天敵は中忍 2
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出たよ、ボク達の天敵 うみのイルカ。 例えボク達を見かけても、そこはスルーの方向でしょう?
暗部の部隊長と補佐がさっきからずっとこの場を動かないなら、目的があるんだよ、わかるよね?
アカデミー入学を控えたナルトを護衛してる、なんていちいち言わなくても。 普通気付くよね?
けれど。 ナルトやボク達に近寄るんじゃないよ、という雰囲気を醸し出していても、お構いなし。
今さっき、気配を完全に断って消えたボク達。 もし声をかけた途端に相手が姿を消したなら?
何かの任務中なのかな、声かけちゃマズいよな、任務の邪魔だろうな、とか思うはずだよね?!
なのに何?! そのボク達に向かって、尻尾巻いて逃げた? いい度胸じゃないか、うみのイルカ!!
ボクとカカシ先輩の威圧感を完全に無視、挙句の果てに挑発して呼び戻す始末。 喧嘩売ってんのか?
・・・・・・と殺気を滲ませて凄んでみても。 無駄なんだ、うみのイルカには通用しない・・・・。
あり得ないでしょう? ここまで殺気を感知できない忍びは、本当ならとっくに死んでるよ?
相手の強さを感じ取れない中忍、なぜそんなのが今日まで無事で来れたのか。 これは最大の謎だ。
・・・・・はいはい、聞いてるって。 ・・・・あのさ、暗部の面は扉じゃないから。 ノックしないでね?
ナルト本人や、里の普通の民には気付かれない程度の距離を保ちつつ。 内外の忍びには猛烈アピール。
利用目的や売名目的のウチの忍びだけじゃなく、拉致目的の為の間者に対しての牽制だからね。
だから、なんだか暇そうにくっちゃべってるだけの様に見えても、ボク達に声をかける輩はいない。
火影の直轄部隊だから、威厳のある存在感は必要不可欠。 下手な真似は出来ないよな、みたいな。
普通の忍びなら“うわ 暗部の部隊長と補佐が二人揃ってるよ・・・”って、瞬時に身構える。
存在自体が立派に脅しだから。 でなければ、ボク達がナルトの護衛任務に就いている意味がない。
あの志村ダンゾウでさえ、ボク達がナルトの護衛に就いているからチョッカイをかけて来ないんだよ。
木の葉の暗部黄金期だとか、過去最高のコンビだとか言われてまくってる、通称 黄金コンビなのに。
君子危うきに近寄ったら死ぬほど後悔しそう、そんなオーラを体中から発してるんだよ、ボク達は。
でも、相手の殺気や怒気など危険な気を感知できないうみのイルカは、バンバン近寄って来るんだ。
自分より強い敵を発見したとして、わざわざ自分から近付くだろうか? とんでもない判断ミスだ。
敵を刺激しない様にそっと退却、まず危機から回避するのが普通だろ? 間違っても・・・・・・
話を聞いてもらえないからと、自分より強い相手を挑発したり、面をノックしたりするもんじゃない。
「・・・・・お二人なら扱えるだろうと思って・・・・ へへv」
「・・・・・・・・・だったらナンなの?」
「もちろんお礼は後からちゃんとしますからっ! ね? ね? お願いしますっ!」
「・・・・・・・・堂々とワイロ宣言か。」
影分身を教えてくれときた。 あのさあ。 チャクラ食うから禁術指定なの知ってるでしょう?
見たところ、君は頭のてっぺんからつま先まで、どこをどうとっても中忍だよね? 無理だから。
・・・・・・・?? ほんの数分の実体化でいいから?? ・・・・・・・・・・・・。 まあそれなら・・・・・。
「・・・・・って!! 違うでしょう?! なんでそんな事の為に禁術を教えなくちゃならないんだ!」
「むすっ! 三代目と同じ事を言ってる・・・・・・」
「ハァ?! 火影様にも聞いたの?! 受付忍の歓迎会で芸を披露したいから、って?!」
「 “新人はただ歓迎されてればええ、歓迎会なんじゃからの” って。」
「「・・・・・・・・・・・・・・・。」」
どうやらうみのイルカは、任務受付所に配属の様だ。 うん、内勤がベストだ、三代目ナイスです。
彼が戦場に出たら多分真っ先に死んじゃう。 いや、最近はそんな過酷な戦場は無いに等しいけども。
受付の忍び達に、新人歓迎会をやってもらうらしい。 で、お礼も兼ねて芸を披露する予定だとか。
影分身で二人になれば、漫才でも二人羽織りでもジャグリングでも。 幅広く何でもできるから、と。
忍びは必ず借りた借りは返すでしょう? ただ歓迎されて祝われたんじゃ、借りだけじゃないですか!
だからその場で自分も芸を披露して、皆に喜んでもらう。 そうすれば貸し借り無し、でしょう?
三代目にそう言っても、祝ってもらえ、の一点張り。 ・・・・・というのが、うみのイルカの言い分。
・・・・忍びは借りた借りは必ず返す、ってとこには、大いに共感するけども。 なぜに歓迎会??
そんなの暗部の廓デビューも同じだよ、先輩達からの洗礼だ。 好意的な恒例行事なんだよ。
三代目の言う様に、ただ祝われてれば良い。 任務受付所の先輩達の好意、黙って歓迎されてろよ。
いつか後輩に同じ事をしてあげればいいじゃないか、それが “貸し借り無し” に繋がるんだから。
だいたい歓迎会ごときに筋を通さなくてもいいって! それに禁術のショボイ使用法を思いつくなよ!
・・・・・って、不機嫌丸出しの雰囲気を醸し出しているのに、やっぱりうみのイルカには無意味だった。
なにやらキュキュッと音がしたな、と思ったら。 ボクとカカシ先輩の暗部面に落書きしていたんだ。
ハッとカカシ先輩を見てみれば。 目の穴の上に、本来あるはずのないまつ毛が三本ずつ生えてた。
当然ボクの面にも同じように落書きしたんだろう。 ・・・・・・この! うみのイルカ、ブッとばすっ!!