天敵は中忍 4   @AB DEF GHI JKL MN




気安く話しかけるんじゃない、という様な雰囲気を全く無視して絡んでくるうみのイルカは。
影分身を教えてもらいたいからと相談に来た。 ボク達の暗部面にまつ毛の落書きをして大満足。
本人はいたって真面目に行動したつもり。 “これで親しみやすい感じ倍増です!”と、ぬかしてた。
漁夫の利で得た雀を一匹残らず回収して、塩つくねにするらしい。 それを差し入れしてくれるそうだ。

ヤツのペースに乗せられたら、ボク達のクールなイメージが激減するだけだと言い聞かせているけど。
つい怒気や殺気を纏い、慌てて抑える・・・・ の繰り返し。 そのせいであり得ない説まで飛び交う始末。
部下達曰く。 あれは部隊長か補佐のどちらかに、もしくはどっちもにホの字ですよ! ・・・・らしい。

あそこまで一途に思ってるんだから、一回ぐらい相手してあげたらどうですか? とか。
男だけど、髪の毛下ろしたらガラリと感じが変わったりして、面白そうですよ? とか。
お互いが遠慮してるなら、共有しちゃえばいいじゃないですか、3pなんてザラでしょう? って。

ほんと、最近ではこんな余計なお世話なアドバイスまで、部下達の口から飛び出したりする。
ボクとカカシ先輩が、ヤツは殺気を感知できないんだ、といくら声を大にして説明しても信じない。
まあ、ボク達同様、長年血の道を歩いて来た部下は、それがいかにあり得ない事かをよく知っている。
そんな忍びが生き残れる訳がないと。 でも実際にああやって生きてるんだよね・・・・ 摩訶不思議。



面の落書きを落としつつ。 この中のどいつにうみのイルカの修行を任せれば、一番マシだろうか。
意気投合して、お見合い婆的な役を買って出る様な奴は却下だ、と暗部の待機所で思案に暮れていた。
でもよく考えたら暗部の待機所なんて、たかが中忍の知る所じゃない。 訪ねて来ようとしても無理だ。
いや、火影室の天井裏がそうなんだけども。 正規の忍びの知りえない情報の一つだったよ。 ほっ!

「いやぁ! なに真に受けてるんでしょうね、ボク達。 待機所、知らないじゃないですか。」
「ネー なんか。 ヤツに関わるとペースを乱されまくるというか、冷静さを無くすよネー。」
「今頃はあれですかね、つくね持って里中をウロウロしてるんですかね?」
「それはそれで、ちょっと可哀想な気もするケド。 まつ毛の罰だーヨ。」
「「ははは! これぐらいで済んでありがたく思え、うみのイルカ!」」

まあ、奴の事だ。 明日また白昼堂々と、ナルト護衛任務中のボク達に声をかけて来るんだろう。
考えたら俺、暗部待機所の場所、聞いてませんでしたよ、一晩中探し回りました、とほほ! とか。
くす! 人の話を聞かないで一方的に自分の言いたい事だけを言う人間への、当然の報いだね。
あと、あれだ。 もう綺麗に落としたけど、暗部面への落書きも許せない。 ボク達の一部なのに!

何が“親しみやすさ倍増”“可愛くなった”だ。 暗部の長に親しみやすさや可愛さは必要ない。
そんなもんを装備しようものなら、部下がビシッと纏まらず、統率のとれない部隊になる。
他里の間者には舐められまくり、ナルト拉致未遂が多発する事になるだろう。 何より恐ろしいのは!

最近ではめっきり大人しい、自称三代目のライバル 志村ダンゾウ率いる根軍団が、ナルトに近付く事!
九尾の人柱力を手中に納めて、あわよくば自分が火影の座に就こうとしているんだよ、今も!
冗談じゃない、そんなの三代目だってボク達だって、故四代目夫妻だって許さないっ!

「こっち、こっち! うみの中忍、ここから上にジャンプですっ!」
「火影室の天井裏が待機所ですか?! 意表をついた設置場所だ!!」
「火影様の一声でサッと飛び出せる様に、なんですよ。 灯台下暗しでしょう?」
「さすが三代目っ! いや、これは歴代火影様のお知恵なのかなぁ??」
「あははは! なんでも前部隊長達の時代からだそうですよ?」

「・・・・・・・・まさか。」
「・・・・・・・・あの声は。」

聞き覚えのある天敵の声と同時に、もの凄く嫌な予感が。 どうやら部下の誰かが奴を先導した様だ。
・・・・・・声から判断すると二名。 ヒロヤと・・・・ オコバだ。 余計な事してるんじゃないよ!
おいこら! 奴には今晩夜通し途方に暮れる罰を与えてる最中なんだよ! 甘やかすんじゃないっ!

「・・・・・よっと!! わー 凄いっ!! さすがですっ!! 今迄知らなかった〜!!」
「部隊長、補佐! うみの中忍が里内で大声で探してたんで連れて来ました!!」
「なんか、お二人に差し入れがあるそうで。 イイ匂いですよ? 焼き鳥かなぁ?」

「あ! 昼間の雀!! あれって、部隊長達への差し入れ様だったんですか、そうか!」
「お、うみの中忍だ。  とうとう応えてあげる気になったんですね、部隊長、補佐!」
「そうかそうか、うんうん。 よかったな、うみの中忍?」
「?? はいっ! 俺、お二人にお願いして良かったですっ!!」

「「 ・・・・・・・・・・・ボコる。 」」
「「「「「 え゛ぇ?! ( 超怖えー・・・・・ )」」」」」
「お手柔らかにお願いしますっ!! 頑張ります、俺っ!!」
「「「「「・・・・・・・ぇ。そっち系?? ( うみの中忍! 健気だ!!)」」」」」

やかましいっ! ソッチ系もクソもあるかっ! ボク達の怒気にビビったのは、やっぱり部下達だけで。
“ボコる” に “頑張ります” と返事をしたうみのイルカに、また部下達は勝手妄想しまくってる。
どうせS系だM系だと、ありもしない3pの想像をしてるんだろう。 だからボコるはお前らだけだっ!
特別に、うみのイルカを里内で拾って来たヒロヤとオコバには、強烈な突きをお見舞いした。

「がっ!」 「でっ!」 「うっ!」 「っつ!」 「いっ!」

「?? あ・・・ あれ?? 皆さんお腹押さえてどうされたんですか??」
「疲れが溜まってたんじゃないのー?」
「お腹減ってるんじゃないのかなぁ?」

「カカシさん、テンゾウさん、差し入れ分けてあげてもいいですよね?!」
「「・・・・・・・・・好きにすれば?」」
「あの、塩つくねなんですけど、一杯ありますから。 これ皆さんで食べて下さい・・・・。」
「「「「「・・・・・・・あ、ありがと。( うみの中忍、イイ人だ!! )」」」」」

それボク達への差し入れじゃなかった? いや、別にどうでもいけど。 うみのイルカには別制裁だ。
影分身会得の為の修行だろ? 鬼ハードなメニューを用意してやる。 泣き叫べ、うみのイルカっ!