天敵は中忍 6   @AB CDF GHI JKL MN




最初に言ったんだよ。 この鈴を両方とれたら影分身の印と印の順番を教えてあげる、って。
アカデミー生並みの仕返しだとも思わずに、鈴を果敢に取ろうとチャレンジするも、全てが空振り。
とうとう降参かと思いきや、嬉しいときた。 借りは返す、という忍びの絶対的な仁義を主張して。

殺気を感知できないが故に、ボク達の怒りをかってはいるが。 当の本人は至って真面目な忍びだ。
木の葉の為に、本当なら現場に出てバンバン活躍したいだろうに・・・・ ボク達暗部の様に。
現場に出ても捕縛されまくりの中忍。 心ならずも任務受付所に配属になってしまった中忍。
仲間から足手まとい宣言を何度も受けた事だろう。 だから受付忍の歓迎会開催が嬉しいのか・・・・

ボクもカカシ先輩も、天性ともいえる才能のおかげで、どんなキツイ境遇にでも打ち勝って来た。
奴はそんな才能もないのに頑張っているんだな・・・・ ついお情けで、二つの鈴を手に握らせた。
例え覚えられても数分しか実体化出来ないんだよ? ・・・・・・・はっ!! じゃなーーーーーいっっ!!

カ・・・ カカシ先輩っ!! 危うくマジで絆される所でしたね、ボク達!! やっぱり超天敵です!!
・・・・・・そ、そうですよね、とっとと教えてオサラバして、もう後は関わらない様にしましょう!
・・・・・・そうそう、それでいい、うん。 ・・・・少々意外だが。 ボク達の天敵は覚えが早かった。


天敵中忍に、もうこれ以上関わる気はサラサラなかった。 印を教えたらハイ、お終い! の予定だった。
禁術指定の影分身の術を教えたんだから、もうボク達に里内で話しかけるなよ、って言うつもりだった。


ボク達は直轄部隊を火影様から任された暗部の長。 一生懸命努力している忍びを見ると・・・・・ つい。
隊を纏める使命感と責任感がムクムクと湧き起こり、訓練や修行に熱が入り過ぎてしまうんだ。
こいつを一人前の忍びにしてやらなきゃ! 一日でも長く生き延びる忍びにするんだ! ってね・・・・・

「うみのイルカッ! 立てっ!! そんなんじゃ、戦場では一時間も立ってられないヨッ!」
「中忍クラスは本来、隊を纏める隊長であるべき存在! その隊長が一番にへばんなっ!」
「・・・・・くっ・・・・・ はいっ!!」

「ただ戦うだけが能じゃないっ!! 隊の為に撤退するコトを考えろ、仲間のコトをっ!!」
「自分一人で勝てないと思ったら、仲間と共に体制を立て直す、それが勝利への道だっ!!」
「「忍びとは耐え忍ぶ者っ! 何度敗れても挑み続ける不屈の精神を持てっ!!」」

「はいっっ!! ・・・・何度でも・・・・  立って・・・・ みせ、ま・・・・・・・っ・・・」
「「・・・・・・・・・。 ( しまった・・・・。 ) 」」

・・・・・・・・・・・・・やばい。 先輩、つい・・・・ 熱が入ってしまいましたね・・・・・。
覚えたての影分身の術を、早速ボク達の前で披露したうみのイルカは。 ボク達の監督魂を刺激した。
そうだ、うみのイルカは殺気を感じられない忍び、ならば肉体的にギリギリの状況を作ってやろうと。
そうすれば体が覚える。 これ以上は動けないな、自分が動けないなら隊の皆はどうなるのか、と。

ボク達の部下達と同じ様に実戦組手を・・・・・ いや、そりゃちょっとは加減したけど、でも。
ほぼ、中忍には無理でしょうこれ、ってな組手。 当然ものの5分で、うみのイルカはダウン。
忍服はボロボロ、髪は落ち武者の様にボサボサに。 見るも無残な姿へと変わり果ててしまった。

・・・・・禁術を教える訳だから、暗部の演習場に連れてきたんだけど。 大正解だったかもしれない。
正規の忍びがいる前で、実戦組手に入っていたらと思うと・・・・ どう見てもただの虐めにしか見えない。
と、取り合えす、兵糧丸を飲ませますか。 だって、仕方ないですよね? ね? 本人が望んだんだし!
・・・・・・・いや、本人が望んだのは、影分身の術の会得であって、実戦組手じゃないけども・・・・

「・・・・・・・イイ薬になったんじゃないの? コレにこりてサ、もうホイホイ近寄って来ないヨ。」
「・・・・・・・そうですよね、そう言えばそうでした。 もう関わっては来ないでしょう、きっと。」
「・・・・・フフフ、でも根性はあったネ?」
「・・・・・くすっ! ええ、根性だけは。」
「「くすくす! はははは!」」

どんだけ使い古したら、ここまで薄汚れるの? っていう様なボロ雑巾と化したうみのイルカ。
口元に兵糧丸を近付けるやいなや、苦い臭いに意識が覚醒したらしく、すぐに防御態勢を取った。
うん、お見事。 加減してたとはいえ、ボク達二人と実戦組手をして5分も持ちこたえたのは立派。

「兵糧丸だよ、これ飲んで体力回復しなよ。」
「今寝ちゃったら、もう起き上がれないヨ?」
「どうも・・・・ ありがとうございました!  ・・・ガリッ。 ・・・・・・・・。」

「 う゛ぇ〜〜〜〜 なんですか、これ!! 苦〜〜〜〜っっ!! 」
「「あはははは! 言うと思った!!」」

昔っから言うでしょう? 良薬は口に苦し! 暗部印の兵糧丸は普通の兵糧丸よりうんと苦いんだよ。
でも効き目もハンパないからね? ・・・・・ほら。 内出血とかは、あっという間に治るでしょう?
うん、そう。 医療班がボク達に合わせて改良開発してくれたんだよ。 もう暗部の必需品なんだよ。

うみのイルカは何度も何度もボク達にお礼を言って、帰って行った。 ふふ、根性ありましたね、ほんと。
あれで少しは危機感をもってくれればいい。 隊を預かる中忍という立場の忍びは・・・・・ あれ??
なんかすごく大事な事を忘れてる気が・・・・・。 影分身を教えて、それから・・・・・・

「「 あ゛――――っ!! もう近付くなって言うの・・・・・ 忘れてた・・・・。」」

い、いや。 あえて念を押さなくても、もう実力の違いは嫌というほど味わいましたよね?
暗部の部隊長と補佐には、とてもじゃないが近寄れないな・・・・ みたいな。 ・・・・・・。
めちゃくちゃ喜んでいましたよね? いい運動した後の爽快感が・・・・ 漂っていましたよね?
なんか。 ボク達、好印象を与えてしまったような気がしないでもないんですが。 どうでしょうか??