天敵は中忍 5
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フゥ! 打たれ強い数人の部下をボコれたので、最近のフラストレーションのイイ解消になった。
まったく! 目の前で見てただろう?! うみのイルカは殺気や怒気を感知できないんだヨ?
なんでアレで分かんないかナァ? 自分達がビビってたのに、ヤツは全然平気だったでショ?!
ちゃんと目の前の事実をしっかりと受け止めなきゃ、そのうちお前らが死んじゃうヨ?
うみのイルカはそういう負の気を一切感知出来ない忍びなの! いたんだヨ、そんなのがっ!
三代目に言ったら“あ奴は昔からああなんじゃ、ほほほ!”で、終わっちゃったケド!!
そんな忍びの命の一つも惜しむ影だから、任務受付所に配属したんだろうケド! オレ達の天敵なの!
フフフ、上等だヨ、うみのイルカ。 なぜオレ達の気だけで部下がビビるのか、分からせてやる!
普段は部下を軽くボコるだけのオレ達だけど、戦闘訓練や忍術修行は徹底的にやるからなのヨ?
殺気を感知できなくてもパブロフの犬の様に。 オレ達の姿を見ては背筋をシャキンと伸ばすがいいっ!
怒気で落下させてしまった雀達、どんな姿になってしまうの? そういうのに興味があっただけだから!
死因はうみのイルカの絞めでも、失神させたのはオレ達だし、そこのトコの責任を感じてただけなの!
雀の肉なんて小さすぎて食うトコないし! や、だから混ぜこぜにしてつくねにするんだろうケド!
別に、ちょっとばかりイイ匂いのしてた塩つくねを食べたかったとか。 そんなの思ってないからネ?
「結構粘るねぇ?」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・ まだまだっ! たぁっっっ!!!」
「おっと! 残念。」
「くそっ! 鈴を・・・ はぁ、はぁ・・・・ 取れば良いだけなのに・・・・・」
だからコレも、あ〜ん って口元に食べ物を持って行くだけ持って行って、自分で食べるフェイント。
・・・・・とか。 そういのじゃないから! 食い物の恨み、そんなのは一切関係ないんだからネ?!
どっちかというと、超小バカにしてるワケよ。 目と鼻の先にこれ見よがしにチリチリいわせてんの!
フフフ、実力の差をイヤというほど味わってもらうヨ? この屈辱の意味、忍びなら分かるよネ?
うみのイルカの頬っぺたの横でチリチリ、鼻傷の上でチリリ、頭のてっぺんで鈴をチリンと鳴らす。
取れるもんなら取ってミソ? 触れるもんなら触ってミソ? コレがオレ達とアンタの実力の差!
そういうのに喧嘩売ったら、命がいくつあっても足りないヨ? コレは訓練だからセーフなのっ!
「ハイハイ、頑張って? 印を教えてもらえるオレの鈴はコレ。 ホーレ、ホレ・・・・・」
「これこれ、これだよ? ボクのこの鈴を取らなきゃ、印の順番は教えないからね?」
「はぁはぁ・・・・ うぅ! せっかくお二人がわざわざ目の前に出してくれてるのに・・・・ うぅ。」
「「・・・・・・・・。」」
イヤ、違うって。 別に取り易いように目の前に出してるワケじゃないし。 ソコは敗北感に浸ろう?
こんな舐めた真似されてるのに、鈴の一つも取れないどころか触れないなんて・・・・・ ってサ。
ココは感服するトコだヨ? 手も足も出ない、自分と暗部の長達とはここまで違うのか、みたいな。
善意じゃなくて、はっきり言って嫌みだから。 目には目を、ガキみたいな落書きの仕返しなのっ!!
動物面はオレ達暗部のコスチュームの一部なの! 可愛さは必要ないの! まつ毛はいらないの!
あの能面の様な無機質な動物面は、普通の忍びなら表情が読めなくてビビっちゃうもんなのっ!
暗部の掟は目には目を! ガキレベルの仕返しは、やっぱりガキみたいな舐めた真似でお返しなのっ!
「こんなに手加減してサービスしてもらってるのに・・・・・ その気持ちに応えられないなんてっ!!」
「・・・・・・・いや、サービスじゃないんだけど。」
「・・・・・・・手加減はクソミソしてるけどネ?」
「忍びは借りを作ったら・・・・・ くっ。 ちゃんと返さなきゃ駄目なのにっ!」
「「その価値観は大切だけど。」」
ンー、コレのどこをどう取ったら借りに感じるのカナ? 小バカにされてるとは感じないの??
敗北感は? 忍びとしての実力の違いを肌で感じるでショ? 襟を正そうとは思わないの??
なぜかうみのイルカは、はぁはぁしながらも、どことなく嬉しそうな感じ・・・・ ?? なんで??
その疑問はすぐに解けた。 里でも屈指の忍びに修行つけてもらって幸せだ、って。 微笑んだから。
「受付の・・・・ 先輩の忍びに・・・・ お返ししたいんです、俺・・・・ はぁはぁ・・・・。」
「「・・・・・・・・・・・。」」
「現場に出ても、捕虜専門だし・・・・ やっと居場所を見つけたというか・・・ ふぅ、ふぅ。」
「「・・・・・・・・・・・。」」
捕虜専門。 分かる気がするヨ・・・・ 張りきって突っ込んで行って・・・・ 捕縛されちゃうのネ?
怖いもの知らずの行動で、一瞬敵がひるむかもしれない、コイツ奥の手があるのかな、とか思うかも。
んで、すぐ殺さないで様子見られちゃうタイプなんだネ? 何を企んでいるんだ、吐け! とかサ。
そうか、だから三代目は内勤に固定したのか・・・・。 捕まる度に救出隊を組んでたら大忙しだもん。
・・・・・なんか。 忍びとして致命傷のような問題を抱えたうみのイルカが、可哀想に思えてきたネ。
好きで殺気を感じない体質に産まれたんじゃないだろうに。 忍びとしての価値観も立派だしサ。
・・・・・ま、オレ達 暗部にとっては天敵だけどネ。 可愛いも親しみやすさも必要ないから。
「「・・・・・・・・仕方ない。 ほら。」」
「?!」
「「・・・・・・・大サービス。」」
「わーいっ!! 鈴2個、ゲットッ!! やったっv」
だから。 そんな素直に喜ぶな、っつーの。 情けかけられちゃったのヨ? 哀れに思われちゃたの!
修行と称し、ガキみたいなレベルに合わせて“目には目を”を実行したのが恥ずかしくなったのっ!
もう、ほんとペースが狂う。 だいたい関わるからこうなるんだヨ! そうだヨ、とっとと教えよう。
影分身をちゃっちゃと教えちゃえば、ヤツもご満悦で引けてくれたんだヨ! ・・・・・・くそ。
結果的にうみのイルカを喜ばせるコトに協力してる気がするヨ。 モウッ!! なんでこうなるの?!
オレ達は、他里の忍びがその面を見て逃げ出す、木の葉隠れの暗部 黄金コンビなんだヨ?! キィーッ!