天敵は中忍 3
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オレの面の穴の上にもまさか・・・ テンゾウの面と同じ様にまつ毛描いたんじゃないだろうネ?
わー どうしょう、めちゃくちゃ可愛いです! ・・・・・・・じゃないのっ!! 殺すぞ、コラ!
オレとテンゾウのその怒気に当てられ、立木に止まっていた雀が数十羽、ボトボトと落下して来た。
半径一キロ以内の忍びは、きっと不穏な気を感じて、家ん中入って鍵かけて息を殺してたりしてネ。
・・・・・・・・そしてそのオレ達の怒気を、まともに浴びたうみのイルカはと言うと・・・・・。
うお! 信じられないっ! この雀、気を失ってるっ! ラッキー 今日の夕飯ゲットだ!!
後でつくねにしてお二人にも差し入れますね? と言いながら、嬉しそうに落ちた雀を絞めてる。
さきほどのオレ達の怒気を感じてか、部下が様子を見に来た。 プチ怒気を纏ったままのオレ達と。
雀をホクホクして絞めながら集めているうみのイルカ。 その様子を確認して、瞬時に消えた。
しまった・・・・ アー テンゾウ。 アイツら・・・・ また妙な誤解しちゃうよネ・・・・・・。
最近、部下の認識の中に新たに加わったもの。 それはオレ達にアプローチしている中忍がいる、だ。
オレ達の怒気や殺気をモノともしないで、側に寄ってくるうみのイルカは、どうもそう見えるらしい。
今回もまた、嬉しそうな中忍と面に落書きされたオレ達を見て、あらぬ事を騒ぎ立ててるに違いない。
オレ達が長年かけて磨きあげて来た威厳という名の装備品が。 こうしてハゲて行くのヨ・・・・・。
当のうみのイルカは、部下が様子見に来たコトなんて、これっぽっちも気付いちゃいない。
里内でオレ達が唐突に怒気を纏ったら、そりゃ心配にもなるでショ。 一体何事が起ったのかと。
暗部の待機所に待機してる部下は皆、オレ達の任務を知ってるからネ。 ナルトの護衛に就いてるって。
人柱力拉致目的の間者を発見して交戦中か、ナルトを手なずけようとしてるウチの忍びと対峙してるか。
そのどっちかだろうと当たりをつけて、応援がてら様子を見に来る。 そしてその結果・・・・・・
部下の目にするモノは、やたら嬉しそうな中忍と、中途半端な怒気を纏ったオレ達となる。
仕方ないじゃないの、ずっと殺気や怒気を纏ってるワケにはいかないでショ、里の中なんだから。
ア、ヤバ・・・・ って思って、慌てて怒気や殺気を抑えたところに、アイツらが様子を見に来る。
その中途半端な不機嫌な気は、“ちょっといい加減にしなさいよ” ぐらいに伝わっちゃうんだよネ。
だからそこで部下は大きく誤解してしまう。 オレ達が本気で怒ってるワケじゃない、って。
「お願いしますよ。 ね? ほら、面も可愛くなったし!」
「「・・・・・・・・・・・どこが?」」
「つくねも差し入れしますから! 塩? たれ? どっちが好みですか?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・塩。」」
当然オレもテンゾウも、焼き鳥は塩派だヨ。 ・・・・・・・・ヤ、そうじゃなくてサ。
アンタが緊張感なくこんな質問してくるから、部下も謎な誤解をしちゃうんでショ?
モー 頼むからアッチ行って頂戴。 アンタがいるとオレ達の近寄りがたい雰囲気が薄くなるのヨ。
それになんなのよこの面は。 こんなふざけた面を着けてたら他里の間者に舐められちゃうでショ?
待機所に戻った部下は今頃、皆に報告してるヨ? 部隊長と補佐、なんだかほのぼのしてたぞ?
面にまつ毛描いてあったけど、もしかしてうみの中忍が描いたのかなぁ。 だからちょこっと怒ってのか!
一生懸命地面に落ちてた雀を集めてたけど、あれってひょっとして夕飯にするんじゃないの? ってサ。
もし二人が本気で怒ってたら、うみの中忍は呼吸も出来なくて死んじゃいますもんね? とか。
なんだかんだと言いつつも、部隊長と補佐はうみの中忍に絆され始めてるでしょう。 とか。
かなり根性ありますね、そろそろあの気持ちに応えてあげればいいじゃないですか。 とかネ。
・・・・・あの気持ちってどの気持ち?? オレとテンゾウのどこがどう絆されて見えるって?
オレ達が本気で怒ってもヤツがいつも通り笑ってるのは、殺気を感知できない忍びだからなのっ!!
不本意ながら最近では、中忍の存在を黙認しつつあるオレ達・・・・・ と認識されてるんだよネ・・・・
「「・・・・・・・分かったから。 教えてあげるから、どっか行って。」」
「やったっ!! さすが暗部の部隊長と補佐!! よっ! エリートの中のエリート!!」
「「・・・・・・・・・いや、暗部隊員なら皆使えるけどね?」」
「そうなんですか?! うわー 凄いぞ、木の葉の暗部っ!!」
「「・・・・・・・・・。」」
いいこと考えたヨ、テンゾウ。 部下の誰かにサ、影分身の修行をおしつけちゃうって、どうヨ?
チョロッとテンゾウに意味深な視線を飛ばしてみたら、同じコトを思っていたらしく、頷いていた。
・・・・まつ毛のついた動物面って。 おもいっクソ緊張感ないのネ? 頷くテンゾウを殴りたくなる。
別にテンゾウや猫面には罪はないのに、“ふざけてんじゃねーぞ コラ!” って、二三発入れたいヨ。
危ない、危ない。 意味もなくオレ達が殴り合って暗部内に亀裂が入ったら、三代目はショック死決定。
オレ達は火影直属部隊、暗部の司令塔。 他里の忍びや里内の過激派に睨みを効かす黄金コンビ。
「・・・・・・・ボクはカカシ先輩を尊敬してます。 黄金コンビ無くして部隊ナシ。」
「・・・・・・・オレだってお前を頼りにしてるヨ。 部内の調和無くして平穏ナシ。」
「「・・・・・・・・・・。」」
「なるべくお互いの面を直視しないようにしましょう。」
「そうだネ。 待機所に帰ったら一番に洗い落とそう。」
「解りました! じゃぁ、後で暗部の待機所に差し入れ持っていきますからね!」
「「はいはい、後で・・・・ ??」」
・・・・・・・・・・ン? 待機所に?? イイよ来なくて。 てか、待機所にまで来るんじゃないヨ。
ナニが、鮮度がいいうちにつくねにしますからね、だ。 猛ダッシュでどこかに去りやがった。
・・・・相手の殺気を感じ取れない忍び、うみのイルカ。 生きてるコト自体が奇跡の忍びと言っていい。