天敵は中忍 14   @AB CDE FGH IJK LN




プライバシーは無視だ。 三代目に聞くのが一番手っとり早いだろう、ヤツの過去、捕虜三昧な日々を。
でもやっぱりこういう個人的な情報を聞くとなると緊張するな・・・・ だって不幸な境遇の忍びだ。
いや、不幸さで言ったらカカシ先輩やボクも負けてないけど・・・って、不幸自慢大会じゃない、資質!

資質はもって産まれたもの。 本人が望まなくても元から自分の体の一部と化しているものだ。
珍しからRH−のAB型の血がいい! って望んでも無理な話だろ? そういうのと一緒だよ。
・・・・・え? 全然違う?? まあ、細かい事はこの際気にしないでおこう、とにかく資質の問題。
これはもう、どうする事も出来ないんだ。 だからうみのイルカは、あの弱点から一生逃げられない。

大抵自分の弱点は、本人がこれだと意識できさえすれば、ちゃんと自分で克服する事ができる。
幸か不幸か彼の場合、自分は捕虜専門だから・・・ という自覚は多少なりともあるようだからね。
戦うばかりが忍びじゃない、この里にいて他の忍び達をサポートする忍びだって必要なんだ。
だから任務受付所に配属されたんだろう? やっと自分の居場所が出来たと、喜んでいたじゃないか。

「テンゾウ、行くヨ?」
「はい、カカシ先輩。」

敵を知らずして勝機は訪れない。 こんな事は、忍びなら誰もが知ってる基本中の基本だった。
敵を知る事により、より効果的な対処法が分かる。 昨日の敵は今日の友、という言葉もあるしね。
うみのイルカ自身を知る事こそ、ヤツの為にもなり、ヤツの脅威から暗部を守る事にもなるんだから。



隠している他人の過去を暴く事になるが、知りたいと思った事を全部聞ける立場にあるのがボク達だ。
うみのイルカの屈辱の捕虜三昧な日々を知る事は、今回の三代目の人事異動に関する事でもある。
今迄は運よく助かっていただけで、現場に出し続けるといずれ彼は死ぬ。 そうですよね、カカシ先輩。

ボク達は、うみのイルカ中忍の任務受付所への配属を支持しますと、まず三代目を称賛する。
そうすると我らが忍びの父 三代目火影は、“ワシって超天才じゃからの?” って顔をするんだ。
何気にそういうお茶目な所がある。 フレンドリーだからダンゾウのライバル呼ばわりも放置だ。
フレンドリーなのは三代目の担当。 ビシバシ威圧感を醸し出して脅しまくるのはボク達の担当。

ところで三代目、うちの里の中忍 うみのイルカについてですが。 本人に聞くのも気が引けるので・・・・
捕まりまくってた日々の中に、何かトラウマになるような出来事とか。 そういうのはなかったですか?
・・・・・・・・へ?? 今迄一度も敵に捕縛された事はない?? え。 だって本人が捕虜専門って・・・・

「え?! それはどういう事ですか?!」
「捕虜専門と言いおったか! ほほほ! 言い得て妙じゃのぉ。」
「ナニが言い得て・・・・ 妙・・・・ なんですか??」」
「前に聞いて来たじゃろう? あの緊張感のない忍びは何なのだ、と。」

「はい、オレ達が怒気を纏っても無意味でしたからネ・・・・」
「三代目が、昔からああだったと教えてくれましたよね?」
「そうなのじゃ。 どうもな、孤独感を嗅ぎ分ける様なのじゃ。」
「「・・・・・・・・・・・孤独感?」」

なんと。 うみのイルカは負の気を感知できない忍びではなく、孤独感を感知する忍びだそうだ。
強い殺気を浴びせかけられても、激しい怒気を向けられても、優先的に孤独感を嗅ぎわけるらしい。
そんな馬鹿なことってあるか?! ・・・・・い、いや。 この世には様々なタイプの忍びがいるんだ。
現に存在してるんだから、そうだと認めなくちゃならない。 どちらにしても忍びとしては致命的だ。

「そのせいで昔はよく、捨てられた動物を拾って来ては世話をしとったもんじゃ、ほほほ!」
「「・・・・・・・・。」」
「一度言い出したらきかん奴での。 躾から里親探しまで、一人で全部責任をもってしとったぞ?」
「「・・・・・・・・。」」

「「それじゃ・・・・・ 捕虜専門というのは・・・・」
「どんな殺気や怒気も、あ奴の前では無意味じゃからの? 時に重宝するんじゃよ。」
「「捕虜の・・・・・ 尋問・・・・??」」

そうか、自分の事じゃなかったんだ。 捕虜とは文字通り、木の葉の忍びが捕縛した他里の忍びの事。
強い奴は相手の殺気に反応して、つい殺してしまったりする事が稀にある。 反射的に身を守るんだ。
また、死を覚悟して放たれる敵忍の強い気に当てられれば、並みの忍びは臆して近寄る事も出来ない。

そのどちらにも無反応の忍びがいたら・・・・ かなり使える。 しかもそいつは自分より弱いんだ。
つい・・・・ フレンドリーに話しかけて来る相手に、口が軽くなる事も考えられる。
・・・・・ははは、そうか。 うみのイルカは・・・・ なかなかに使い勝手がいい忍びなのか。

そういえば印覚えも良かったし、根性も部下並みで。 ボク達は実戦組手までして鍛えたっけ・・・・
・・・・・・・・ちょっと待て。 それじゃなにか? ボク達が孤独で淋しそうだと思ったのか??
いや、ボク達だけじゃなく、部下もひっくるめて・・・ 奴の孤独感センサーに感知されたという事か?!

「ひょっとして。 なんだか淋しそうだな、とか。 思われちゃってたりするの?」
「あり得ますね。 孤高の忍びの孤独感を感じ取ったんですよ、うみのイルカは。」
「ほほほ! 俺が友達になってあげるんだ! というのがあ奴の得意技じゃて。」
「「 ・・・・・・・・・・・・友達。 」」

暗部は暗殺専門の部隊、孤独上等! それでいいんだよっ!!  余計な御世話だ、うみのイルカッ!!
ボク達は有言実行の暗殺部隊の長っ! ボク達や部下のその孤独感は、全部ワザとなんだよっ!!
カカシ先輩。 今度うみのイルカがボク達の前でセミヌードになったら、乳首摘まんでやりましょうか?