさては欲求不満だな? ハイエナで妄想こいてる暇があるなら花街で抜いて来い、馬鹿野郎っ!!
・・・・と、こいつら全員に八つ当たりしたい気分だけど。 そうするとボク達の威厳が損なわれる。

我慢だ、すぐにカッカしたら、またヤツのペースに乗せられてしまう。 忍びは耐え忍ぶ者、だ。
なにが“なるほど”で“だからか”になるのか。 一度お前らの頭の中を覗いてみたいよ。




「カカシさん、テンゾウさん! 見てて下さいっ!! 影分身の・・・」
「「はいはい、また今度・・・・・・ ??」」

「あっ!! ちょっと待った、うみの中忍!!」
「・・・・・?? なんですか??」
ゴニョゴニョ・・・・ そんでもって・・・・ コショコショ・・・・
「・・・・ぅぇー?! 大丈夫ですか?? そんなの・・・」
「いや、騙されたと思って。 ほらほら!」

おい、こら、そこ! 何をコソコソ話してるんだ、何を! 余計な事を吹き込むんじゃないっ!
あのうみのイルカがむちゃくちゃ複雑そうな顔をしてるじゃないか! 中忍だからね? ヤツは。
印覚えがいいから、ボク達もつい、お前達と同じ様に鍛えちゃったけど。 あんまり高度な事は・・・・・

「影分身の術っっ!!」
「「・・・・・・・・・・だから。」」
「ふふふ、部隊長、補佐。 楽しみにしてて下さいよ?」
「「・・・・・・・・・・別に。」」

部下の一人に耳打ちされたうみのイルカは、自信なさげだったけど、影分身の術を発動させた。
いや、これは昨日の時点でボク達も見てるから。 楽しみもクソも・・・・ 時間だね、三分間の。
仕方ない、計っててやるか。 二分三十秒になったら、嫌でもあのタイマーが作動するんだろうけど。

「「火影岩から飛び下りたつもりでっ!! えいっ!」」
「「・・・・・・・・・・・・・はあ?」」
「「あ・・・ これ、解いた方がいいんですよね? んー・・・・・ ほいっ!」」
「「・・・・・・・・・・・。」」

そしてそれは起こった。 何を勘違いしたのか、二体のうみのイルカは自分の忍服を脱いだ。
下はそのままで、木の葉マークの入ったベストを脱ぎ、アンダーを脱ぎ、セミヌード姿に。
肌を露出させた上半身にはベストのみを素肌に羽織リ直し、更に結い上げてる髪を解いた。
・・・・・あー 部下に何を言われたのか。 だいたい想像がつきましたね、カカシ先輩。

「「チ・・・・ チクチクします・・・・・ 乳首が擦れて・・・・・」」
「「・・・・当たり前でしょう? ( ベストをそのまま羽織ったらそうなるって! ) 」」
「「あ、そうだ!  “はぁはぁ・・・ 助けてに・・・ ん・・ 来て下さったんですね・・・・?” 」」
「「・・・・・・・・・・・・・・。」」

うみのイルカ扮する二体のセミヌードイルカは、突然地面に横たわった。 なんの小芝居??
息も絶え絶えに話し始める。 これはあれだ、忍びなら誰でもグッとくるシチュエーションだろう。
捕虜だな? 捕虜なんだな? 捕まってるのか、セミヌードイルカ達は。 捕虜専門って言ってたっけ。
小芝居じゃなく地でイケるだろう、これは。 でも再現は自分の中の辛い記憶と向き合う事になるな・・・・。




「「うぅ・・・・ でも・・・・ 俺はもう・・・・ ごめんな・・・ さい・・・・・・」」
「仕方ない。 “うみのイルカ! しっかりするんだ!! ボク達が助けに来たからっ!” 」
「ふぅ。 “ナニ諦めてんの?! ここで諦めたらオレ達が来た意味がないじゃないっ!” 」
「「・・・・も・・う・・・ 俺を・・・ 置いて・・・・・ ぅ・・・・・ ガクッ!」」
「「!!!」」

ちょっと! しっかりしろよっ! 違うだろ!! いつも火影様が救出部隊を組んでくれただろう?!
だから今迄無事でいるんじゃないか! ・・・・・もう置いて行ってくれ、何度もそう頼んだんだな?
そのせいで何人か救出隊のメンバーが負傷したかもしれない・・・・ その時の悔しい思いなんだな?!

いや、だって・・・・ 自分の中の苦い記憶を芸の為とはいえ再現してるなら、当然協力すべきだ。
先輩もボクも、一応プチ師匠だし。  ・・・・目を開けるんだ! まだ死ぬんじゃないっ! と付き合う。
例えなんちゃって部下でも、自分の中の弱さと向き合い己で乗り越える努力をしているなら・・・・ ね?

ボク達がそれぞれセミヌードイルカを抱き起こしたら、羽織っていた木の葉ベストがぺラリと開く。
・・・・・・・・・・・・噂の擦れた乳首がボク達の目前に現れた。 うん、確かにプックリと腫れてて赤い。